最初が肝心?
自転車にしろ、バイクにしろ故障すると多くの人はバイク屋さんや自転車屋さんに持っていくか、来てもらうでしょう。そんなとき、何から話したらいいか困った事って無いですか?
中にはうまく症状を伝えられない故障もあるようですし、構造に詳しくない方は、あれこれ知っている言葉を一生懸命羅列して、それが話を一層複雑にする事もあります。

パンクじゃないと思いますが、空気がすぐ抜けるんです!・・・・『え〜〜そんな〜〜、じゃあ私は何したらいいの?』。〜この会話は作り話ではなく、実際非常に多いんです!
また、原付スクーターで「エンジンが掛からんばってんバッテリーが悪いっちゃろうねー」。

ある地元の放送局のテレビ番組に医療相談コーナーがあって、レギュラー出演されているN医師が患者さんとの会話の中で困ることをいくつか発言していました。その内容を聞いて『医者も似たような苦労があるんだなー』と思ったところがあります。
その一つが診察始めるときに「風邪じゃないかと思うんですが・・・」と、病名を自己診断して話しかけてくること。良くありますよね、でも「病名を決めるのは医者の仕事なんです」と、おっしゃっていました。
更に、おなかの具合が悪くて来院しているときに「何食べましたか」と聴くと、「昨日はですね、久しぶりに家族全員がそろったものだから、○○に行ってでですねー・・・」と、話し始め、なかなか本題の何を食べたかの話に移らない事もあるんだそうです。

結局、会話のはじめでつまづくとスムーズに修理に入れない事があるのです。
どんな症状があって修理に出されるのか、その事だけは話していただきたいとは思いますが・・・。

 スムーズに故障を直すために

現在の状況を伝えること
あれこれ沢山の言葉を使って説明したい気持ちはよく分かります。でも、それが余談を与え、結局は遠回りな修理になることさえあります。最初は現在の状況、修理に持ってくるきっかけになった事だけをお話しください。

「走りよったら急に止まってから・・・、プラグやなかろうか」。「プラグ」と言っているので確認すると問題ない、火花もちゃんと飛んでいる、『さて困った』。で、何気なくタンクキャップを開けて中をみるとガソリンがない!、ガソリンコックをRES(リザーブ)にひねって修理完了!
ちょっとした一言が無駄な手間をかけるきっかけになる例です。

こんな時は「走りよったら急に止まって」だけで良いんです、そうすればそのときの状況をお聞きします。お客様が「プラグ」と言っているのに、ガソリンタンクの中を先に見るなんて、お客様を信じていないようで、気まずい雰囲気を作る事だってあります。
走行中に止まる原因は大きく二つ、点火系か燃料系のどちらかです。でも、二つの状況は微妙に異なります。

ほんと一瞬にスパッと止まったり、前後に激しいショックを感じて止まるのは点火系が原因である事とが多く、スロットルの反応が徐々に弱くなり止まるのは燃料系のトラブルです。(必ずしも症状から二分されるとは限りません)
「走りよったら急に止まって」と、そこで止めてもらったら、「どんな感じで止まりました? ショックがありました? スーッと止まりました?」と、お聞きするでしょう。
ただし、キャブレター内に水が入ってしまった場合の止まり方はショックを感じますから、点火系のトラブルと勘違いしやすいですが、そのトラブルが起きやすい特定の車種がありますから、その場合は直感と経験で判断できるお店もあるでしょう。

そうです、数多くの修理を経験しているお店は、お客様の一言でおおむね故障の原因をつかめ、はじめはどこを見て、次はどこを見て・・・と、先を考えているものです。

冒頭のパンクにしても、「空気が抜けるんだけど」、とか「パンクしたんだけど」で、いいんです。そうすれば、タイヤの状況次第では「最後に空気入れたのはいつですか?」とか、「くる前に空気入れてきましたか?」と、お聞きします。
揚げ足取りになりますが、お客様が「すぐ抜ける」と、言っても、それが瞬間だったり、1週間だったりするし、お客様の中にはパンクは「すぐ抜けるもの」との、思いこみがあって、すぐには抜けないからパンクじゃないと言われるようです。
瞬間的に空気が抜けるのも、一週間掛かって抜けるのも、通常の空気抜け〜自転車の場合は1〜2ヶ月、に比べて早く抜ける現象を”パンク”としてとらえていますから、幅が広いんですね。

次のエンジンが掛からない事についても、確かにセルが回らないほどバッテリーが悪くなっていればそうかもしれません。しかし、セルが回っているんであればプラグやマフラーに問題があるかもしれないのです。
何でもよく調べないで原因を決めつけてしまうのは良くないことなのです。

説明は聞いてほしい
そんなこんなで、修理の経験上から持ち込まれた修理に対していろんな形でアドバイスする事があると思います。そんなときは”なぜその説明をしているのか”を、ちゃんと聞いてほしいと思います。
無駄な修理になったり、費用対効果が現れない修理であったり、しばらく先のことまで考えた修理が必要だったり、それは様々です。
ただ、人というのは自分の考えと違ったことに対しては、その答えにバリアを張ってしまうことがありますが、ここは「お客様を思って言っていること」と、理解していただければ幸いです。