キャブレターのトラブルの中で、最も多方面に影響を与えるものがオーバーフローです。特に、4サイクルエンジンでオーバーフローが起きると大変なことになります。

今回の特集では、このオーバーフローについて少し掘り下げて考えていきましょう。

オーバーフローとは何か
オーバーフロートはキャブレターからガソリンが溢れ出すことで、いくつかの原因があります。
@ ニードルバルブの動きが悪くなり、油面調整が出来ない
A ニードルバルブにゴミが詰まり、油面調整が出来ない
B ニードルバルブのシート面に傷又は、段差が出来て油面調整が出来ない
C フロート内部にガソリンが入り、浮力が落ちた
D フロートの油面調整が合っていない
E フロートがパンクしている  ※最近の物は樹脂製を用いているのでパンクしにくい

など、いろいろです。
こうした原因があると、本来フロート室内に入ったガソリンによってフロートに浮力が掛かり、その力はニードルバルブによってガソリンの流入を止めると言う本来の働きが出来なくなり、結果としてガソリンが規定以上になるとフロート室から溢れ出す、そのことをオーバーフローと言います。
トイレで水を流すと、再び水タンクに水が貯まり、一定の量(高さ)になると水が止まるのと同じと思って下さい。

@の場合、上手くいけばキャブレターに振動を与えることで一時的〜恒久的にオーバーフローを止めることが出来ますが、それがたびたび起きる、あるいは長く続くようであればA以下のことが原因している可能性が高いので、それぞれにあった対処をしなければなりません。

トラブルの始まり
オーバーフローを起こすと、通常はオーバーフローパイプによって外部に流出されますが、何らかの理由で大量にオーバーフローを起こすと、オーバーフローパイプだけでは処理できず、キャブレターのベンチュリーに溢れ出し、それはエンジン内部に流れ込むのです。
※一部の車種ではエアクリーナー内に流れ込む場合もあります。
2サイクルならばクランク室内部に入ってエンジンの掛かりが悪くなる、その対処さえ行えば良いのですが、4サイクルの場合オーバーフローパイプから漏れだしたガソリンに「?」と思っても、続けて漏れなければ「良いのかな?」で終わってしまうことがあり、そのまま放置してしまうかもしれません。

この時点は、病気で言えば”感染”した状態です。発症するまでにはそう時間は掛かりません、エンジンを始動し走りはじめて5〜10分ほどすると徐々にエンジンが重ったるく、チョークが掛かったかのような回り方を感じ始めると思いますが、これは初期症状。
不思議に思って『チョークは引いていないしおかしいなー』と感じる頃になると完全にエンジンが停止し、”発症”します。でも、しばらく時間をおいてエンジンを掛けると掛かるんですが、再度走り始めると再びエンジンは止まる、その繰り返しが続きます。

トラブルの仕組みは?
オーバーフローによってエンジンのクランクケースに流れ込んだガソリンは、エンジンの熱に暖められガソリン蒸気が発生します。クランク室にはクランクケース内部のガスを抜くベントパイプ(ブローバイガス還元パイプ)が付いていますが、その排気はエアクリーナー内になっていて、そのパイプを通ってガソリン蒸気がエアクリーナーに送られ、エンジンにそのまま吸入されます。

理屈が分かっている人はもうお気づきでしょう、キャブレターでガソリンと空気が混合されてエンジンに吸気されていくのに加えて、ブローバイガス中に含まれたガソリン蒸気が加わるのですからチョークを何時までも引いた”オーバーチョーク”状態になるわけです。
その為、『チョークレバーが戻っているのに・・・』と思っても不思議ではないのです。

クランクケースにまでオーバーフローしたかどうかは、オイルレベルをチェックすれば判断できるし、オイル注入口からガソリン臭気がしますからわかります。
とにかく、ガソリンが入り込んだことが確認できたら速やかにオイル交換を行いましょう。

問題はまだあります
バイクに乗るのが短時間で、それほど重要には思わなかった場合、長期にわたりガソリンを含んだオイルでエンジンを潤滑する事になるので、エンジンのメタルやベアリングの為に良くありませんし、クラッチ板がガソリンによって膨潤し劣化することがあるのです。
こうした問題が出てくるとエンジン音がうるさく感じられたり、クラッチ操作に支障を来してクラッチ交換を余儀なくされるなど、修理費用が嵩むことになるのです。

オーバーフローを”ちょっとしたこと”と、簡単に終わらせず、きちんと点検し問題ないことを確認したい物です。