歩道を歩いていると突然後ろからのギィーッという、耳障りな音にびっくりしたことはありませんか? その音の発生源は、そう自転車です。 自転車に乗っている人に悪気はなく、それどころか『なんでこんな嫌な音が出るのよ! どうにかならないのっ!!』と、思ってらっしゃるのです。

「あのー、ブレーキが”キーッ”って鳴くんですけど、治ります?」と、聞かれることはよくあるんです。
結論から言えば「治ります」。前輪から出る音はブレーキゴムの部分を”調整”すればいいのですが、後輪から音が出ている場合は部品交換しないと治りません。

どうして音が出るの?
それは、ブレーキの構造上の問題で、説明するより写真で見比べてもらいましょう
今回の特集で取り上げる部品”ブレーキ”は赤丸で示す、ここです。
上が”サーボブレーキ”、
下が”バンドブレーキ”と呼ばれ、あの嫌な音を出すのは下の”バンドブレーキ”です。
外見上の違いはほとんどありませんが、サーボブレーキには緑色した”目玉”に見える芯だし調整機構が付いています。この目玉が付いていれば嫌な音を出さない(出しにくい)ブレーキの目安になります。

赤丸部分は、ブレーキを掛けていないときの”かすり”音を無くす、調整ねじです。
上記同様に上がサーボブレーキ、下がバンドブレーキです。
後ろブレーキを握ると下に伸びたレバーが引かれ、ブレーキが掛かります。その時、バンドブレーキは”巻き付く”ように、車輪側についたドラム※下の写真参照−に引きずられる時に振動が発生し、音が出やすいのです。

サーボブレーキは、バイクや車のブレーキと同様の構造を持ち、ドラムの内側から滑りながら”当たる”ため、音が出にくいのです。

「じゃあ、そこに油を差せば音は出なくなる?」
「それは絶対に駄目です!」

ブレーキが全く利かなくなり、大変危険です。

こちらが車輪と一体となって回転する”ドラム”をブレーキパネルにセットした所。
同じサーボブレーキでも、メーカーによっては写真のような構造をしている場合もあります。
”目玉”は有りませんが、目玉と同様の芯だし調整機構が付いている部分の形状が違っています。

赤丸部分は、ブレーキを掛けていないときの”かすり”音を無くす、調整ねじです。

修理費はどの位掛かる?
当店では、部品代と取り替えの工賃合計で4000円頂いています。「え〜〜っ、そんなにするのー」。はい、でもこれは部品を後から交換するのですから仕方ない事です。
ところがですねー、実は部品単品の価格差は数百円なんです。でも、スーパーなどの”価格至上主義”では、百円でも安く売るためにはそうした部品を使う必要もあるわけで、それがブレーキ以外の部品にも共通した考えの基に作っています。
それで6800円と言う価格で販売できるのであって、部品一つ一つを一ランク上げると、自転車の価格は5000〜1万円上がり、そうすると一万円以下で良い自転車は販売できないんですね。

前ブレーキからの音は
それは比較的簡単に治すことが出来ます。多くの自転車が、車輪のリムにブレーキのゴムを押しつけて制動する機構を使っていますが、このブレーキゴムの向きが、進行方向に向かって”ハの字”になっていれば良いのですが、ブレーキが鳴くときは平行か逆ハの字になっていますので、これを正常なハの字に修正すれば良いのです。

修正とブレーキの調整含めても数百円で済む作業です。音が出なくなると、ブレーキの操作性や制動力も若干ですが改善されることもありますので、音が気になるなら直ぐに治しておきましょう。


鳴かないブレーキ付き自転車を安く買いたい
低価格自転車のクレームの中で大きなウェートを占めるブレーキの鳴きは、掛かる修理代は大きな出費です。後から多大な費用が掛かるなら、初めっから一ランク上の自転車を購入すればいいのですが、それも家計のやりくり上難しい。そんなときは、新車購入時に部品を取り替えてもらいましょう。

専門店では、自分のところで部品から組み立てて販売しているところもあります。一番安い自転車を注文すると、音が出やすい”バンドブレーキ”だったりするのですが、これを「サーボブレーキに変えて下さい」と、注文すればいいのです。
サーボもバンドも組立上の違いはありません、違うのは部品価格の数百円ですから、その分を上乗せして購入すれば”音が出にくい安い自転車”を、購入することが出来ます。
そんな相談&対応が出来るのは専門店ならではと言えますが、「うちはバンドブレーキの自転車なんて売らない」と言うお店もあるでしょう。
※海外組立の半完成商品では、別途費用が掛かる事もあります。

内装3段変速では・・・
ブレーキの種類はバンドとサーボだけではありません、ローラーブレーキというのもあります。サーボブレーキよりも更に音が出にくい(まず、出ない)物で、構造も外見も全く違うので簡単に見分けることが出来ます。

構造が複雑で、部品価格も高くなるので、ローラーブレーキを装着した自転車は”高級車”とも言えますが、だからといって内装3段変速つきでも低価格な自転車に付いているローラーブレーキを見て”高級車”と勘違いしては困ります。
内装3段にバンドブレーキが付くことはあり得ないからです、その理由は次項で。

メーカー車の”価格対策車”では、内装3段にサーボブレーキが付くことはあります。


写真左:ローラーブレーキ用ハブ(車軸)
写真左:サーボorバンドブレーキ用ハブ

どちらも変速なしのハブですが、内装3段変速用のハブにはローラーブレーキ取り付け用のドッグ加工がされているので、サーボorバンドブレーキのネジ締め式ドラムが付かない構造です。

ですから、メーカー車の3段変速でサーボを使っているというのが”特殊”な組み合わせです。
それが元で、修理の際困ったこともあります。

自転車を新たに購入されるとき、どんなブレーキが付いているかを見て選ぶというのも、その自転車の品質を見極める目安になると思います。