自転車の価格を下げると言うのは品質を下げること。 この特集では、その実例を上げながら、低価格の自転車が”損か得か”検証していきたいと思います。 ※この検証には実例が必要です。よって、持ち込み修理の実例があり次第、随時更新していきますので、更新があった際にはTOPページにてご案内いたします。 実例1 タイヤ、チューブの品質 価格差で最も顕著に現れる場所の一つがタイヤとチューブです。タイヤに十分な溝が残っていても中に入っているチューブは”使い物にならない”位、傷んでいるケースもあります。 そのチューブはと言うと、下写真のように蛇が何かを飲み込んだように膨らんでしまう物が少なくありません。ちゃんとしたチューブは均一に膨らみます。 メーカー車に使われるチューブでは、滅多にお目に掛からない事ですが、異常に膨らんでしまう部分というのはバルブ口周辺に集中していて、よりパンクを引き起こしやすい状況を作っています。 タイヤは乗っている人の重量を支え、同時に道路の衝撃を吸収しているので、常に変形を繰り返しています。 その為、チューブはその外側にあるタイヤの振動を受けているので、材質として柔らかいチューブは摩耗しやすいのです。 その摩耗によってチューブには穴があく=パンクが起きやすいのです。 摩耗によって起こるパンクで多い場所と言うのが、空気を入れるバルブ口(虫ゴム)周辺で、理由としてはバルブ口がリムに固定されていると言うこともあるようです。 通常でもそうなのに、写真のように膨らんでしまう部分というのは”薄くて弱い”と推察され、特にパンクしやすいと言えるのです。 上記のチューブをパンク修理を終えて、タイヤ内部に組み込もうとすると左写真のように余ってしまいました。 つまり、パンクした後店まで押し歩いてくる内に、タイヤに引きずられチューブが”伸びてしまった”のです。 この自転車は24インチですが、おそらく26インチの自転車に使える位、伸びています。 チューブが伸びると言うことは、国産メーカー車で起きる事は稀で、伸びてしまったチューブは、結局折り畳んでタイヤ内部に収めるしかないので、その折り畳んだ部分が振動によって摩耗しパンクする事になります。 「この次パンクしたらタイヤ、チューブ交換した方が良いですよ」とは言いますが、メーカー車であれば起こることが稀なので、この費用というのは低価格車を購入したが故の、無駄な出費になりますね。 実例2 チューブの不具合 おやおや、このチューブもバルブ口付近にパンク修理の後が・・・。 でも、パンクの原因はチューブの”薄くて弱い”が原因ではなく、チューブ表面の細かな傷です。 1mm以下ほどの小さな亀裂状の傷ですが、この傷が深くなると”穴”として貫通し、パンクに至ります。 これがチューブのあちこちで起きていて、全てをパッチで塞いでパンクを未然に防ぐとなると、チューブ交換代よりも高くなってしまいます。ですから、一時的にはパンク修理で対応しますが、同じ原因で二度三度パンクするなら、少なくともチューブを交換した方が良いでしょう。 つまり、このような亀裂が入ったならば、チューブが摩耗していなくても交換しなくてはならないので、無駄な出費が掛かるということですね。 これも、低価格自転車に見られるトラブルの一つです。 実例3 スポークの不具合 車輪関係のトラブルが多いのも、低価格自転車の常です。 スポークというのは、車軸であるハブとリムとを結ぶ重要な部品で、路面の衝撃を吸収する役目を持つので、スポークには複雑な動きと相当の力が掛かり、ちゃんと組み上げていないと折れてしまいます。 通常は4本一組を9つ36本で構成しています。4本というのは、ハブにある左右のフランジから2本ずつのスポークの組み合わせで、お互いに引っ張り合ってバランスを取っているので、一本でも折れたり、緩んだりするとバランスが狂い、車輪が歪んでしまいます。 写真の車輪では合計5本のスポークが折れています。 スポークが折れることで、折れていない方のスポークに引かれて車輪は歪み、その時に生じるスポークの緩みが新たな折れや、他の組み合わせのスポークの緩みと折れを誘発し、車輪全体に広がり、駄目になってしまいます。 そうなると、車輪に使われているスポークを全部交換する必要が出て、その費用は馬鹿になりません。 ※5本も折れている状況では、全部のスポーク交換が望ましいでしょう。 写真左下部分で3本、右の写真で2本折れています。 スポークが折れることで車輪が歪みますから、写真のようにタイヤがフレームに当たり、ゴムが削れています。このまま走れば、タイヤはバースト(破裂)するでしょう。 結局この自転車は、自転車価格を考えると新品部品での修理は高く付くので、中古部品と交換修理になりました。 実例4 リムの破損 自転車のリム材質には鉄(メッキしてある)、ステンレス、アルミ、樹脂といろいろありますが、アルミリムは価格と品質の差が大きく、安価な物でも見栄えがよいことから用いられることは多いようです。 しかし、価格と同時に比例して品質もピンキリなので安心は出来ません。 下の写真はその実例ですが、16インチミニサイクルに使われている物で、大きく割れが生じていて継続使用は不可能です。 因みに、鉄リムは錆防止のためにメッキを施しているので表面がツルツル。その為、雨天時は注意が必要で、他の材質に比べブレーキが十分に効くまで時間が掛かります。 近年、ステンレスリムを装着した自転車で2万円を切る商品はあまり見かけなくなりました。つまり、ステンレスリムを装着した自転車はある程度信頼できる自転車と言えるかも知れません。 アルミリムはその軽量性からスポーツサイクルでも多く使われるのですが、それなりの強度・耐久性を持って作られていますから大丈夫なのですが、低価格な自転車に用いられるアルミリムはそれなりに低質で、リム単体での振れ、芯円度もズレが大きい物がほとんどです。 実例5 同じ規格のタイヤですが 車に限らず、バイクや自転車のタイヤにも規格があって、それに沿ったタイヤを装着する事が大切なのですが・・・。 左の写真のタイヤは同じ26インチタイヤのカットモデルです。 一見同じ大きさに見えるタイヤですが、左は国内タイヤメーカー製で、多く国内メーカーが使っていて、補修用(交換修理用)のタイヤとしても多く使われているタイヤです。 右の方は、1万円前後以下の廉価自転車に使われている事が多い海外タイヤメーカーの製品です。 上のタイヤを並べてみたのがこちらの写真。 ちょっとカットが歪でますが、これが同じ規格で作られたタイヤとはとても思えない差である事が一目瞭然です。 当然、上の短く見えるタイヤが廉価自転車に使われている海外タイヤメーカー製で、 この寸法の差はどの位?と言う事で二つを合わせてみると、まあこんな具合に、国内タイヤメーカー製の内側にすっぽりと入ってしまいます。 話はこれからです。「ただ小さいだけ」では終わらない事があります。 例えば、チューブだけを交換するケースというのがあります。押しピンやガラスなどを踏んでパンクした後に押し歩いて行くと、チューブに複数の穴が空いて交換を余儀なくされる等です。 このような、チューブ交換時には国内タイヤメーカー製の物を使います。そのチューブを海外メーカー製の小さなタイヤに使用すると、タイヤ内部でチューブが十分に広がらず、チューブの一部にシワが寄った形で収める事になるので、そのシワになった部分は走行中の振動で摩耗し、穴が空いてパンクしやすくなります。 そのため、こうした国内タイヤメーカーのタイヤよりも小さなタイヤを装着している場合のチューブ交換では、交換後のパンクトラブルを防ぐ意味で、タイヤごとの交換をお薦めています。その分高く付くという事やね。 |