通常、メーカーの新車には1年間の品質保証が付いており、この期間に発生したお買いあげ商品の不具合に対処(無料で修理調整)します。

【メーカー保証要約】
クレーム修理
@ 機械的な故障、エンジンが掛からない、止まる等の症状的な故障は何度でも無料修理する事
A 感覚的かつ軽微な音・錆については保証の対象外
B 消耗品(電球、ワイヤー等)、パンクは対象外
C バッテリー、タイヤは各製造メーカーの保証規定による。(窓口はバイクメーカー)
D 保証期間は新車登録から1年間

【 リコール】
上記の保証期間とは関係なく、該当車両に重大な事故が発生することが予測或いは事例があった場合、不具合部品の交換・改修を行うことで、ユーザーは交換・改修に要する費用負担は掛からない。


【保証の内容】 
クレーム修理
各メーカーで多少の表現の違いはありますが、保証の期間中
@ 機械的な故障、エンジンが掛からない、止まる等の症状的な故障は何度でも無料修理する事
A 感覚的かつ軽微な音・錆については保証の対象外
B 消耗品(電球、ワイヤー等)、パンクは対象外
C バッテリー、タイヤは各製造メーカーの保証規定による。(窓口はバイクメーカー)

上記の条件で、不具合箇所の修理を無償で行うのが”クレーム修理”です。しかし、感覚的な音や錆については個人差が大きく、同じ音や錆でも人によって「感じる」人と、「感じない」人が居て、その判断は難しい部分があります。
エンジンの掛かりが悪い場合、キャブレターの調整で行うのが通常の決まりになっていて、交換を行わないのが普通です。これは、キャブレターに誤差や環境の変化に対し調整する機能が付いている為です。
その他の部品の不具合については交換で対応することになると思います。例えばスピードメーターが作動しない(ワイヤーに切断ではなく)とか、ウインカーが点滅しない原因がリレーであるとか、機械的に不具合になった場合などです。

音や錆びについては「感覚的」な部分が多く影響します。鉄などの金属を使う以上錆の発生を完全に防ぐことは困難です。また、音についても主観的部分と物理的に難しい物があります。
そこで、音や錆での不具合の「基準」と言うのが問題になりますが、これは同一メーカーの商品に比べて大きいか、同一車種に比較しても大きいと、判断されれば「クレーム」として扱われ、他社メーカーの製品に比べて音が大きいとか、錆が多く発生するとかではクレームを受け付けることは出来ないでしょう。
ですが、メーカーの基準内であっても、お客様にとってはクレームに相当する”錆”で有れば受け付けざるを得ない場面も有りますが、その様なときは「1回限りの交換で済ませて下さい」と、説明することもあります。

※改造車の場合・・・
改造を行った場合クレームの受付が”不可”と判断される場合があります。エンジン関係で改造を行えばエンジンの不調に関するクレームを、車体関係の改造を行えば車体関係のクレームを拒否される可能性があります。

メーカーは、標準の状態で問題がないことを充分に確認した(耐久テストなどで)後に生産されていますから、標準状態で起きた不具合についてはクレーム修理を行う責任が有ります。
例えば、サスペンションをリジッドに改造し走行したところフレームが折損した場合、本来の路面の衝撃を吸収するサスペンション装置を取り付けていないわけですから、フレームに過度の衝撃が加わったことで折損に至ったと解釈され拒否されます。更に、リジッドによる操縦性の低下も考えられ、転倒事故が起きた場合には、その責任をバイクメーカーに求めることは出来ません。

エアクリーナーが無い、キャブレターを取り替えている、マフラーを社外品と交換している等で起きたエンジンの不調・不具合はクレームの対象から除外されるでしょうし、その様なバイクをメーカーのサービスへ出そうとしても修理依頼は拒否されています。
この点を考慮(覚悟)した上で改造を行うべきです。

また、あるメーカーでは、純正オイルとは違う物を使っていた時に起きた故障として、クレームを受け付けてくれなかったと言う事例もあるそうです。

ところで、保証とは何なの・・・?
保証とは「この商品は大丈夫ですよ」、ということ。不具合=故障とは大丈夫じゃない状態ということです。
一定の社内基準、国の検定基準に沿って作られ、厳重な品質管理のもとに生産され、検査に合格したものが保証書と共に出荷され、お客様のお手元に届く。でも、中には不具合=故障が発生します。
その不具合が発生した部分について無償で修理するというのが、その内容になります。

お客様の中には、故障が起きると「まだ新しいから商品ごと変えてくれ」と、要求されることがあります。お気持ちは分かります、でも、その商品全体が悪いのではなく、故障となった「部分」が悪いのですから、不具合原因箇所の修理をする事が一般的です。

保証の期間を越えていた・・・・どうしよう
「故障したのだけど保証期間を過ぎている・・・・どうしよう」
困ったことありませんか? 保証期間内から引き続いている不具合が解消されていないとき、保証修理は完了していないのですから保証期間が終了したからといってうち切られることは無いと思います。また、保証期間が過ぎてから次のような事例のトラブルが起きた時はお店の方に相談すると良いでしょう。

@通常の使用では壊れるべきではない機能部分(バイクを構成する重要なパーツ)の不具合。
Aクレームで交換した部品が、再度半年以内に同様の不具合を起こした。
但し、上記の場合でも修理を持ち込んだ販売店の判断でも対応が分かれるでしょうし、改造の有無、バイクの整備状態(綺麗に大事に乗っていると判断されるか)等も影響するでしょう。

実際、修理に持ち込まれる中にははっきりと保証期間を過ぎている車両で、ホイールの溶接部分に亀裂が入っているのを見るとメーカーの担当者に相談してクレーム処理を行ったり、特定の車種でクラッチの取付ナットの緩みが発生するのを『おかしいなー』と思っていたら、後にリコールになった事例もあります。

要は、その様な「困った」時に親身になって相談に乗ってくれるような販売店との信頼関係を築いておくことも重要で有ると言えます。

リコール
通常の使用において重大な事故につながる恐れが有ると判断されると、通常のメーカー保証期間とは関係なく、対象となる全車両の該当部品を対策部品と無償で交換するのがリコールと言われる物です。
重大な事故とは
@ブレーキ系統の不具合・・ブレーキが利かなくなる
A操縦系統の不具合・・・・・正常なハンドル操作出来なくなる
B電気火災の発生・・・・・・・ショート等による火災の発生
C駆動系の不具合・・・・・・・折損や破断の発生
等です。

メーカーは発生或いは予測できる時点でリコール実施の届けを国土交通省に提出し、許可されるとメーカーはマスコミを通じて公表し、取引のある販売店を通してユーザーへの告知を行いますので、積極的にリコールへのご協力をお願いしたいと思います。

で、どんな時にリコールが分かるのでしょうか?。メーカーは生産車の中から無作為に抽出して性能試験や耐久試験を行います。製造上の基準通りに作られているかチェックするためですが、その中で発見できたり、クレーム事例の集中、上記のような修理時の異常発見、車検時のチェックで発見されたりもします。

自主改修
リコール扱いになるような安全上の問題では無いが、商品品質上の問題でクレーム期間とは関係なく、該当する不具合が発生したときは保証期間とは関係なく無償修理を行うことを自主改修と読んで処理しています。
2001年4月現在、ヤマハではJOGの指定機種においてタンクキャップからの水入りでエンジンが始動し
ないことが発生していますが、これを”自主改修”と言う形で対応を進めています。

最後に
この世に完璧な機械は存在しません。技術者は制約のある中で完璧を求めて日夜開発を行っています。
しかし、技術的に不完全な部分も多々あり、開発スタッフの努力で年々少しずつ向上し進化している物です。
バイクは、どちらかと言えば高価な商品ですから「完璧」を求めたい気持ちはユーザーにあります。故障すると「何で俺のだけ?」と、被害者意識が先に立つ場合もあり、「欠陥だ」と、騒ぎ立てる方も居られるのも事実です。
(メーカーは「欠陥車」と言う言葉に凄く敏感に反応し、正常な車両に「欠陥車」発言する方には特に警戒感を持つものです)
しかし、そこから良い結果は得られません。故障が起きたからと言ってメーカーに対し過度の要求(保証規定を越えた要求)をすると、メーカーも杓子定規な対応しかできなくなります。結局は不具合状態から正常に戻す事が何より先決問題ですから、修理を行っている間に不便を受けるとは思いますが、ちょっと我慢して修理が完了するのを待つ事が必要だと思います。

※注記 : ここで説明していることは参考であって、ユーザー、販売店、メーカー個々の思考を制限する物では有りません。

1999年6月作成
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