英語圏5カ国が共同運用しているとされる通信傍受システム。 米国家安全保障局(NSA)を中心に、英国、カナダ、オーストリア、 ニュージーランドの情報担当部局が地域を分担し、世界中の音声通信、 ファックス、電子メールなどを傍受、分析する。
旧東側陣営の情報収集が目的だったが、冷戦後は米英系企業の活動支援に転用され ているとの疑惑が90年代後半に浮上し、欧州議会が追求を始めていた。
The Natinal Security Agency国家安全保障局は、 米国政府の通信傍受機関である。1980年代までこの機関の存在をアメリカ政府は認めようとしなかったが、 冷戦終結もあって、機密事項ではなくなったらしい。このようにホームページまで公開されている。 しかし、冷戦中に世界中に張り巡らした通信傍受システムは廃棄されたわけではない。 この組織が公然と民間の情報を盗聴し、米国の国家的利害にかかわるビジネスをゆがめているいるのではないかと疑われてきた。 それが、2000年9月25日の朝日新聞の記事である。 そして、欧州議会は、そのことを確かめるための委員会を設置し、調査と審議を進めてきているが、米国政府は無視を続けている。 もともとNSAは、第2次世界大戦中日独軍の暗号解読や盗聴のための組織が戦争終結後も姿を変えた秘密の組織だったのだから、 まともな交渉で全貌が解明されるはずはないだろうと予想される。
アメリカ政府は、市民が暗号を使うことに一貫して反対してきた。 しかし、PGP暗号の公開でそれが不可能になると、 アメリカ政府は暗号解読のカギを管理できる仕組みを法的に作る方針に変更した。 いわゆるカギの預託である。しかし、NSAが提案するクリッパーチップという秘密暗号規格は公開されていない規格なので、 実際はカギが無くても米政府が自由に解読できるものではないかと信じられている。
米政府のこうした態度は、これまで一貫している。 米国は、冷戦が終わっても、様々な組織からテロ対象となっている。 また、麻薬の密売対策も必要である。そうした方向で通信傍受法案が可決されている。 こうした理由も分からなくはないが、不快な気持ちが解消するには程遠い。 私は、ベトナム反戦運動が米国政府の取り締まり対象となっていた時代に、 仲間を守るための暗号(PGP暗号)を開発したフィル・ジマーマンの倫理観に共感する。 国家が正義に反するとき、市民を守るのはなにか? 民主主義の国と言われる米国であっても、暗号問題で国家と市民との対立がある。 通信傍受は、国家が市民の信頼をどのように得ていくのかが問われていると思う。