「美容院のゆーつ」(『雑 らいと』9号 90年)

 わたしは「女」にしては美容院に行かないほうである。先日、半年ぶりに美容院へ行き、肩くらいまで髪を切ってきて、なぜ美容院がゆーつなのか考えてみた。

その1 店に入るときのゆーつ
 慣れた店ならいいがはじめての店なら、入った途端、どうしたらいいのかわからない。ひとりひとりカードをかいてくれる店もあれば、単に座って順番待つという店もある。多かれ少なかれ、美容院のドアを開ける一瞬はキンチョーする。

その2 シャンプーのゆーつ
 シャンプー台に座って、背もたれを倒されると再びゆーつは始まる。スカートなら毛布を膝にかけてもらえるけど、それでも下半身が不安になる。その上、顔が丸見えなのも恥ずかしい。タオルをかけてもらってもやっぱり気になる。お湯の温度は、あまり熱すぎたり冷たすぎたりすることはないのに、「確認」されるのはちょっとゆーつ。その上「おかゆいところはありませんか」ときかれても、ここかゆいとは言えない。わたしはいつも「せなか」と言いたい衝動にかられてしまう。素直にシャンプーしてもらって、頭を少し持ち上げてもらうとき、果たして力を抜いてジャンプーしてもらう人にどっかり頼っていいものなのか迷ってしまう。そんなこと考えるとやっぱし力が入ってします。いろいろあって、無事、シャンプーが終わって、顔にかけてあったタオルで耳をふてもらうとき、「耳汚れてたらどーしょ」という不安にかられてしまう。そして「いちにのさん」で起き上がるとき、わたしは年齢とともにいつか起き上がれない日がくるのではないかとますます不安になる。

その3 いよいよ本番
 シャンプー終わって、鏡の前へ座るときにまたまたキンチョーしてしまう。あの椅子のどこに足をおいて、腰をかければいいのか迷ってしまう。足をおくバーみないなとこの前に第1歩を踏み出せば座るのにちょっと無理があるしあの中に足を入れるはちょっとマヌケ。椅子を回転してもらって座るのにもちょっとばかりキンチョーしてしまう。
 そして、いよいよあの巨大よだれかけをかけるとき、手をとおすタイプのものなのか、手を中にいれたままでいいのか、わかってたらいいけど、事情をしらないところなら、どっちなのかまたまたキンチョーしてしまう。


さらにどーなさいますか」の一言。わたしはドーデもいいの、あなたがわたしに似合うと思った髪形にして欲しいのと内心思いつつ、後ろは何センチで、前は、、、、と説明しなければならない。わたしのセンスを試されているみたいで、ちょっとゆーつ。
 それにわたしは、鏡の中の自分が直視できない。鏡に映った自分をみている自分を見られるのがとってもイヤだから。だからカットしてもらっている間、鏡に映っている自分と目が合わないように、伏し目がちにちらちらと鏡をみている。

その4 カットもプローも終わったら。
 手鏡もって後ろを見せてもらうんだけど、どこをみていいのか迷ってしまう。あの大鏡から目を離してもどこをみていいのか、、、、、。自分で鏡をもってくださいと催促されたこともあって、すっごいかっこ悪いことも。

 おしゃれに美容院に行ける日って、わたしにくるのでしょうか。

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