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大森サイファイ伝言板ショートカット

※【 】…発言タイトル、[ ]…発言者(敬称略)


何度も同じ内容ですが、文字化けしてるみたいなので[四不人] 1999年09月02日(木)10時00分29秒 より

>問題はそれらの本がSFだと認識されていない状況のことなんですね。「銀英伝ってSFなの?」です。
>それで、売れているはずのSFが、売れていないと言われるに至ったんですよ。
 そういうことを言う人がいるのは知っています。ただそういう「銀英伝ってSFなの?」という(梅原氏言うところの)評論家やファンの一部の発言は、SFを普段あんまり読まない読者(梅原氏がいうところの大衆、ですか)には、ほとんど影響しない(そもそもそんな発言の存在すら知らないだろうし、「SF」かどうかはそういう読者には意味を持たないですから)でしょう。
 映画やコミックスでもそれほど「SFに対する忌諱」があるとも思えないですから(ウチの近所の3軒のレンタルビデオ屋には「ホラー」と「SF」のコーナーが同じくらいの棚面積であるし、人気のあるコミックスに占めるSFの割合は大きい。それらにはちゃんとSFと書いてあるものも多い)、活字のSFだけが忌諱されているというのも不自然でしょう。
 従って、「SFに対する忌諱」などというものは普通の読者のなかには、ほとんど(少なくとも出版社の方針に影響を与えるほどの数は)ないんじゃないかと思います。

 この結論が正しいかどうかはデータが足らないので実証できませんが、せめて梅原さん(や三枝さん)の現状分析と同程度(私はもっと確からしいと思いますが)に確からしい全く違う現状分析があるということを分かって頂ければうれしいですね。


すさまじきはログの流れ[四不人] 1999年09月02日(木)19時37分09秒 より

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ちょっと整理したいのですが[四不人] 1999年09月03日(金)12時55分26秒 より

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三枝さん、いかがでしょうか[四不人] 1999年09月03日(金)19時54分29秒 より

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三枝理論は分かりました。[四不人] 1999年09月03日(金)23時43分30秒 より

《前半省略》
 ここで一つの問題は、この論理の流れは梅原理論とはかなり異なる(結論としてたどり着く結果は似ているけれども)と言うことです。これは「梅原構想の有効性について論ずる」場合は慎重にしなければいけませんね。例えば、梅原構想ではスペースオペラは「形式が異なる」という良く分からない理由で排除されていますが、三枝さんが上げられたヤングアダルトはスペースオペラを含んでいます。従って梅原構想のようにスペースオペラを排除すべきかどうかは三枝さんの場合説明していただかないと明らかではありません。また梅原構想では「金が儲かる」「売れる」といった言葉が頻繁に使われていますが、三枝さんは(慎重に?)この言い方を避けておられます。三枝さんが今までに書き込まれた言葉は多分「結果として売れる可能性が高い」ですね。この両者は微妙に異なります。上の論理の流れからも「娯楽性が強い」ことが即「売れる」とは断言されていません。ということでところどころある梅原さんと三枝さんの違いを確認しつつ話を進めようかと思っていますが、いかがでしょうか?

 で幾つかお伺いしたいのですが、
・以上のような理解でよろしいでしょうか?
・この場合スペースオペラの扱いはどうなるのでしょう? 三枝さんはスペースオペラをサイファイに含んだ方がいいと思われますか?

 「超メタ言語小説」の具体名を上げるのは差し障りがあるということなので、それはけっこうです。そうすると1をどうやって検証しようかなあ。 
 ああ、そうだ。「普通の読者」は日本人の作品であるかどうか、最近書かれたものであるかどうかについてあまりこだわらないと思います。とすれば現在手に入る翻訳を含めたSFが「普通の読者」にとってのSFですよね。その場合、活字SFの主流は「超メタ言語作品」とか、「SFとしての新しさに拘泥して娯楽性を忘れた、新しいだけの面白くない作品」である」と言えると思われますか? 海外作品であれば具体例も問題ないでしょう?


ジュヴナイルとヤングアダルトはちょっと違うみたいですね[死者の代弁者] 1999年09月04日(土)09時04分23秒 より

ミステリーやヤングアダルト的SFの成功を参考にするなら、「とにかくまず、キャラ萌えしそうな登場人物を考える」ところから始めるのがいいのではないでしょうか。ただ、サイファイ構想の理念は「面白い話(SF)を読者に提供する」という、物語志向でしょうから(そうなのかな? 少なくとも「キャラクターの重要性」に関する言及は、あまりなかったようなんで)、サイファイ構想には、ヤングアダルト的SFの手法は、対立するものではありませんが、まったく関係のないものであることは確かだと思います。


ふっと思いついたこと[ちぇろ子] 1999年09月04日(土)10時11分03秒 より

もしかして、梅原氏の「バディムービーに学べ」ってのは、梅原氏流の「キャラ萌え」の補足のつもりだったのかも、と思ったりして。

梅原氏の「バディムービーに学べより抜粋」
「このバディ・ムービー(相棒映画)という呼び名を聞いて、「X−FILES」を連想した人も多いはずだ。
 すなわち、モルダー捜査官は「シャーロック・ホームズ」であり、スカリー捜査官は「ドクター・ワトソン」なのだ!
 だって、ワトソンも、スカリーも、職業は医者ではないか!
 実は、「X−FILES」は、偉大な名作「シャーロック・ホームズ」へのオマージュ(敬意)でもあるのだ。
 これは永遠の黄金パターンなのだ。」

私としては、「ホームズ&ワトソン」ってのは、もしかして「やおいの基本」かも、と思ったりしています。
そして、やおいというのは、(私には全く解らない世界なのですが)「キャラ萌え」が非常に重要なように思います。(間違っていたらごめんなさい)

もしかして、梅原氏は、「キャラ萌え」という言葉をご存知なくて、「バディムービー」という言葉を使ったのでは?


SFの古典[akaosug] 1999年09月04日(土)14時44分04秒 より

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朝のガスパール[T.K.] 1999年09月05日(日)18時39分30秒 より

「朝のガスパール」は結構面白かったですよ。まあ、他の筒井作品を全然読んでない人が、いきなり新聞紙上で読んだら面食らうかもしれませんが…
「メタ言語的」という点でも、「朝のガスパール」を筒井メタ言語作品の代表としてとりあげるのは不適当な気がします。もっと言語実験を徹底した小説が筒井作品にはいくつもあるからです。


三枝さんへ[T.K.] 1999年09月05日(日)20時22分16秒 より

たしかに「バブリング創世記」のような作品なら、純文学の人も書いていそうですね。具体的な名前は思い浮かびませんが…
ただ、わたしが思い浮かべてたのは例えば「残像に口紅を」です。このような試みをした純文学作家は寡聞にして知らないのですが。フランス人でアルファベットのeが一つも出てこない小説(長編)を書いた人はいますが、日本人では思い浮かびません。もしご存知でしたらご教示願います。


お仕事を優先して下さいね[四不人] 1999年09月06日(月)00時37分49秒 より

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サイファイ作家はどのくらい儲かるのか?[小林泰三] 1999年09月06日(月)07時35分29秒 より

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変な妄想[T.K.] 1999年09月07日(火)21時04分46秒 より

「変な妄想」、いいですねえ。「ソリトン」や「二重螺旋」も変な妄想と言って、言えないこともないと思うし、「パラサイト・イブ」なんかは変な妄想以外の何者でもないでしょう。「ブレイン・ヴァレー」のように哲学が入ってくると、妄想と呼ぶにはすこし躊躇しますが…
特にスラデックのように批評精神が入ってくると妄想からは遠ざかるような気がします。
売れるサイファイの条件の一つに、「変な妄想」を読者に半ば信じ込ませる位の圧倒的な筆力・文章力も持つというのが挙げられると思うのですがどうでしょう?

ちなみに私が読んだ中での「変な妄想」ベスト1は半村良「妖星伝」です。


「SFに求めるもの」と「求められるSF」[四不人] 1999年09月08日(水)20時32分38秒 より

 梅原さんとの違いについてですが、梅原さんは「普通の読者はSFに何を求めるか」ということではなく、「どんな(SF)小説が普通の読者(梅原流には「大衆」)に幅広く受け入れられる(売れる)か」を問題にしていると思うので、若干のずれはあると思います。
 彼の構想を読むと「形式」ということをおっしゃっています。例えば「スペースオペラはサイファイとは形式が違う」というふうに。及びバディシステムへの言及を考えると、彼が考えている形式とは舞台とか主人公のあり方とか、物語の展開の仕方とかではないかと思います。そういうものが読者に受け入れられるか否かのポイントになっているとお考えのように思います。これは彼の言う「超メタ言語作品」(その実体はあまり明らかではありませんが)がそういう形式ではなく、大衆から忌諱されている、という梅原さんの現状認識から来るものだと思います。
 私は、三枝さんとのやり取りでも書きましたが、梅原さんの言う「超メタ言語作品」を含むSFは忌諱されていないと思いますので、そういった物語の形式はあまり関係ないのじゃないかと思っています。
 私自身が「普通の読者」と言えるかどうか分からないのですが、SFにはやはり「世界設定の驚き」みたいなものを求めてしまいます。現在の世界と同じ論理からどれだけ違った世界が構築されているか(地球の未来とか平行宇宙とか)とか、我々と全く異なった世界でも我々と同じ何かが存在する驚きとか(外宇宙や異世界)。それは科学と密接に関係していると思います。別に最新の科学が取り入れられていなくても、「ああ、こういう世界も作れるんだ」という発見みたいなものが好きですね。「リングワールド」みたいな。他の人はどうなんでしょう。設定の説明読んだり、そういうのはじゃまくさい、と思われるのかしらん。はやく恋愛を進行させろ、とか(笑)。でもそういうのは別にSFで読まなくてもなあ。


ベストセラーかロングセラーか[四不人] 1999年09月10日(金)00時21分31秒 より

>いや、だからそれはセールスの問題(売れる本を作るための問題)であって、小説/SFの面白さ(小説/SFを面白くすること)とは別問題なのでは。それ
>も、「キャラクターで小説を読む本の購買者」に対して本を売るための。

 梅原構想は「どうすれば小説/SFを面白くすることができるか」ではなく、もっと実際的な「どのような小説が売れるか」を問題にしているという点で「キャラ萌え」と関わりがあるかもしれません。しかしながら梅原構想に示されている方法論はやはり「キャラ萌え」とは違うでしょうから、「キャラ萌え」は「梅原構想」とは異なる種類の「売れるための方法論」と言うことではないでしょうかねえ。梅原さん流に言えば「形式が異なる」ということでは。
 だから「梅原サイファイ」には「キャラ萌え」小説もあるかも知れないが、別に必要条件ではなさそうですね。

>梅原さんは、ロングセラーを望んでいるのでしょうか。ベストセラーではなく?

 ロングセラーになることを望まない作家はいないでしょうが、「梅原サイファイ」はベストセラーを狙った構想のように思います。


面白いものを発見しました[死者の代弁者] 1999年09月10日(金)14時42分59秒 より

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「読者離れ」か「近寄ってこなかったのか」[四不人] 1999年09月10日(金)19時49分11秒 より

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SF 作家の定義[小林泰三] 1999年09月11日(土)01時43分04秒 より

SF 作家が一般受けする作品を書いていないという認識が広くあるのは確かなようです。ここで、少し気になるのは SF 作家の定義が曖昧なことです。
20年前までは簡単で「SF を書いている作家」が SF 作家だったわけですが、今は「SF 作家でない人が一般受けする SF を書いている」という認識があるわけで、それほど単純ではないようです。では、SF 作家って? となってしまうのです。

というわけで、いきなり定義するのも難しそうなので、具体的な質問を...

もし皆さんが「ここ10年の間にテビューした主な『SF 作家』5人と『一般受けする SF を書いているけれど、SF 作家でない作家』5人をあげてください」と言われたら、誰をあげますか?

それぞれに何か傾向があれば、定義ができると思うのですが。


SF作家ってなんでしょうか?[ちぇろ子] 1999年09月11日(土)10時49分08秒 より

>もし皆さんが「ここ10年の間にテビューした主な『SF 作家』5人と
ここ十年というのが難しいかも。
私は不勉強なもので、誰がいつデビューしたかをよく知らないのです。
だいたい、ここ十年の間に「純粋なSF作家(純粋というのは、その作風にホラーやミステリーの要素が極めて少ない&宇宙に行っちゃう)」といえる人って、五人以上もデビューしてますでしょうか?
(八十年代前後には、たくさんのSF作家がデビューしたように思いますけれど)
森岡浩行氏
野尻抱介氏
の二人は、とってもSFっぽい気がしますが、どうでしょう?

田中啓文氏、それから小林様も、広義ではSF作家でしょう。
ただ、上記の二人にくらべますと、多少「ホラー寄り」な気がします。
あ、そうだ、梅原氏もSF作家ですね!


ベストセラーとロングセラー・ほか[死者の代弁者] 1999年09月11日(土)14時34分31秒 より

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(無題)[加良] 1999年09月13日(月)08時03分29秒 より

>デビュー時期を限定しないとすると「一般受けするSFを書いているけれど、
>SF作家でない作家」は例えばどなたになりますでしょうか?

書かれたSFが一般受けしているか、したかも僕は知らないのですが、清水義範、椎名誠、村上春樹、酒見賢一(敬称略)ではないかと思いました。ですが、「この作家はSFなんて書いていない」とか、逆に「この人はSF作家だ」とか言われてしまいそうです。僕よりも小林さんのほうが、適切な例をあげられるのではないでしょうか。

それから、かつてSFを書いていてSF作家として認められたが、もうSFを書いていない作家のついてはどうなのだろうか、とも思いました。これについては、あえて名前をあげることはしませんが、梅原さんから青山さんへの書簡のなかで言及されていると思います。


間違いがあったら失礼します[四不人] 1999年09月13日(月)10時04分42秒 より

>もし皆さんが「ここ10年の間にテビューした主な『SF 作家』5人と
>『一般受けする SF を書いているけれど、SF 作家でない作家』
>5人をあげてください」と言われたら、誰をあげますか?

 手元に資料がないので、デビュー時期とか名前の文字が違うかも知れませんが、
『SF 作家』
 小林泰三さん、森岡浩之さん、野尻抱介さん、田中啓文さん、林譲治さん
『一般受けする SF を書いているけれど、SF 作家でない作家』
 宮部みゆきさん、瀬名秀明さん、篠田節子さん、酒見賢一さん、高野史緒さん
というのが今ぱっと思いつくお名前でしょうか。


科学には頑張って欲しいなあ[四不人] 1999年09月13日(月)13時03分46秒 より

ああしまった、この人を忘れていた、ということで
『SF 作家』に岡本賢一さん
『一般受けする SF を書いているけれど、SF 作家でない作家』に西澤保彦さんを追加したいと思います。
 いやま、どうでもいいんですけど、好きな作家を忘れてると、ちょっと申し訳なくって。

ちぇろ子さん
>要するに「人々の科学に対する期待が冷めてしまった」のかも知れません。
>今って、開発できるフロンティアってほとんど残っていないでしょう。
>それに、発展してゆくことが単純にいいことだとも思いにくい時代です。
 素直なSFがいわゆるSF作家から出て来難かった理由はその辺かも知れませんね。SFにとって科学は無視できない存在だと思います。もちろん全く関連なくても問題はないんですが、「世界を知っているやり方とは違う方法で理解する」喜びみたいなSFと科学の共有部分みたいな部分があると思うんですよ。
 死者の代弁者さんが「情報」と言っておられる部分とも重なるかも知れませんが。


(無題)[小林泰三] 1999年09月13日(月)19時12分17秒 より

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科学離れ[小林泰三] 1999年09月14日(火)01時17分22秒 より

ところで、高野史緒さん確か一昨年辺りのき京フェスで、

「人から SF 作家と言われるのはまったく構わないけれど、自分から SF 作家とは名乗りたくない。名乗ることによって、本来読んでもらえるべき読者に敬遠されたくないから」

と発言されたように記憶しています。こうして、有望な人ほど SF 作家を名乗らなくなったら、まさに悪循環です。(;o;)


SF 離れ[小林泰三] 1999年09月14日(火)08時08分29秒 より

>SFを書く方々がSF作家を名乗らないことにより生ずる不都合とはどのようなも
>のでしょう? 一般の読者側から見れば、面白いSF(的な小説)を書いてくれる
>限り、SF作家を名乗ろうがどうしようが、変わらないような気がします。SF作
>家を名乗る人が減ると、SF(的な小説)を出版するのが難しくなるのでしょ
>うか? そうだとすると困ったことですが。

SF じゃありませんよといい訳できない小説が切り捨てられてしまう (しまっている) ことになります。そういう小説を読みたい、あるいは書きたい人間にとって困ったことだと思います。
梅原サイファイ構想は面白いものは SF でないと言いきってしまうことによって、この傾向を推し進めようとしているわけです。
これもあれも SF (もしくはサイファイ) だよと言っていれば、日常系 SF から本格 SF へと読者層が広がるのではというのが僕の考えです。


ベストセラーとロングセラー[細田] 1999年09月14日(火)18時57分02秒 より

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思い入れの問題[四不人] 1999年09月14日(火)20時48分38秒 より

 これはインタビューなどを読んだ個人的感想なのですが、瀬名さんや高野さんが「SF作家」と名乗らないのは、SFに対する思い入れがないせいじゃないかと思っています。おそらくお二人とも結構SFを読んでおられるのじゃないかと思いますが、私(おそらく小林さんも)に生じたようなSFへの思い入れは生じなかった。だから、自分が書いた作品がSFとして通るものであっても、そのことをことさら特別に考えないのじゃないでしょうか。
 これはある意味SFの勝利でしょう。特別にSFに思い入れがない人に「SF」を書かせてしまうほど「浸透と拡散」が進んだ、と言うことですから。
 こうした人々が「SF作家と名乗らない」ことの彼ら自身へのメリットは本当にあるんでしょうか? 高野さんの「自分からSF作家とは名乗りたくない。名乗ることによって、本来読んでもらえるべき読者に敬遠されたくないから」というのには違和感を覚えました。「SF」とついているくらいで読まない、なんて言う読者は彼女のよい読者になるとは思えないんですがねえ。
まあ、個人がどう思おうと横からどうこう言うことじゃないんですけど。
 SFにせよサイファイにせよ、思い入れのない人にも「名乗りたい」と思わせるほど盛り上がらないとダメと言うことですね。売れることでも大作が出ることでも新人がでることでもいいから。


Re:ベストセラーとロングセラー[T.K.] 1999年09月14日(火)21時46分00秒 より

ハヤカワSF文庫は1970年の創刊ですから、もう30年近くの歴史を持つことになります。書店での品揃えを見てて分かるのは、ロングセラーになるようなタイトルは、ロングセラーになるべくして、そうなっているということです。郵政省の隣のビルの中の書店は、ビジネス書が中心ですが、それでもコードウェイナー・スミスが全部揃ってますよ。やはり売れるから置いてるんでしょうね。

その中でも自分が特に面白く思うのは、いわゆる80年代SFにも定番的書目ができつつあることですね。刊行当時は賛否両論だった作品が、次第にロングセラーとなっていくの目撃することは、なかなか感慨深いものがあります。


もはや未来には恐怖も希望も持たなくなったのがSF離れの原因でしょうか[死者の代弁者] 1999年09月15日(水)19時44分29秒 より

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何がエスエフをかたちづくるか?[D&G] 1999年09月15日(水)23時18分19秒 より

>「浸透と拡散」したのは、宇宙船とかロボットとか光線銃とかのガジェットだけ
>なんじゃないでしょうか「SFを書いてる」んじゃなくて、「SF的ガジェット
>を使って○○小説を書いている」みたいな。

これ、私も思いました。でもSF的ガジェットが使ってある限り、SFマインド?があろうがなかろうがそれはSFであるということもできるのではないでしょうか?

小林さんのおっしゃった通り「これもあれもSF」と言っておいた方が何かとお得ではないかと思うんですよね。あれ? 小林さんの言われた意味はそういうことではないのかな? 間違ってたらごめんなさい。


いろいろ[四不人] 1999年09月16日(木)12時32分37秒 より

>それにしても、世間の人の「文学としてのSF」のイメージってどういうものなのでしょう。

 そりゃあもう「宇宙とかロボットとかの出てくる子供向けのお話」というものから一歩も進歩していないでしょう(笑)。少し本を読む人だったら「アシモフとかクラークとかの書いているもの」というイメージかな。ああ、同じか。「宇宙とロボット」だ(笑)。
 でも売れているとされるミステリだって「殺人とか名探偵とか出てくるお話」と認識されているような気が。「アシモフとかクラーク」を「クリスティとか西村京太郎」に変えれば同じ事のような。

 問題は作家の方が意識するSFとのずれの方にあると思いますよ。作家の方々はSF作家だろうとそうでなかろうと、執筆前に下調べをされるでしょうから、同じ「宇宙やロボット」でも一般の方のイメージとはずいぶん違ったものをお書きになるような気がします。しかも「宇宙やロボット」は現実のものがあって、それとのギャップもある。さらに科学離れのおかげで「よく調べた」作家さんと「科学があんまり好きじゃない」一般読者との「知識」の広がりは増すばかり・・・。暗い話題だなあ(笑)。

>「浸透と拡散」したのは、宇宙船とかロボットとか光線銃とかのガジェットだけなんじゃないでしょうか
>「SFを書いてる」んじゃなくて、「SF的ガジェットを使って○○小説を書いている」みたいな。

 それを言い出すと「SFの魂は何か」というお馴染みの議論になってしまうので深入りはしませんが、個人的にはガジェットだけでも「浸透と拡散」があったのはいいことだと思っています。ガジェットにはSFのエッセンスが詰まっていると思いますから、ちゃんとガジェットが使ってあれば「SF」でいいんじゃないの、というのが私の個人的な意見です。


「科学離れ」と「SF離れ」[四不人] 1999年09月16日(木)18時56分56秒 より

「科学離れ」と「SF離れ」ですが、私が思っているのは

・SFの楽しみ方のうちには科学やSFに対する基礎知識が必要なものがある
 (例:通常、光より早く移動できないことを知らないと超光速をもたらす架空理論を楽しめないだろう)
・従ってSFは、「科学離れ」した読者に対しては大きな武器を失うことになる

と言うことでしょうか。
 実際には「科学やSFに対する基礎知識が必要なSF」(ハードSFといってもいいかな)というのはSFの中でも少数ですので、「科学離れ」が「SF離れ」を必ずしももたらす訳じゃなく、どっちかというと「面白く読めるハードSFが少ない」のが「科学離れ」の一因ではないかと思っていますけど。

 死者の代弁者さんがおっしゃっていた「普通の読者はSFに何を求めるか」という視点に立てば、もしもSFの中の(例えば)ガジェットが現実の科学と全く関係を持たないとすれば、それは魔法でもよく、そうすれば別にあえてファンタジーではなくSFを読む必然性はないのではないかと思っています。


なるほど。すっきりしました。[小林泰三] 1999年09月17日(金)12時44分42秒 より

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何をSFと呼び何を呼ばないかについても考えてみたいです[死者の代弁者] 1999年09月17日(金)13時49分37秒 より

「なんでもSFと呼ぼう運動」ですか。確かにこれは、梅原サイファイ理論とは合いません(「なんでもSFと呼ぼう運動」を主張している人間が梅原サイファイ理論を、たとえそれの一部であろうと支持するのは矛盾します)ね。というか、露骨に敵対する運動のような気がします。

私は、梅原さんの理論ってのは、「つまらない作品だけをSFと呼ぼう運動」だと思っていたんですが、それは今、微妙に「売れない作品だけをSFと呼ぼう運動」になってきているみたいですね。

私はとりあえず、「SFらしいSF(四不人さん言うところの、面白く読めるハードSF)が、もう少し売れるようになって欲しい運動」かな。「○○して欲しい運動」じゃ力が弱いので、「SFらしいSFを、もう少し売る運動」とか。しかし、私は作家でも書店の人間でもないので、どうすればいいのか方法はよく分かりません。

余談ですが、「ハードSF」って、SF好きなかたは「工学系」にこだわる部分がありませんか? 巨大建造物とか。私は、思想的にスケールの大きなSF(宇宙にとって人類とは、知的生命体とは何か、みたいな)が好きなんですけどね。


どうしたんだ、三枝さん[四不人] 1999年09月17日(金)19時16分29秒 より

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補足しておきますが[四不人] 1999年09月17日(金)20時01分42秒 より

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死者の代弁者 さん[小林泰三] 1999年09月18日(土)00時34分04秒 より

>ここでちょっと確認しておきたいのですが、小林さんは「梅原サイファイ理論・構想」に関しては、どのようなスタンス(肯定的・否定的のどちら)なんでしょうか? また、その理由は? 前にも再三語っているようでしたら申し訳ありません。

このことについては (旧) 大森伝言板の #2132,#2189,#2429,#2698 などで三枝さんには何度も答えています。

簡単に言うと、「あえて反対はしないけれど、効果については疑問を持っている。他にいろいろ方法があるのに、なぜわざわざ苦労が多い道を選ぶのかわからない。特に金儲けが目的なら、非常に効率が悪いのに」ということになります。梅原さんがやりたいのなら、やるのは自由だと思いますが、自分が巻き込まれるのは嫌です。

喩えて言うと、風船おじさんを見ている野次馬の心境でしょうか。


今のSF作家は自分の書く小説を普通の人に読まれる必要を感じていないのかな[死者の代弁者] 1999年09月18日(土)09時38分28秒 より

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SFとは何か、はよく分からないが、とりあえずSFっぽい作品はあることはある[死者の代弁者] 1999年09月18日(土)18時15分01秒 より

>SFらしい「ものの考え方」とはなんでしょう?

それは、ここでの話によって、自分なりに固めたいとは思っているのですが、今のところうまく言えそうにありません。明らかにSFでない話(渡辺淳一『失楽園』とか)を、どのように読めばSFとして読めないこともない、ということがうまく分かったり言葉としてまとめられたりすれば、SFらしいものの考え方もつかめそうです。たとえば、「価値観の相対化」とか、「スケールの大きさ」とか、「倫理道徳よりも科学的合理性を上位に置く」(これは、「ノストラダまス」の谷田貝和男さんが、かつて自分のホームページで語ったことですが)とかはどうでしょうか。


大原まり子のこと[たろう@大原まり子ファンクラブ] 1999年09月19日(日)01時53分57秒 より

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あっ、幸田露伴よりヒットするんだ(笑)[森岡 浩之] 1999年09月19日(日)17時13分43秒 より

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スペオペ作家というのはやはりサブジャンル作家なんでしょうか[死者の代弁者] 1999年09月20日(月)03時09分06秒 より

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夢の樹が接げたなら[ちぇろ子] 1999年09月20日(月)14時43分34秒 より

そもそも私は、「作家というのはワン&オンリーなもの」だと思っています。
個々の作家によって、書き方も商業的な戦略もそれぞれに違っていて当然です。
(もちろん「主義主張が似ている作家が集まって一つのジャンルを作る」ということはあると思います)

「梅原サイファイ」は、上記の点について、少々無神経な印象(あくまで印象ですが)があるのが気になります。
言い換えてみれば「売れる売れない」で作家や作品が管理されそうな印象、とでもいうのでしょうか?


そんなに無理に召喚しなくても(笑)[四不人] 1999年09月20日(月)19時26分07秒 より

>そもそも私は、「作家というのはワン&オンリーなもの」だと思っています。
>個々の作家によって、書き方も商業的な戦略もそれぞれに違っていて当然です。

 そうですね。作家の戦略というのは、まず書きたいものがあって「それをどういう風に売るか」というものではないでしょうか。書きたいものは個々の作家で違うものでしょうから、戦略も異なって当然ですね。
 「梅原サイファイ」とはログの彼岸で小山田さんが話していた「コピー、レーベル、ジャンル」のレーベルかコピーの話になるのでは。どちらの場合もどっちかというと出版社サイドの話ですね。
 「これはサイファイである、こっちの作品はサイファイじゃない」とかは事前に決められるものじゃなく、売れたり評判になったりしたものは自然に似た傾向のものが書かれて「トレンド(をを、死語かも)」になる、っていうとこじゃないんでしょうか。もちろん特定の傾向の作品を集めてプロデュースというのはあるでしょうが、「これは売れる、売れ続ける」なんて傾向があったら、もうとっくに誰かやってるのでは(笑)。「売れる形式」があるんじゃなく「売る努力・工夫」があるんだと思うな。

 個人的には「サイファイ」に「新しい呼び名でSFを商業的に活性化する」という利点がある(というか他の部分は首肯しがたい)と思います。
 別に「サイファイ」という呼び名でなくともかまいませんし、「SF」と「サイファイ」が同じ守備範囲でなくてもいい、とは思うんですけどね。多分私が最も望ましいと考える展開は梅原さんや三枝さんの構想とはずいぶん異なるでしょうけど。


まず買わせましょう。[一般読書人] 1999年09月21日(火)02時20分08秒 より

題して「ハヤカワ文庫売り上げ倍増計画」

といってもたいしたことではないのですが(実行するにはすごく大変)ハヤカワ文庫のカバーデザインを一気にリニューアルさせてみるのも良いのではないでしょうか。
仕事上、本の表紙のデザイン(および音楽CDのジャケット)というのは結構気になる、というかアイデアの参考などにもなるので見てまわったりするのですがハヤカワ文庫のほうにはあまり足が進まないのです。イラストはすばらしいのですが、全体的に古い感じがするのです。

本の買い方として、わずかかもしれませんが本の表紙のデザインで買うというのもあるとおもいます。

おもいきり流行にのって、たとえば、326さんですとか奈良よしとも(字をわすれました)さん、山本容子さん、といったひとたちを起用してみるのも良いかもしれません。これから売れそうな新人でもいいですし。

そうすればまず、そのファンのひとたちは買わなくても手にとることぐらいはするかもしれません。その絵がその文庫の表紙以外でみることのできないものであれば(予算上かなり苦しいでしょうが)中身を問わず買う人もいるかもしれません。実際CDでさえも「ジャケットが良いから買っちゃった」というひともいるぐらいですから。

作家の方の中にはそれではいやだという人もいるかもしれませんが、表紙には当然作家の名前ものるわけですから、SF方面に無関心であったひとにも、名前ぐらいはおぼえてもらえるでしょう。全く名前も知らないというのと聞いたことがあるではかなり違うとおもいます(そうやってすこしずつ浸透させていけばやがて天下をとることも・・・なんとかの皮算用?)。

角川ホラー文庫が売れているというのも、デザイン的なものがすこしはあるのではないでしようか。あのデザインで括られることで、かたっぱしから読んでいくひともいるのでは・・・。

最初の題はすこし(かなり?)おおげさですが、アイデアのひとつとして読んでいただけると幸いです。


本の見た目[四不人] 1999年09月21日(火)13時15分48秒 より

 多分本が「売れる売れない」はそういう内容とは関係ない部分の寄与が大きいのではないかと思います。装幀だけじゃなくて、コピーとか題名とかも含めて。「パラサイト・イヴ」だって「第一回」ホラー大賞受賞作、とか「現役研究者が著者」とかいうことで手に取った人も多いでしょう。もちろん内容が伴わなければ二作目以降は売れないでしょうから、内容が大事なのは言うまでもないでしょうが。


早川のホラー・シリーズの表紙はよかったですね[死者の代弁者] 1999年09月21日(火)22時56分27秒 より

もっとも、創元ノヴェルズとか早川のホラー・シリーズは、表紙のイメージ的な「統一感」があったうえ、レジに持っていけないほど恥ずかしいものではなかったので(個人的な考えとしては、角川のホラーより早川のホラーのほうが、表紙のセンスはよかったんじゃないか、と思います)、そちらが尻すぼみの結果に終わり、角川のホラー文庫が売れている(売れた)のは、表紙以外の理由があるような気がします。

表紙のイメージに関しては、売れない作家(新人作家、もしくはつまらない小説を書いている作家、もしくは売れない小説を書いている作家)でも、ジャンルという「枠」を設けることによって、それなりに手に取らせる、という効果はあったんじゃないでしょうか。


と言うよりも[一般読書人] 1999年09月21日(火)23時34分07秒 より

本を読むということに関して薄〜い人からみると、角川ホラー文庫以前の表紙はどうだったのかというよりあれで「そういえばホラーっていうジャンルもあったんだ」と気付いたのだとおもいます。

そして、面白い本は読みたいのだが自分でいろいろさがして見つけるということにあまりエネルギーをつかいたくない人であれば(これが大半では?)、「リング」や「パラサイトイヴ」と同じ様なイメージの表紙の本がならんでいれば、そのあともホラー文庫を手にとるのではないでしょうか。


角川さんはすごいなあ[四不人] 1999年09月22日(水)10時22分33秒 より

 角川ホラー文庫が優れていたのは、ただでさえ新しい文庫のラインナップは注目される所へ、「パラサイト・イヴ」だの「らせん」だの「黒い家」だの坂東眞砂子だの荒俣宏の書き下ろしだの単行本で成功したり人気作家だったりするよなある程度成功が望める作品や、話題作を集めたところだと思います。そうすれば他のラインナップも注目されますしね。やっぱり角川は商売がうまいなあ、と思います。


角川のホラー文庫って本当に売れているんでしょうか[死者の代弁者] 1999年09月22日(水)12時27分05秒 より

角川のホラー文庫が売れている(売れた)のは、表紙以外の理由があるような気がします。

という発言の自己フォロー、あるいは自分なりに考えてみたことを書いておきます。

まずここに、角川ホラー文庫リスト 改定版のリストがあります。それをご覧になってから、他のかたのご意見をお伺いしたいんですが…。

このリストを見て思うことは、

1・初期にはいろいろ出していたが、今は比較的若い作家にシフトしている。翻訳もの・怪奇漫画ものに関しては、最近は出にくくなっているように見える(セールスがよくなかった、とか?)。
2・映画化・TVドラマ化といったメディアに乗っている(利用している)ものが多い。
3・ああ、これはいかにも売れていそうだなぁ、と思えるような作品のほうがはるかに少ない(とりあえず、その作品で「ホラー文庫は売れている」ように見える)。
4・作家名で読まれるような作家も入れてはいるが、「ホラー」というジャンルに即したような作品に限定している。


ホラー文庫と直木賞[死者の代弁者] 1999年09月22日(水)13時09分58秒 より

《結論まで省略》
直木賞の受賞が角川ホラー文庫のセールス面に影響があった、ということは、多分に考えられそうですね。


私の印象ですが[四不人] 1999年09月22日(水)17時58分03秒 より

 う〜ん、リストを見て思ったのは、日本作家のものについてですが
・意外なくらいに文庫書き下ろし作品が少なかった(もっとあると思っていた)
・意外なくらいに有名作家(赤川次郎、影山民夫、森村誠一、乱歩など)の旧作の再録が多かった
・新人はホラー大賞受賞者が多い(当たり前か)
・ラインナップの幅は文庫発足当初からかなり幅広い感じを受ける(「ココ」から赤川次郎まで)
・その結果ラインナップをみても「ホラー」とは何か、よく分からない(笑)

 当たり前のことかも知れませんが、これから思うのは
・ラインナップをホラー大賞受賞作を中心にしようとしている
・それだけでは作品が足りないし、角川の保有する過去の作品を再録したり、話題の作家の作品をどんどん再録した
・結果的に「ホラーの百貨店」のようになり、文庫自体に勢いがついた
ということではないでしょうか。


ホラー文庫を参考に、サイファイ文庫を考える[死者の代弁者] 1999年09月23日(木)08時18分07秒 より

[PickUp !]


「○○賞作家」なら問題はなさそうですね[死者の代弁者] 1999年09月24日(金)19時41分29秒 より

死者の代弁者さんはいったい「SF業界」ということばをどういう意味で使っておられるのでしょう?

《中略》

「SF」という名前がついている出版物を好んで読む(SFだったら何でも読む?)読者を購買層のメイン・ターゲットとして考えている「市場」(後者)と、そこにもっぱら出版物を提供することによって利益を得ている「出版業界とその関係者(SF作家を含む)」(前者)という意味で使っていますね。前者は「SFの送り手における関係者」、後者は「SF的世界とそれに基づく小説を、特に説明を必要としないで楽しめる購買層」なので、少しニュアンスが異なっておりますか。「SF業界」=「SFという名前の出版物を扱っているところ」というのが、受け手と送り手の両方を含む言葉としては適当かも知れません。

私の主張(話)の骨子は、「SF業界」と「それ以外の小説業界」との関連・関係が、どんどん薄くなっているような気がするのだが、それは私だけの気のせいなのか、ってところにあります。


本の連鎖[ぐりふぉん] 1999年09月25日(土)12時45分11秒 より

一冊の本を読んで「面白いもっと読みたい」と思った時読者がどうするかと言えば【同じ作者の別の本を探す】か【読んだ作品と同系統の本を探す】だと思うんです

それで、あるジャンルを中心に読んでいる人が別のジャンルの本を読み始めるきっかけの一つとして
好きな作家の別ジャンルの本を読む>そのレーベルの別の作家の本を読む
という繋がりは十分考えられるというか身に覚えのある事ですよね

「角川ホラー文庫のような、ある意味わかりやすい形で他と差別化されているレーベル(byだーまえさん)」というような場合「食わず嫌い」で読まないひとって多そうじゃないですか、ホラーとスプラッターを混同してるとか

そう言う意味合いで作家繋がりでレーベルに対する偏見がとけそのレーベルの売れ行きが伸びるってのは十分に考えられると思います。

っていうか、それを前提にしないとここの論議って成立たない気が・・・


系統とは何[四不人] 1999年09月27日(月)13時31分22秒 より

>レーベル名によって「同系統の本を探す」読者が、新しい作家を手にとる指標がないということになります。
>もしその指標に「SF」という名前をつかうのだとしたなら、「ソリトンの悪魔」も「言壷」も「銀河英雄伝説」も同系統だ
>ということになります。しかし、読めばわかりますが、それらは同じじゃないです。良くも悪くも全く別のものです。

ということですが、別のものというのは結構です。じゃあ、「ソリトンの悪魔」と同系統のものってなんでしょう? おっしゃるような「分類」をするには何か「軸」のようなものが必要ですが、三枝さんはまだそれについては触れておられません。
 梅原さんも「超メタ言語作品を排除する」「金の儲かる作品」と言うことしか述べておられません。あとは「形式が違う」とおっしゃるだけです。一体読者というものは「(作者が)金の儲かる」系統の作品を続けて読もうと思うのでしょうか?
 それとROM以前には、サイファイにスペオペの関係についてはあまり明確にはおっしゃらなかったと思いますが、

>また、そういった理由で「梅原サイファイ」と「スペオペ」は、分別して、別の名前で呼ばれないといけません。

と言うことなんですね。「そういった理由」というのがよく分からないんですが。「スペオペと「梅原サイファイ」は系統が違う。系統が違うから別の名前で呼ばなくてはならない」というのは何の説明にもなっていないと思うのですが。

>商売のためには、傾向をしぼらないでなんでもありにした方が良いとおっしゃる方が多かったのです。
>梅原さんの提案には意味がないとおっしゃる方も多かった。
>でも、そんなことないですよね? 効果はある。とてもある。

 本当でしょうか? 死者の代弁者さんに教えていただいた角川ホラー文庫のラインナップを見る限り、あまり傾向を絞っているように見えない。よく引き合いに出される「ミステリ」も少なくとも私には「傾向」はよく見えてこない。以前に三枝さんが「絞ったことで成功した」という例に挙げたハーレクイン、架空戦記、ハードボイルドなど(今過去ログが読めないので定かでないですが、確かこういうのを挙げておられましたよね?)もそう成功しているようには思えないのですが?


角川ホラー文庫はもちろん評価しています[四不人] 1999年09月27日(月)20時28分30秒 より

>SFパニック小説ですよね。ぶっちゃけて言うと。「ジュラシックパーク」とか、「日本沈没」でしょうね。
>「復活の日」もそうかな。少なくとも梅原さんはその系統を目指しているふしがあります。

 なるほど。了解しました。おっしゃっているのは、三枝さんのイメージでしょうけど、おそらく梅原さんの構想も同じようなところをめざしているんだと思います。彼の表現ではわかりにくいのですけど。
 それにしても「SFパニック小説」というのは、レーベルとしてはともかくジャンルとして成長することができるでしょうか?
 三枝さんはどうお考えか分かりませんが、梅原さんは「SF」にかわる「ジャンル」としてサイファイを考えておられるのでしょう。
 サイファイという「SFパニック小説」のレーベルがあってもいいし、作品のラインナップによっては売れるだろうと思います。が、ジャンルとしてあまりに狭すぎ、という印象なのですがどうでしょう。「SFパニックもの」では「蒲生邸事件」も「秘密」も「スキップ」も入らないように思うのですが。

>ジャンル内で、どれを引いても同じテイストになるように、ということです。
>そういった条件が満たされると、読者は一人の作家に固執するのをやめ、ジャンル内の他の作家へと読書範囲を広げます。
>あくまで、理想論ですが。

 分かりました。ただ、どうでしょうか。実際の読者はそんな風に動くのでしょうか? 例えば「日本沈没」を読んだ読者が「同じパニックものだから」という理由で「ジュラシック・パーク」を手に取るだろうか? どっちかというとレーベルの力というのは作品の内容というよりは信用度ではないかと思うんですよ。「コバルトの新刊だから面白そう」とか「ハヤカワの銀背だからはずれはないだろう」とか「国書刊行会の本? きっとマニア向けだな」(失礼かな)とか。
 角川ホラー文庫のすごいとこは、既存の作品をうまく選んで「ホラー文庫」の枠に入れて文庫の信用を付け、更に新人の優秀な作品を投入して文庫を育てているところでしょう。もちろん三枝さんのおっしゃるとおり新人賞を設定し新人を掘り出していること、ホラーの文庫レーベルを安定して供給していることなどは高く評価しなければいけないと思いますよ。


サイファイってネーミングがなぁ・・・[ぐりふぉん] 1999年09月28日(火)00時19分44秒 より

> 梅原さんも「超メタ言語作品を排除する」「金の儲かる作品」と言うことしか述べておられません。あとは「形式が違う」とおっしゃるだけです。

 そのあたり、凄く不透明ですよね
 なんか「スター選手を集めて新球団を作れば優勝できる!」と言ってるような感じが拭い切れないです、私には。

 「既存の才能すら見出せない世間が」というのは痛烈な言葉ですが知名度は低いけどサイファイ作品として再度売り出せば売れるに違いないと梅原さんが考える作品の具体例の一つでも上げてあれば説得力も増すとは思うんですけれども。


う〜ん、よくわからないなあ[四不人] 1999年09月28日(火)12時58分02秒 より

>レーベル名によって「同系統の本を探す」読者が、新しい作家を手にとる指標がないということになります。
>もしその指標に「SF」という名前をつかうのだとしたなら、「ソリトンの悪魔」も「言壷」も「銀河英雄伝説」
>も同系統だということになります。しかし、読めばわかりますが、それらは同じじゃないです。良くも悪くも全
>く別のものです。

 これに対して私がお聞きしたかったのは、例示なさった「パラサイト・イヴ」「蒲生的事件」「天使の囀り」「Y」「スキップ」「イツロベ」「金のゆりかご」「ジュラシック・パーク」「Xファイル」「日本沈没」は同系統で、「言壷」「銀河英雄伝説」が別系統であるという分類の基準と、その分類が「売れる・売れない」とどういう関係があるか、と言うことなんですけど。
 例えば【日常を徐々に侵犯する異物】なら「言壷」のほうが「蒲生邸事件」よりも基準にあっていると思うな。少なくともそう思う人は少なくないと思うんですよ。ここに例示されてないので三枝さんがどうお考えかは知らないんですが、前にこの掲示板で名前の出ていた「ヴィーナスシティ」と「日本沈没」の距離は「スキップ」と「日本沈没」の距離より小さいような気もする。
 だから問題なのは「系統分類の恣意性」ですね。「売れるかどうか」「構想が有効かどうか」を話すんなら、取りようによってはどうとでもとれる基準を元にするのはどうかと思います。


》現実的で日常的な舞台設定から、徐々に超自然や超科学の領域へ踏み込んでいく
>という定義を示しているにもかかわらず、むりやりその定義が【存在しない】ことにまでして。

 えーと、「存在しない」とは思っていません。梅原さんのその定義では、彼がサイファイとは区別しようとしている「超メタ言語作品」との違いが分からない、ということですね。例えば梅原さんがSFマガジンのテレポート欄で挙げていたのはバラードですが、例えば彼の「結晶世界」。あれはどう読んでも「日常的な舞台設定から、徐々に超自然や超科学の領域へ」という物語だと思います。


舞台は日常[四不人] 1999年09月28日(火)17時59分09秒 より

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感情移入の問題[四不人] 1999年09月28日(火)19時56分23秒 より

>多くの人は、比較的自分に似た人間、自分と似た環境にある人に共感することが多いらしいです。

 そりゃあそうでしょう。そう思いますよ。でも小説を読んだり映画を見たりするときの感情移入や共感って言うのは日常生活のものとはずいぶん違うと思いますよ。悪人が主人公であれば、彼の悪事の成功を一緒に祈ったりするでしょう? それが殺人であることすらありますよね。そんなのは日常生活では希ですが、フィクションを楽しむ上では普通のことです。
 だから私が言いたいのは、「フィクションを楽しむ上での感情移入・共感は、登場人物の日常が読者と同じである必要はなく、また似ているからと言って感情移入しやすいというものではない」っていうことです。見も知らぬ外国が舞台の映画でもできの悪い邦画よりよっぽど感情移入しやすいものがあるってことです。

>時代小説はお約束の世界です。読者と小説内の登場人物との間で共通のお約束が成立している世界で、それゆえ感情移入が成立する小説です。
>これの証明は簡単です。時代小説は江戸時代・戦国時代物の方がそれより古い時代を描いた話よりよく売れるという点です。
>鎌倉、足利の時代の話、さらに平安に至っては、読者の間にお約束の知識が充分に普及していないがゆえ、あまり好まれないのです。

 これの反証は簡単です。ちまたに溢れる古代・中世中国ものはどうです? 江戸時代の日本に比べて「お約束の知識が充分に普及」しているとはいえないでしょう。でもそういう作品は多い。ヘタをすると新刊なら江戸ものより多いかもしれない。
 ファンタジーや時代小説でも「お約束の世界であるかどうかは、受けることとはあまり関係ない」と思いますよ。例えば従来の異世界ファンタジーは中世ヨーロッパ風のものが多かったですが、そこへ登場した「陰陽師」は世界観も用語もネーミングのセンスも全く異なるにも関わらず支持されているし、模倣者も多い。三枝さんがおっしゃるように「平安に至っては、読者の間にお約束の知識が充分に普及していない」にも関わらず、です。

>私は「陰陽師」と「アルジャーノン」(20年待ったかいがありました)は「サイファイ」だと思いますよ(中略)
>そのほかの作品は「サイファイに含まれない」ことで異議はないです。すべての売れるSFがサイファイに含まれる必要はありません。

 とおっしゃるので分かりにくいと申し上げているのです。「日常への侵犯」が基準であるのに、「陰陽師」「アルジャーノン」はサイファイで「結晶世界」「暗闇のスキャナー」はサイファイでないのですか?

》この現実社会と同じである」ために感情移入がしやすいことや「ジャンル内で、どれを引いても同じテイストになるようにということ」はメリットのあることなのでしょうか?
>私はメリットがあると思います。
>私は植物の方が専門ですので、SFに出てくる宇宙人の描写を読むたび「異星の生物がそんなに人間に似ているはずないじゃないか
>(同じ地球に住む植物だってあそこまで動物とは違う生き物なのだから)」と思うことがままあるのですが、人間とかけ離れた宇宙
>人では読者は納得できないのです。理解できない相手に共感したり怒ったり、つまりは感情を揺さぶられることはあまりないからで
>す。

 そんなことはないでしょう。ジャック・ヴァンスをお読みになったことはありませんか? あるいは「愛はさだめ、さだめは死」は? フィクション上で感情移入が成立するには、人間と似ているかどうかは関係ないでしょう。だってカモメを主人公にした小説だって、イヌを主人公にした映画だって成り立ちますもん。 擬人化してなくったって、ドキュメンタリーの生き物に感情移入することはないですか?

>また、同じテイストにすることによって、読者を裏切らないでいると、固定客がつきます。
>よく似たパターンの小説の間にも名作と駄作が存在し、常に目新しい発見があることは、ハーレクインや架空戦記、やおい、SMポル
>ノ、スペオペ、伝奇小説、パズラー型本格ミステリの愛読者にはわかっていただけることと思うのですが。

 そうした「同じテイスト」ゆえにこれらの分野は飽きられるのが早くメジャーになりそびれた、と言う分析も可能ですね。いずれにせよおっしゃるほどのメリットは感じられませんが。


三枝さんへ(1)[四不人] 1999年09月29日(水)13時21分49秒 より

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梅原さんによるサイファイの定義[小林泰三] 1999年09月30日(木)00時40分07秒 より

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超メタ言語的な小説[たかはし] 1999年09月30日(木)12時27分48秒 より

>次ぎに「超メタ言語的な小説」ですが、はっきり言って梅原さんの定義はよく
>わかりません。
>うまくパラフレーズしていただける方はおられませんでしょうか?

私が以前書いた「サイファイ・サイフィクト用語の基礎知識」では、

超メタ言語的作品
「現代SF」と称する作品。超メタ言語的文章で書かれたような作品。マニア ックで、あまりにも現実味がなさすぎ、大衆受けしない小説。説得力もリアリ ティーもない設定や小道具や人物が、何の前置きもなく、いきなり登場してくる。「スペフィクト」とも呼ぶ。

となっています。この色つき部分ということでどうでしょうか。


まず要点[四不人] 1999年09月30日(木)16時05分08秒 より

》・定義というより恣意的に分けてるだけではないか(「アルジャーノン」はサイファイで「結晶世界」はサイファイじゃないの?)
》   →だからもっと明確にして欲しい
>境目がはっきりしない例ではないのですか?
>定義が曖昧なのではなく。

 う〜んと「定義が曖昧」というよりは、「定義が明確な割に言ってることが定義にあってない→ 恣意的あるいは定義が間違っている」と言うことでしょう。

》・とすると「そういう定義をもった作品が受け入れられる」という主張にも疑問が生じる
》   →感情移入のしやすさと売り上げの問題
>なじみの世界(日常、もしくはお約束の世界)からはいると、物語世界が
>理解しやすく、物語世界に入り込みやすく、感情移入がしやすいんです
>それを「違う」とおっしゃるなら、四不人さんはかなり特殊な方だと思わ
>れます。

 「感情移入は、なじみの世界じゃないから難しいなんてことはないんじゃないか」と言ってるわけです。だから「感情移入しやすい」だけを問題にするなら、「なじみの世界」に限る必要があるのか、と。

>普通の人は、なじみの世界の方が知らない世界よりわかりやすいんです。

 「わかりやすい」かどうかを問題にしているんじゃなくて、「支持されるかどうか」「売れるかどうか」ですよね。「わかりやすかったら必ず売れる」と言うものでもないし。

》・私はいろんな理由から「区別」しない方がうまくいくと思う
>はっきりさせていただきたいのですが、その「区別しない方が良い」とい
>うのは、すべてのジャンルで、ですか? それとも、「SF」というジャ
>ンルとその関連ジャンルにおいてだけ、ですか? それとも特にサイファ
>イ関連の場合だけ、ですか?

 今回に関してはサイファイの話をしているので、サイファイの場合についてです。SFでも同じだと思うけど。他のジャンルについては「全て」なんて言い切る自身はありませんよ。


かなり強引に展開してて突込み所満載で申し訳無いですが[ぐりふぉん] 1999年09月30日(木)22時37分40秒 より

[PickUp !]


分かりにくいたとえかも知れませんが[四不人] 1999年10月01日(金)00時07分14秒 より

[PickUp !]


超メタ言語的[小林泰三] 1999年10月01日(金)01時01分35秒 より

>超メタ言語的作品
>「現代SF」と称する作品。超メタ言語的文章で書かれたような作品。マニアックで、あまりにも現実味がなさすぎ、大衆受けしない小説。説得力もリアリティーもない設定や小道具や人物が、何の前置きもなく、いきなり登場してくる。「スペフィクト」とも呼ぶ。

やはり違和感を感じます。まず、「説得力もリアリティーもない設定や小道具や人物が、何の前置きもなく、いきなり登場してくる」というのはジャンルを問わず単に下手な小説であって、これを定義に入れてしまうのはあんまりではないでしょうか?

それから「大衆受けしない」という部分も気になります。サイファイの「金儲けができる」もそうですが、読者の反応を表す言葉をジャンルの定義に含めるのも納得し辛いのです。
例えばホラーの定義に「読者が怖がる」と言う言葉を入れてもいいでしょうか?読者の反応は千差万別です。ジャンルの定義は小説側で閉じておくべきだと思うのですが、いかがでしょうか?


良い感じだ[ぐりふぉん] 1999年10月01日(金)01時53分08秒 より

> 私のイメージは多次元空間ですね。X軸Y軸Z軸・・・に新奇さ、謎解きの比重、鬼畜度、科学性、論理性、幻想性・・・ととっていけば、特定の作品は「エンターテイメント多次元空間」(笑)の中の一点として表されます。

面白いですね、そういう考えでいけば「ジュブナイル」がジャンルではないという意味がよく解ります、軸なんですから。

それで思ったんですが、例に上げられている軸のいくつかは謎解きの比重(パズラー)科学性(SF)幻想性(ファンタジー)と言うようにジャンルの特性と対応してますよね
これは見方を変えればジャンルが軸を作るとも言えるんじゃないでしょうか

つまり、従来の軸構成ではプロット出来ない作品が現れたときその作品をプロットするために新しい軸が必要になりそれが新しいジャンルと言う雲を浮び上がらせるわけです。

そう考えると、サイファイ構想は従来の軸構成ではプロット出来ない作品や新しい軸を提示できてないと言えるのかもしれませんね


新ジャンル[四不人] 1999年10月01日(金)17時58分48秒 より

《前半省略》
 あるう程度の数、作品が現れると、それらに共通する特性の幾つかについて「軸」ができ、その軸を元にしてジャンル「領域」みたいなものが認知される。
 作品の数が増え、発展すれば当然のことでしょうがバリエーションが増すと初めは特定の「軸」の周りにだけ分布して境目が分かりやすかったものが次第にぼやけた雲になる、っていう過程を取るのでしょう。

>そう考えると、サイファイ構想は従来の軸構成ではプロット出来ない
>作品や新しい軸を提示できてないと言えるのかもしれませんね。

 そうですね。今の所、梅原さんの構想は「ジャンル」と呼ぶべきものではなく、あそこに書かれているのは、「レーベル企画構想」くらいのレベルだと思います。それでも十分とも言えますけどね。一人の作家が、殆どはまだ書かれていない作品を元にしておっしゃっている構想ですから。


Re: 超メタ言語的[たかはし(ジョ)] 1999年10月01日(金)21時51分06秒 より

>やはり違和感を感じます。まず、「説得力もリアリティーもない設定や小道具
>や人物が、何の前置きもなく、いきなり登場してくる」というのはジャンルを
>問わず単に下手な小説であって、これを定義に入れてしまうのはあんまりでは
>ないでしょうか?

いや、あんまりだと思いますよ(^^; なので、私としては梅原さんの提案はそのままでは首肯できないのです。

>それから「大衆受けしない」という部分も気になります。
(略)
>例えばホラーの定義に「読者が怖がる」と言う言葉を入れてもいいでしょうか?

定義としてはまずいでしょうね。ただ、ジャンルの説明の役には立つんじゃないでしょうか。「恐怖」というものとまったく関係ないところでホラーを語るのも、何かしら不自然なものを感じます。いやまあホラーは詳しくないのですが。

というわけで、梅原さんの言う「サイファイ」は、「ミステリ」「SF」「ホラー」という括り方を指す言葉としての「ジャンル」ではなく、「ある傾向の作品を束ねたもの」、と思っています。そして、その傾向には、「説得力もリアリティーもない設定や小道具や人物が、何の前置きもなく、いきなり登場してくる」ようなものを含めたくないのでしょう。

#おそらくこの場合の「リアリティー」は、「作品内世界における整合性」
#とかではなく「現実世界そのものとの距離」を指しているのでしょうし。


皆さんのご意見を総合すると[小林泰三] 1999年10月02日(土)00時44分25秒 より

梅原サイファイはジャンル名ではあり得ないということになりそうです。
「サイファイ」は単なるレーベル名かコピーで、ジャンルはあくまで SF。だとすると、従来の SF と手を切るとか、別のものだと主張することが意味不明になってしまいますね。


なんかたまらんなぁ[ぐりふぉん] 1999年10月03日(日)13時31分09秒 より

本や映画のコピーとしてSFは使われなくなりつつあり、本屋では漫画文庫やYAの拡張でSFレーベルの扱いが縮小していく一方、このままではSFがやばいのでリセットボタンを押そう、その方法としてCIを行う名前を変えることで、旧名称のイメージを払拭し食い違うようになった「記号表現」と「記号内容」を一致させる事が出来るからだ。

ここまでがサイファイ構想の動機と基本方針ですよね
これにはすっごく納得できるんですよね説得力あるし

ただ、提示されたサイファイの定義には疑問点が多くレーベルの特色ならまだしもジャンルの定義とは言えないのではないかというのがこれまでの流れになってる。

それで「現実的で日常的な舞台設定から物語の幕が開いて、徐々に超科学・超自然の世界へ客をいざなっていく大衆娯楽ストーリー」というのに付いてもう一度よーく考えてみたんですが、これってもしかして単に「エンタテイメント性の高いSFガジェットを使用したホラー」になっちゃうんじゃないかって気がしてきたんです、サイファイの定義を「現実的で日常的な舞台設定から物語の幕が開いて徐々に異物が進入してくる話」と書き換えてみると解るけど、これって典型的なホラーの手法ですよね。
手法を定義に含めるのがおかしいのかおかしくないのか話で定義に含んでいるジャンルはないかと考えているうちに気づいたんですが。

もちろん「SFガジェットとホーラーの手法を使うジャンル」と言い方も出来るかもしれませんが、小林さんの「「これはもはや○○ではない!」という売り方は理解できますが、この売り方は基本的には「○○」のユーザ向けですね。」というのと合わせれば「サイファイはSFの読者をホラーに取込むための商業戦略」と考えれば実にすきっりるんですよ。

なんか、個人的には「サイファイは看板に偽り有り」って結論になっちゃいそうなんですが、【SFとサイファイの境目】ではなく【ホラーとサイファイの境目】について考えてみるのも良いかと思います。


イメージのSF[たかはし] 1999年10月03日(日)22時40分32秒 より

[PickUp !]


イメージ戦略[小林泰三] 1999年10月04日(月)01時20分28秒 より

>梅原さんの戦略のアウトライン(実際の物言いはともかく)は、上記のような
>「イメージ」を「従来のSFを正しく把握したもの」だとして、そのイメージに
>そのまま乗っかった上で、「でも、サイファイは違うんですよ」ということにして、
>「これがあなたの読むべき本です」と勧める戦略ですよね。そういう意味では、
>きわめて意味明瞭であると言えるのではないでしょうか。

確かに意味はわかるのですが、どういう読者層を対象にした戦略かが気になりますね。SF 読者に対しては反発を招きそうだし、ミステリやホラーの読者に対してはわざわざ「サイファイ」などと言って警戒させなくても、「異色ミステリ」、「新感覚ホラー」、「幻想伝奇」などと SF と関係なさそうなコピーをつけた方が効果がありそうです。


ホラーとサイファイ[四不人] 1999年10月04日(月)16時31分22秒 より

 ぐりふぉんさんの問題提起は
(1)サイファイの定義には疑問点が多くレーベルの特色ならまだしもジャンルの定義とは言えないのではないか
(2)それは「現実的で日常的な舞台設定から物語の幕が開いて、徐々に超科学・超自然の世界へ客をいざなっていく大衆娯楽ストーリー」という「手法」を「定義」にしている点じゃないか
(3)本筋から関係ないけど、このサイファイの「手法」とはホラーでよく使われる「手法」と同一じゃないか
っていくことですよね。
 まあ「サイファイはSFの読者をホラーに取込むための商業戦略」というのは言い過ぎかも。三枝さんが言うように「ホラーだけの手法」じゃないですからね。
 ただ梅原さんが、「現実的で日常的な舞台設定から物語の幕が開いて、徐々に超科学・超自然の世界へ客をいざなっていく大衆娯楽ストーリー」というサイファイの「定義」を書いた背景には、

>日本における現状では、サイファイの代わりに、ホラーがその任を背負って、デファクトスタンダードと化しています。

とか、

>そもそも、いちばん迷惑しているのは、私です。子供の頃から憧れていた「SF作家」を名乗れず、「ホラー作家」を
>名乗るしかないのですから。

とかいう対青山書簡の文章から考えて、ホラーの現状分析があったことは間違いないでしょう。そして「現実への侵犯」を「超科学・超自然」のものが行う、と聞いて真っ先に思い出すものがホラーであることに間違いもないでしょう。だから多分梅原さんの構想は、現在成功している(と彼が考える)ホラーの「手法」でSFを分類・再編しようというものだったと言ってもいいのではないでしょうか。


手法とジャンル[四不人] 1999年10月04日(月)17時08分33秒 より

 手法で定義される「ジャンル」があっても私はいいと思いますよ。ただ、手法を「ジャンル」の定義にしてしまえば、発展性は大きく制限されてしまいますよね。「新しい」あるいは「違った」手法を用いれば、そもそもジャンルからはみ出してしまう。だから「手法」をジャンルの境目に決めるのはとても危険だと思います。まして、その「手法」が「売れる」ことに繋がるかどうかにも議論があるでしょうから。
 梅原さんは今の(というか、彼が構想を作った時点の)ホラーを「サイファイがめざすものに近いもの」と考えていらっしゃったフシがありますが、その「ホラーが売れる原因となった手法」が「日常から徐々に」というホラーによく見られる「手法」であるかどうかは疑問だということですね。


ホラーは[四不人] 1999年10月04日(月)18時23分26秒 より

>ホラーが売れた理由ってのは、手法だろうか?
>うーん、これはどの辺りまでそうなのか、梅原さんに訊いてみないとわかんないんですが、まず最初は売れるSFを解析したのではないかと。

 まあ、ホントに梅原さんに聞いてみなければ分からないのですが、多分梅原さんは「ホラーが売れた理由ってのは、手法」とお考えなのではないでしょうかね。それと売れたSFについての言及は割と少ないんですよね。SFが売れなかった理由については山ほど言及があるけど。
 それは枝葉末節の話ですが、ちょっと皆さんにお聞きしたいのですが、日本で「ホラー」が売れ出したのはいつ頃のことで、そのきっかけとなったのはどういう作品群なのでしょうか?
 前に「ホラーを読んでないのでは?」と三枝さんに指摘されたので、自分の読書を思い出していたのですが、何となく坂東さん、瀬名さん当たりがブームの初めかな、と思っていたのです。そうすると友人が「ゾンビだろう」というのでちょっとびっくりしました。そうだとすると現在のホラーブームは「スプラッタ」ムービーからの継続なのか? それともああいうスプラッタ系のブームやS・キングのブームと現在のブームは不連続なのか? 皆さんはどうお考えなのでしょう? 今の角川ホラー路線の直接の「先祖」はキングやクライヴ・パーカー(だっけ)なのでしょうか?


SFは死んだ[akaosug] 1999年10月04日(月)19時00分37秒 より

SFは死語、と青山さんはおっしゃいました。
なるほど、今となってはそうかもしれない。
「浸透と拡散」を目指したSFというムーブメントとしては「SFは解体した」と宣言してもいいのかもしれない。一種の勝利宣言。
すると残るのは、SFっぽいミステリ、SFっぽいサスペンス、SFっぽいホラー、SFっぽい伝奇もの、SFっぽい純文学、SFっぽい科学小説、SFっぽい冒険小説、SFっぽい奇想小説、etc.
それでもコアSFというのが残るのではないかと考えるのはイデア主義者の感傷でしょうか(たぶんそう)。
じゃあ科学小説とか奇想とかいうラベルに市場競争力があるかというと不安はある。そこであるときはSF、またある時は、という具合の卑怯なダブルバインド方式が有功ではないか。
それでとりあえずはSFマガジンの誌名には悩まなくて済む、というのはどうでしょう :-)


線の引き方[四不人] 1999年10月04日(月)23時41分44秒 より

>そして、ある作品がSFというジャンルに入るかどうかというのは、
>「手法よりもガジェットの方が強いのでは」
>と思っているからです。
>妙な例を挙げたのは、それについて他の方の意見を伺いたかったからです。

 なるほど、そういう意図でしたか。三枝さんもおっしゃってますが「ガジェットを使う」というのも手法の一つと見ることもできますから、それは「手法とはなにか」によりますね。これも本気で議論すれば難しい問題でしょうが、深入りは避けたい(笑)。
 最近のこの掲示板を読み返しての個人的な感想ですが、「ジャンルを定義すること」と「ジャンルとジャンルの間に線を引くこと」はかなり異なる問題のような気がします。ある作品が「ジャンルAに入るかどうか」と、「ジャンルAに属するかジャンルBに属するか」の違いですね。
 梅原さんは「SF」の中にかなり強引に「線」を引いて、「サイファイ」「超メタ言語作品」「スペオペ」に分けようとされています。だから、ホントは「その線の引っ張り方は何の役に立つのか」「線の引き方は正しいのか」ということなのですよね。「サイファイの定義」を議論するより、「線の引き方、及びその妥当性」を議論したほうが良かったのかなあ。でも彼の構想では「線の引き方」は「サイファイの定義」からしかわかんないんだよなあ(嘆)。


早すぎる埋葬[たかはし(ジョ)] 1999年10月05日(火)13時12分42秒 より

>SFは死語、と青山さんはおっしゃいました。
>なるほど、今となってはそうかもしれない。
>「浸透と拡散」を目指したSFというムーブメントとしては「SFは解体した」
>と宣言してもいいのかもしれない。一種の勝利宣言。

でも、それって負け惜しみみたく聞こえるです。
本当に浸透したんですか? 単に拡散しただけではなく。私にはそうは思えないのですが。もっといろいろあってもいいはずなのに。

#ブルーベリージャムの法則?

いわゆる社会派などの台頭により、本格(推理小説)は死んだ、発展的に解消・解体された、その歴史的役割を終えた、などと誰もが思ったのなら、最近の本格系ミステリの発展はありえなかったでしょう。
そういう意味でも、青山さんの発言はちょっと残念に思いました。


幻の仮想敵[四不人] 1999年10月05日(火)13時18分32秒 より

>私は「時をかける少女」や「七瀬ふたたび」はサイファイで良いと思いますよ。
>梅原さんは言い方が悪い。
>作家名でジャンルは区切れない。作品名で区切らないと。だから筒井の作品の中
>にはメタ言語的な作品もあればサイファイ的な作品もあると言うべきだったと思
>いますね。

 おっしゃるとおりですね。まあ、その点に関しては私は梅原さんは「言い方が悪い」じゃなくて「間違っている」と思いますが。筒井さんに限らず、神林さんも大原さんもバラードもディックもいろんな作品を書いてますから、ひとくくりにするのはバカげています。梅原さんの尊敬する小松左京さんだって「あなろぐ・らう゛」とか「大阪に住むと言うことは」(だっけ)とかニューウェーヴ的作品があるわけですしね。

 でもね、そうすると一層「SFを大衆から受け入れられなくさせた超メタ言語作品」って何?ってことになるのですよ。梅原さんは筒井・神林・大原諸氏の名前をあげて、彼らが書くようなものを「超メタ言語作品」といっているわけですよね。
 結局彼の言うところの「SFを大衆から受け入れられなくさせた超メタ言語作品」など存在しないのでは、というのが私の変わらぬ感想何ですけどね。確かに彼の言う「個々の文章や、個々の場面に現実味がなく、言葉と現実との一対一の対応関係を壊して、勝手に『言葉だけの宇宙』を作ってしまったようなタイプの小説」というのは、実験的手法の作品の失敗作の中にはあったでしょうが、その存在故にSFが大衆から忌諱されるほどの数が存在したとは思えないし、そんな忌諱が起こったということ自体幻ではないかと思います。
 だから特定の作家をあげつらって彼らに梅原さんの言う「SFに対する忌諱」の責任を押しつけるのは間違っている上に、サイファイにとってすら有害でしょう。

 この掲示板で幾人かの方が書いておられたことですが、「普通の読者は(気に入った)同じ作者のものを読む」傾向があり、サイファイを書く作家の作品にだって実験的なものからサイファイまで幅があるのなら、わざわざ「ジャンル」としてのサイファイからめくじら立てて追い出す必要がどこにあるんだ、と思います。
 特定の出版社の「レーベル」としての「サイファイ」なら別にどういう制限(ポルノはダメとか、宇宙ものはダメとか)を設けようが別にかまわない(売れるかどうかは別)ですが、「SF」にとってかわろうといわんばかりの「ジャンル」としてはダメダメでしょう。


勝ち負けで言うと[四不人] 1999年10月05日(火)13時29分30秒 より

>SFは死語、と青山さんはおっしゃいました。
>なるほど、今となってはそうかもしれない。

 という考え自体が「SF業界」内部のものではとか思ってしまいます。普通の人は「SF」が死んでるか生きているか自体に関心がないでしょう。

>でも、それって負け惜しみみたく聞こえるです。
>本当に浸透したんですか? 単に拡散しただけではなく。

 日本人は平和とSFはタダで手にはいると思っている(笑)。特別意識することなく「SF」が生み出した概念やガジェットを利用する、っていうのは「勝った」ことにならないかな、勝ち負けで言うと。でもそうか、普段「平和」だからって「平和」が勝ったことにはならないか。やっぱ負けかも(笑)。


幻想伝奇[小林泰三] 1999年10月06日(水)01時11分26秒 より

>「異色ミステリ」「新感覚ホラー」というのは、すでに行われています
>よね。でも、似たような作品がミステリになったりホラーになったりで、
>なんとなく落ち着きが悪いし、そのジャンルがにぎわうための核にも
>ならなさそうです。

これにさらに「サイファイ」が加わった場合、かなり分が悪そうですね。

ところで、僕はジャンル同士が常に明確に分離できるとは思っていませんし、二つ以上のジャンルに跨る作品もあると思っています。現に SF とホラー、SF とファンタジーなどに跨る作品は数多くあります。しかし、「梅原サイファイ」は排他的な定義を持ってます。つまり SF とは別物だと主張しているわけです。非常に SF に近しい存在でありながら (というか、SF そのもの)、SF との違いは明確でなければならないというのは、そもそも無理があります。

SF を分割せずに全部をサイファイと言い換え、SF ファン以外にも取っ付きのいい日常ものを全面に押し出し、その実本格 SF も後に控えているようなシリーズを出すというのなら、理解できないこともないのですが。

>一方、小林さんおすすめの「幻想伝奇」ですが、これはいわゆる伝奇小説の
>延長線上にあるわけではないですよね?

はい。伝奇小説ではありません。もっとも伝奇を含んでいても構いませんが。実は「幻想伝奇」でなければいけないわけではないのです。非 SF ファンが関心を持ちそうな名前ならなんでもいいわけです。

>#それにしても従来のSFの流れを全部組み入れるような、つまり
>#探偵小説→推理小説→ミステリのような、ほぼジャンル全体を
>#別の名前で呼ばせてしまうような名称にはならなさそう?>幻想伝奇

いえ。これは「時をかける少女」や「スキップ」から、「銀河帝国の興亡」や「結晶世界」を含む全 SF をそのまま含むジャンルでなくてはなりません。
つまり、非 SF ファンを SF の世界に引き摺り込む切っ掛けなのですから、内容と名前が一致しないことは特に気にしていないのです。つまらないものを読まされたと怒る人もいるかもしれませんが、そういう読者はどうしたって、SF ファンにはならなかった人です。(^^)


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