名編曲者 Milt Okun氏 |
ブラザース・フォアの曲のほとんどは自作ではなく、民謡や一般ポップス曲、映画音楽などを取り入れたものです。その際に重要となるのは選曲、広報、ムード作りなどを行うプロデュースと、選曲された楽曲をブラザース・フォアにあった編曲(arrangement、特にvocal
arrangemen)です。ブラザース・フォアの声域・声色やグルーメのムードなどに合わせ、ファンに受け入れられ、また、新しいファンを獲得させようとする編曲です。その役は日本語では編曲者(arranger)と呼ばれます。 ブラザース・フォアの編曲者は多くいますが、特にマイク・カークランドが在籍していたオリジナル・ブラザース・フォア時代のレコード解説シートや盤面のラベルルなどを見るとよく目にするのがミルト・オークンMilt Okunという編曲者です。ブラザース・フォアらしさを作り上げた重要な役を担ったと言えます。(本名はMilton Okunのようです) オークンは1923年生まれで2016年逝去しました。彼はハリー・ブラフォンテ、ジョン・デンバー、ピーター・ポール・アンド・マリー、ブラザース・フォアなどのプロデュースや編曲を行い、特にフォークの分野で多くの成果をあげました。ここに詳細があります。 オークンがブラザース・フォアにいつ頃から関係してきたか?アルバム一覧でみると以下です。 |
青文字:関係ないと見えるアルバム 赤文字:一部に名前が見えるアルバム 赤枠:アルバム全体のボーカルアレンジを担当 |
1960
THE BROTHERS FOUR 1960 Rally Round 1960 B.M.O.C 1961 Roamin' 1961 Song Book 1962 In Person 1962 Cross-Country Concert 1963 The Big Folk Hits 1964 Sing of Our Times 1964 More Big Folk Hits 1965 The Honey Wind Blows 1965 Try To Rememver 1966 A Beatles Songbook 1966 Merry Christmas 1967 A New World's Record 1068 Today and yesterday 1969 Let's get together 1970 The Brothers Four 1970 |
概ね1963~1967年のアルバムに大きく絡んでいる。アルバム全体のボーカル・アレンジメントを担当していたのにも、ちょっとびっくりしました。 途中のThe Honey Wind Blowsにはオークンの名前を見つけることはできませんが、このアルバムは初めてオーケストラ伴奏が入ったものであり(ファンには衝撃が走った)、もしかしたら関係しているのかも知れません。Cross-Country Concetの中では「牛追いの歌」がオークンの編曲。Today and yesterdayは日本録音・日本のみ発売のアルバムですが、収録された「ラ・マンチャの男」ではオークンの楽譜が残されている。他の収録曲にも関係しているのかもしれないが、記録がない。シングルでは1963年の「北京の55日」も担当しています。 |
The Big Folk Hitsのラベルから |
北京の55日のラベルから |
Try To Rememberのラベルの様子 |
ビートルズ・ソング・ブックの解説書から。下の小さい字にオークンの名前が見える。 |
Merry Christmasアルバムの解説書から。 |
Where Have All The Flowers Goneの楽譜に見るオークンのサイン |
ちょっとわかりにくいが「ら・マンチャの男・メドレー」の楽譜に見るサイン |
ほか |
このように改めて振り返ってみると初期ブラザース・フォアの半音上げ演奏がオークンがアルバムに絡んだ1963年から止めになったこと、、オーケストラ伴奏や外部ミュージシャン伴奏など加わり音楽の幅が広がったこと、コーラスの質と安定感が高まったこと、そして偶然の一致だろうがマイクの退団と時期を同じくしてオークンも離れたこと、更には所属レコード会社が変わっていったこと・・・・オークンと共にブラザース・フォアの一時代が作られ去っていった感が強い。 |
ところでオークンの編曲の音楽的特徴とはなんでしょうか?残念ながら音楽理論については造詣が深くないので論を言えない。素人として感じるのは「ブラザース・フォアには素直」だということ。ブラザース・フォアの声域、声色などを無理に変えることなく、自然に歌える声域を使ってコーラスを作っていく。この場合、低音パート2名、高音域はあまり得意としないというブラザース・フォアの組成はオークンにとっては難しくもあり、腕の発揮どころでもあったでしょうが、慣れてしまえばワンパターンだったかも。4名いたが、4声(音階)になることはめったにない。また、メロディーラインの上側でコーラスを付けることもあまり多くなく、付けるにしても薄く付けるのが特徴だった。 「ラ・マンチャの男メドレー」を見てみると、最初はボブの太い声のソロを中心とした軽いコーラスから始まり、2番の「ダルシネア」はディックの甘い声を生かしたスローバラード、最後の「見果てぬ夢」には4名の声をそれぞれ生かしたソロ・メドレーから始まり、コーラスに入ってはディックとマイクのメロディーラインにボブ、ジョンの二重低音パートを絡ませる構成。 元になる曲があるとすると、幾つかの編曲パターンがあるようです (1)一次編曲者自身をオークンが行う場合 例えばビートルズアルバムなどはこのパターン。個別の曲の編曲者とアルバム全体のボーカル編曲者としてオークンが記載されている。オーケストラ編曲者は別にいる。 (2)編曲者は別に居て、アルバム全体編曲者としてオークンが登場する 例えば「Merry Christmas」アルバムの元曲は昔からの宗教曲・民謡で、それをブラザース・フォア向けに編曲した人の名前がレコード・ラベルには記載されています。オークンはアルバム全体の音楽プロデューサー・編曲者として記載されているので何らかの関与はあると思います。どの程度の関与なのかは不明です。 その一次編曲者としてStuart Gotzという名前をよく見掛けます。特にオークン登場以前によくみます。どんな方なのか?残念ながらネットにも情報なく、よく分かっていません。さらに調査を進めたいと思います。 |
「Merry Christmas」のレコードラベルに見れるStuart Gotzの名前。 |