クラシック中級者以上なら耳にしたことがあると思うこの曲名,おそらく日本で最も有名な「隠れた名曲」です。
廉価レーベルの雄NAXOSでクチャル指揮の同曲が2年連続トップセールスを記録,メジャーレーベルがなぜ録音しないのかは謎なんですが・・・。
カリンニコフ(1866-1901)という作曲家はほとんど知られてないでしょう。
1866年の生れなので,同じロシアの作曲家ではグラズノフ(1865-1936)とほぼ同じ歳。
作風ではアレンスキー(1861-1906)と比較されることもあるようです。
交響曲第1番(1895)は,生前は頻繁に演奏されていたようです。
しかし死後ほとんど演奏されなかったのは,やはりこの時期にしてはあまりにもロマン派風のため時代遅れ扱いを受けたのでしょう。
たしかにそういう物足りなさはあるにしても,この魅力にあふれた曲を放っておくのはあまりにもったいないです。
第1楽章は思わず時を忘れ,繰り返し何度でも聴きたくなるような美しさ。
2つの主題は憂愁を漂わせながらも音楽には推進力もあり,響きも魅力的。
第2主題が再現されるところは感動的でもあります。
第2楽章,第3楽章はともにロシアらしさにあふれています。
前者はオーボエとハープが効果的に用いられ,旋律の美しさは際立っています。
後者は舞曲風で,これまた中間部の流麗なメロディが引き立っています。
第4楽章は今まで用いられた主題を再現しながら進みますが,まとまりに欠けるせいか,前の3つの楽章ほど魅力を感じられないのが残念です。
また曲全体に刹那的な魅力は多いものの,全体としてのメッセージ性を感じにくいのが非常に惜しまれるところでもあります。
評価 | 演奏者 | 録音年 | レーベル | 番号 | 価格 |
○ | クチャル/ウクライナ国立響 | 94 | NAXOS | 8.553417(輸) | B |
○ | フリードマン/ロシア・フィル | 96 | ARTE NOVA | 74321 65414 2(輸) | B |
△ | ドゥダロヴァ/ロシア響 | 92 | OLYMPIA | OCD511(輸) | M |
ヤルヴィ/スコティッシュ・ナショナル管 | 87 | CHANDOS | CHAN9546(輸) | F |
評価は主観に基づくものです。
CD番号は必ずしも最新のものではありません。購入時には注意してください。 |
99年5月頃にARTE NOVAのフリードマン盤を入手しましたので,それにあわせてこの項を改訂します。
フリードマンの盤は,今までドゥダロヴァ盤で良いと思っていた,終楽章を遅めにとる演奏をしています。
さらに第1楽章もたっぷり聴かせてくれるので文句ありません。
どちらかというとメロディを聴かせる演奏で,第2楽章,第3楽章が秀逸です。
対してクチャル盤はリズムが明確で演奏に推進力があり,オーケストラ全体の響きも魅力的。
私には第4楽章がやや散漫に聞こえてしまいますが,第1楽章は逆に優秀で,全体としても決して悪くない演奏。
はじめて聴いたのがこのCDだからかもしれないけど,個人的にはフリードマン盤よりわずかに上だと思います。
ドゥダロヴァ盤はフリードマン盤の登場で個人的には価値が下がってしまいましたが,特徴的なリズムの取り方がちょっぴり気になります。
こういうのがロシア的なのでしょうか。
ヤルヴィ盤は響きがやや平坦で,魅力に欠けるように感じてしまいます。
テンポなんかはわりと動かしてるようですが,あんまり私の好みでないかも・・・。
国内盤として出ている貴重な演奏なんですけど。
というわけで,巫音月雪のおすすめはクチャル盤,フリードマン盤です。
輸入盤とはいえ,どちらも有名廉価レーベルだから入手しやすいと思います。
巫音 月雪
fusetan@mti.biglobe.ne.jp
98.9.19
99.11.30