池田亮司 / Ryoji Ikeda

datamatics [ver.2.0]完全版

2008年3月16日(日) 恵比寿ガーデンホール


心臓の弱い方はご遠慮ください

 日本が誇る音響派の巨匠。私は彼の音楽が好きでCD、DVDは何枚も持っていますが、以前、友人にCDを聴かせたら、「これは聴覚検査か?」と言われたことがありました(笑)。サイン波やプチプチ・ノイズ、極度の高周波で構成されるサウンドは、音楽ではなく、まさしく純粋な音響。あのサウンドを大音量&映像付きで体験できる、ということで、オシャレスポット(笑)恵比寿ガーデンプレイスまでやって来ました。

 客層的には、会場のイメージ通りの若いカップルもいるし、YMOの話をしている熟年チームもいる。こんな音楽を聴きに来るのは相当なマニアックな人達だと思いますが、東京の音響オタクはさすがにオシャレですなぁ(笑)。
 そして、ロビーに張り出されてあったのが、これ。
 「心臓の弱い方、妊娠中の方、ペースメーカーをご使用の方などは、ご遠慮ください」って、どんなライブですか!?(笑)。

 


苦悶の果ての不思議な快感

 会場はキャパ300人のガーデンルームで、観客の入りは3分の2くらい。正面のステージ(?)にはスクリーンがあるだけで、音響・映像の機材は客席の最後列にセットしてありました。マックのラップトップを操作しているのが、多分、池田亮司だったんだろうなぁ。どの人がアーティストなのか分からないし、観客の目に入ってくるのはスクリーンの映像だけ、というのが普通のコンサートと全く違うところ。ま、コンサートというより、インスタレーションと言った方がよいのかも。

 定刻の16時を少々過ぎて、演奏(?)はスタート。耳鳴りかと間違うような高域のパルス音、不規則に鳴らされる重低音のリズムが、音とシンクロするCG映像とともに襲ってくる。私の前の席の女性は、リズムが突然「ドンドン!」と鳴るたびに、ビクッと体が反応(笑)していました。まるで遊園地の絶叫マシンかホラー映画のような体験で、いやぁ〜、これは確かに心臓の弱い人には無理。
 正直、私の心臓も限界で(笑)「早く第1部の30分が終わって、休み時間にならないかな〜」と思ってしまいましたよ。確か、ナチスドイツは拷問用の音響兵器を開発していたと思うけど、こんな感じなのかな・・・。つーか、第2部は諦めて、途中で帰ろうかとマジで考えた(笑)。
 しかし、第1部の終盤に向けて、音も映像もさらに強烈になってくるのだ。
 ホワイトノイズの嵐と連打される地鳴りのようなリズムの中、宇宙ステーションのようなCG映像がグルグルと回転して、スクリーンが輝度を高めていくと、不思議な快感が体を駆け抜ける。「2001年宇宙の旅」のスターゲイトをくぐり抜けたような、「ガンダム」のニュータイプに生まれ変わったような、そんなカタルシスと高揚感の中、無事に第1部終了。
 15分ほどの休憩時間の後は第2部。後半はちょっと短めの25分で、音も映像も第1部よりも控えめな感じでした。
 終演後は、一応観客から拍手が起こりましたが、無人のスクリーンに向かって拍手するのもなんだか変な感じ。マッド・プロフェッサーや内田直之がPAエンジニアをやるライブだと、観客が後ろのPAブースに向かって拍手をする光景が見られますが、今回の場合、客席後ろの機材ブースに本当に池田亮司がいるのかも怪しいもんなぁ。
 ともかく、アーティストの肉体や精神とは完璧に隔絶した音響世界という、究極の体験をさせていただきました。

 



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