KRAFTWERK

2004年2月28日 ZEPP東京


17年ぶりの新作アルバム発表

 2002年のエレクトラグライドでの来日に続き、2003年には17年ぶり(!)の新作アルバムのリリースと、今までが嘘のように(笑)活動が活発になってきたクラフトワーク。1年3ヶ月いう短いインターバルでの来日です。しかも今回は大阪で2日、名古屋で1日、東京では5日という本格的な日本ツアー。私は東京公演の初日を観てきました。

 今回のプロモーターは、なぜかウドー音楽事務所。う〜ん、ウドー主催のコンサートを観るのなんて10年ぶりくらいな気がするなぁ。1階はオールスタンディングの会場なのに、なぜかブロック別、整理番号順の入場で、結構待たされました。しかし、入場してみれば、場内には柵はあるものの、ブロックで完全に仕切られているわけではなく、自由に動ける状況でした。
 客層はかなり外人率(ゲルマン率?)が高く、日本人はいかにもオタクっぽいオジさんも多い。一方で若い女の子のグループもいたりして、今のクラブ世代と昔のテクノ・ポップ世代が混在という感じでしたが、エレグラの時よりも年齢層は高い気がしました。
 東京公演の初日と2日目はちょうど土日で、開演が5時と早かったので「前座があるのかな?」と思っていたのですが、それはなし。地方から上京してきたオジさん(って俺か)が、新幹線に間に合うようにという配慮だったのかもしれません。


新作からは4曲演奏

 エレグラの時と同様、開演前のステージにはカーテンが引かれており、ステージのセッティングは見えないので、ビールを飲みながら開演を待ちます。そして、客電が落ち、逆行の照明でメンバーのシルエットがカーテンに映ると歓声が上がります。
 1曲目はいきなりの“Man Machine”。そしてカーテンが開き、現れたゲルマン人オッサン4人は、黒のスーツに赤のシャツ、黒のネクタイという「人間解体」ルック。オリジナル・メンバーである左端のラルフと右端のフローリアンに挟まれて、新しいメンバー(?)の2人が、ノートパソコンが乗ったスタンドの後ろに横一列に並んでいます。そして、ステージ後方の3枚のスクリーンには、音楽と完全同期した映像が映し出されます。

 曲目は、エレグラで演奏した全曲に加えて、新作からも4曲。昔からの重要な曲は1曲も落とせないということなのでしょうか?
 曲順というか構成はエレグラの時と変わっていましたが、“Tour de France”から“Trans Europe Express”までの流れと“Numbers”から“Dentaku”までの流れは同じだったので、彼らは「この曲からの流れはこの曲順で」というコンセプトがきっちり決まっていて、その組み合わせで、全体の構成を決めているのでしょう。

The Man Machine
Expo 2000
Tour de France 2003
Vitamin
Tour de France
Autobahn
The Model
Neon Lights
Radioactivity
Trans Europe Express

(Encore1)
Numbers
〜Computer World
It's More Fun To Compute
〜Home Computer
Dentaku

(Encore2)
The Robots

(Encore3)
Electro Kardiogramm
Aero Dynamik
Boing Boom Tschak
〜Music Non Stop


意外と人間らしかった4人

 ステージの機材関係は、今回も1人1台ずつのノートパソコンのみ(SONY VAIOCubase SX)と、非常にシンプルでしたが、真ん中の2人はフット・ペダルを踏んだり、スタンド上のMIDIコントローラー(?)のツマミを回してフィルターをかけたり、かなりリアルタイムの処理を行っていた模様。おそらく、VST LINKでつながったCubase SX 4台で、構成担当、エフェクト担当、映像との同期担当と仕事を分担していたのではないでしょうか? 
 左端のラルフ手弾きのシンセとボーカルを担当していましたが、ヘッドセット・マイクで歌う時、右手を口元に持っていって、ヒソヒソ話みたいなポーズをとるのが可愛いらしかったですね。真ん中の2人もリズムに乗って体を動かすなど、人間らしい(?)動きが目につきました。
 右端のフローリアンは、相変わらず動きませんでしたが、いきなりペットボトルを飲んだのにはビックリした(笑)。


全員のスタンドにMIDIキーボードが用意されているようです。
(日本公演の写真ではありません。)

伝説のロボット登場!

 今回のライブは、なんとアンコールが3回。最初のアンコールでステージに戻ってきたメンバーは、なぜか胸元が赤く点滅している。どうやら、ネクタイに赤いLEDが仕込んであったようです(笑)。
 そして、お待ちかねの“Dentaku”が演奏されましたが、エレグラの時のような「ボクは音楽家、デンタク片手に」の大合唱は起こらず。ちょっと盛り上がりに欠けた感がありましたが、ライブのピークはこの後にやってきました。
 1回目のアンコールの後、カーテンが引かれたまま“The Robots”が流れだします。そして、逆光の照明で映る影は・・・出ました! ロボット4体
 カーテンが開くと、そこにはメンバーの姿はなく、ロボットのみ!!

 

 いやー、これが噂に聞くクラフトワークのロボットですかぁ。曲に合わせて腕を上げたり首を回したり、冷静に考えると原始的な(?)ロボットなんですが、“The Robots”のサウンドをバックにすると異様にカッコいい。
 しかし、メンバーがステージにいない時が一番盛り上がるというのは、どういうライブなんだ!?

 さて、ロボット登場での異様な盛り上がりで、「これで終わりでもいいや」と思ったのですが、まだ3回目のアンコールもある模様。「ロボットの後で、あの4人のオッサンに出てこられてもなぁ」と思った(失礼)のですが、カーテンが開くと、なんと蛍光の格子柄スーツを着たメンバーが!
 これには一本とられた!って感じでしたねぇ。いい年したオッサンがアホだよなぁ(笑)。
 最後は定番の“Music Non Stop”で、メンバーが1人また1人と退場していきました。


(日本公演の写真ではありません。)

鋼のようなコンセプト

 全体としては、2002年のエレグラと全く変わらないライブでした。スクリーンで使われている映像素材全く同じだったと思います。クラフトワークがいつから映像との同期ライブを行っているのか知りませんが、“Trans Europe Express”や“Tour de France”での60年代テイストの映像は、繰り返し使われ続けているのだ思います。
 しかし、マンネリ化しているかというと、全くそんなことはないんだよね。楽曲にも映像にも、そのコンセプト鋼のような強度があるのだ。特急電車高速道路自転車レースロボットコンピューター。いずれも、この30年間に進化はしても廃れることの決してなかったものばかりだ。
 逆に言うと、クラフトワークは、そういう時間的耐久力のあるコンセプトに基づいたものしか、作品として発表できないのだろう。だから、17年間も新作を発表できなかったりするわけだ。
 この10年間に最も進化したテクノロジーと言えば、携帯電話インターネットだけど、この先10年後には、全く違うものにとって替わられている可能性は十分ある。十数年前「ポケベルが鳴らなくて」なんて歌謡曲があったけど、そんな安易な曲をクラフトワークが発表することは許されないのだろう。
 ようやく発表された新作アルバムが、20年前のシングル曲“Tour de France”のコンセプトを拡大したものであるということは、本当の意味での新作を発表する(あるいは、成り立たせる)ことが、いかに困難かを物語っているのではないでしょうか。
 と考えると、次の新曲やライブは、また10年は待たされるような気がするんですが・・・(笑)。

 



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