久保田利伸

NOTHING BUT AS ONE

2001年1月12日 新潟県民会館


10年ぶりの久保田ライブ

 今やアメリカを活動の拠点にしている久保田利伸、久々の全国ツアーです。“LA-LA-LA LOVE SONG”が流行った5年くらい前に、東名阪くらいでライブを演ったはずですが、新潟に来るのは7年ぶりとのこと。そして、私が久保田のライブを観るのは、“BONGA WANGA”のツアーでの仙台市体育館以来、なんと10年ぶり
 新潟県民会館は2DAYSでしたが、チケットは完売。新潟にしては珍しくダフ屋もでていました。アメリカ在住のため、世間の話題になることは少ないのですが、人気は衰えていないようです。


多国籍バックバンド

 10年前の久保田といえば、「久保田利伸&マザーアース」名義で日本人バンドと黒人コーラスをバックにライブを演っていたわけですが、今回のバンドは黒人はもちろん、白人アジア系も含めた多国籍軍。Dr,B,G,Key×2,Cho×3 というバンドに、DJとダンサー4人を加えた13人編成で、久保田利伸が「Toshi Kubota」になったことを実感させてくれます。
 マザーアースからの継続メンバーは、アルバムの共同プロデューサーでもあるキーボードの柿崎洋一郎と、アマチュア時代からの盟友、ギターの羽田一郎。日本人はこの2人のみで、ステージ上の会話は完全英語。久保田が引っ込んで、コーラスの外人3人がリードをとる曲がありましたが、どう見ても外タレのバンドにしか見えないという(笑)。
 しかしながら、演奏は結構大味だったように思う。PAの不調もあったのかもしれませんが、低音が全く不足。特に黒人ドラマーのバスドラが「パコパコ」したサウンドで、キックが全く響いてこない。キックとベースでブイブイいわせなければ、ファンク・バンドとは言えないだろう。
 パワーでは外人バンドには負けるけど、マザーアース時代の方がグルーヴの表現は緻密だったと思う。


久保田とKubotaの狭間で

 かつての久保田のライブはP-Funkノリの下世話なファンク(ドリフ的な笑いもあり)ショーだったので、最近の「Toshi Kubota」としてのストイックなニュー・クラシック・ソウル系の曲で、どんなライブを観せてくれるのかは、楽しみであると同時に結構不安でした。「10年前と同じ曲で盛り上がるライブだったら嫌だなぁ・・・」「まさか“流星のサドル”は演らないよなぁ?」と心配だったのですが、残念ながら不安的中。
 昨年リリースしたアメリカ盤“Nothing But Your Love”と日本盤“As One”の曲を中心としつつも、ライブ中盤で“流星のサドル”“Dance If You Want It”“You were mine”をメドレーで披露し、“LA-LA-LA LOVE SONG”とまさかの“Missing”はフルコーラスで演奏。アンコールでは、これまた定番の“TAWAWA ヒットパレード”“Oh, What A Night !”“タイムシャワーに射たれて”をメドレーで、と大サービス。会場を3つに分けてのダンス対決(これも定番)など、往年の久保田のファンの要望に100%応える内容でした。
 しかし、最近の曲での力の入った演奏に比べ、かつての定番曲は特にアレンジに工夫も無く、いかにもファン・サービスという感じ。「Toshi Kubota」が聴かせたいサウンドと観客の要求との落差がもどかしかった。“タイムシャワーに射たれて”のラップをやらなかったことが唯一の救いか?(アレを今の時代にやってはいけない。)
 結局、本場のR&Bシーンで活動している「Toshi Kubota」の音では、日本のポップシンガーとしてのコンサートは成立しないということなのだろう。
 ライブの冒頭、バンドメンバーが登場するまで15分間ほど、DJがソウル・ファンクのレコード(ZAPPやカーティス等々)をかけて盛り上げようとしましたが、観客からは「オープニングが長い」という不満の声が聞こえました。日本での久保田を取り巻く状況を象徴しているなぁ、と思いました。
 全国ホールツアーではなく、ソウル・ヒップホップ系のクラブでシークレット・クラブでもひっそりと演る方が、今の「Toshi Kubota」の音は確実に観客に届くような気がします。

 



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