Misia

TOUR 1999

1999年8月8日 新潟テルサ


異常に派手なステージング

 ミーシャの本格的な全国ツアーは今回が初めてですよね?
 デビューシングルの“つつみ込むように”を聴いた時の衝撃は今でも忘れられません。本来はクラブシーンで聴かれるべき音楽ですが、彼女の圧倒的なボーカルは一般リスナーにまで浸透したのでした。現在の女性ボーカリストの興隆の基礎を築いたのが彼女だということに異論のある人はいないでしょう。
 というわけで、非常に期待していたのですが、ステージが始まってみてビックリ。砂漠の中の城みたいな豪華なセットに9人編成のバンド、さらに6人(!)のダンサーにDJまでいる。冒頭5曲くらいはメドレー形式でノンストップで演奏し、レーザー光線は飛び交うは、ダンサーは踊りまくるは、異常なショーアップ具合
 確かにお客さんは喜んでましたけど、あんな派手な演出が必要なんだろうか? 僕はミーシャはソウル、R&Bにルーツを持つ本格的なシンガーだと思っていた。余計な演出無しで歌一本だけで勝負できるボーカリストだと思っていたのだけど・・・


ソウルとは無縁のバックバンド

 バンドがまたショボい。特にドラムとベースが面白くもなんともない。パーカッションのASA-CHANGが孤軍奮闘していましたが、ソウル・ファンク的なハネが全く無いいかにもロックバンド上がりのリズム隊ではどうにもならない。
 バックバンドの「?」が特に象徴的なのが、DJがバンドに加わるのではなく、途中でミーシャが引っ込んでいる間に登場してバトル系のスクラッチを披露しただけ、という事実。スクラッチタイムの後は、ダンサー達のダンスバトルがあったのだけど、その時にはもうDJは引っ込んでしまっていた。
 結局はスタッフが何か勘違いしているのだろうと思う。クラブシーンから登場したソウルシンガーを一般に売り出すために、黒人音楽のマナーを忘れてしまっている。舞台装置やダンサーに金をかけるより、バンドの質を上げるべきだろうし、ヒップホップの要素を取り入れるなら、DJプレイを生バンドとミックスするのは今時当然だろう。
 結局は普通の「J-POP」の女性シンガーのコンサートに、ちょっと黒人系の要素を味付けに加えてみました、みたいなステージでした。


ミーシャの歌は上手い。しかし・・・

 主役のミーシャの歌は上手かった。テクニックは圧倒的にあるし、ピッチも正確。
 しかし、何かが足りない。ステージ全体の演出もそうだけど、健康的過ぎるのだ。高校の運動部みたいな健全さ。
 ソウルミュージックとは文字どおり魂の音楽なわけで、その本質はマービン・ゲイの例を持ち出すまでもなく、「愛と性」にあると思う。SILVAほどエロ一直線になる必要はないけれど、極論を言えば、ミーシャに必要なのは性愛にまみれたドロドロした生活を体験することではないだろうか?
 アンコールが終わって、「みんなありがとうー!」と無邪気に手を振るミーシャを見ながら、ソウルマニアなオヤジはそんな勝手なことを考えたのでした。

 



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