PRODIGY 来日公演

1998年1月13日 幕張メッセ国際展示場2番ホール


フジ・ロック・フェス中止の無念を晴らす

 プロディジーといえば、フジ・ロック・フェス97の大トリのはずでした。2日目中止で何が一番ショックだったかというと、プロディジーが観れなかったこと。今回の来日を知った時は、「やっとあの無念を晴らせる」と感激しましたね。それだけに期待も膨らんでいたのですが、それに応える素晴らしいステージでした。


前座は2バンド

 会場はブロック指定のオール・スタンディング。私はAブロックだったのでステージは目の前で、会場入りした瞬間にいきなり盛り上がってしまいました。客は1万人くらいかな。
 ライブは前座が2バンドで、間をDJがドラムンベースでつなぐというスマッシュ(今回のプロモーター。FRF97も企画した日本では異色の呼び屋です)らしいスタイル。前座の1番目はOblivion Dustという日本のバンドで、ボーカルは日本語も話す外人(MTVのVJらしい)でした。打ち込みビートも使ったロックバンドでしたが、記憶にはあまり残ってないぞ。その程度だったということか。
 前座の2番目はEC8OR。初めて聞く名前だったけど、パンフによるとあのDIGITAL HARDCORE RECORDINGS所属ということで、何となく予想はついたんですが、登場してみるとやっぱりATARI TEENAGE RIOTそのままのサウンドとパフォーマンス。いやもう大笑いするしかないよね。超高速4つ打ちビートに、ひたすらアジテーションするボーカルで、既に音楽の範疇から逸脱してます。


プロディジー登場!

 前座の時はそれほど暴れる客もいなく、人口密度もほどほどだったのですが、いつの間にかかなり人が増えてきて、ついにプロディジー登場! 1曲目は“SMACK MY BITCH UP”!
 私も自分でも音楽やってるし、ライブって普段は冷静に観てしまうのですが、いやー今回は何年ぶりかで我を忘れましたよ。キース・フリントがステージに見えた瞬間に「ウオー!!」と叫んでました。客のパワーもすごく、Aブロック全体がモッシング状態で、最前線で体力を使い果たして後ろで休もうとしても、どこにもそんな余地は無い、というまさに興奮のるつぼでした。
 ステージの中央にリアムのキーボードブース、右にサポートドラマー、左にサポートギタリストという配置で、フロントにキース、マキシム、リロイの強烈MCが3人。キースは自分のパートの無い曲だと、すぐに引っ込んでましたね。


史上最高のリズムと音響

 とにかく、リズムの音圧が強力。まさに音塊。打ち込みリズムのライブの場合、いかに迫力を出すかが最大の課題になるんですよね。やっぱり生ドラムのダイナミクスにはかなわないんですが、クラブミュージックの場合、リズムの音色というのも重要な要素なので、単純に生ドラムという訳にもいかないのです。プロディジーは打ち込みと生ドラムのミックスでこの課題を見事にクリアーしていました。
 基本的な音圧は打ち込みのリズムで出しておき、その上でドラマーがプレイして(多分クリックは使ってない)ライブならではの迫力を加えるというスタイルで、そのバランスが絶妙でした。ドラマーもプロディジー的なブレイクビーツを実によく表現していました。
 私がこれまで体験した中でも最高の音響でした。ブレイクダウンした後の一拍目のキックの気持ち良さには、本当に気が遠くなりそうでしたよ。


これこそロックンロールの未来

 サポート・ミュージシャンもいるとはいえ、基本的にプログラミングされたビート(曲の尺もほぼ決まっている)をバックに、怪しい男達がステージで暴れ回るというライブ(音楽的なインタープレイは皆無)になぜこんなに興奮できるのか、自分でも答えはまだ分かりません。
 しかし、プロディジーが「ロック・バンド」であることは間違いありません。編成もサウンドもいわゆる「ロック」とは全く異なりますが、その破壊的な衝動とパワーはまさにロックンロール。この衝撃に対抗できるのはRAGE AGAINST THE MACHINE くらいでしょう。もはや歪んだギターとエイトビートのリズムでは90年代のロックンロールは表現できないのかもしれません。
 そう、今のプロディジーは「お子様テクノ」でも「ブレイクビーツの神童」でもなく、「ロックンロールの未来」そのものだったのです。



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