ディスク・レビュー 2000年3月


artist

STEELY DAN

title

two against the nature

label

Giant Records (2000)

 スティーリー・ダンの20年ぶりの新譜! そんなものが現実にリリースされるとは思わなかった。ドナルド・フェイゲンのソロ作や再結成ツアーがあったので、20年も経っているとは思わなかったけど、あの“GAUCHO”がリリースされたのはそんなに昔のことだったのだなぁ。
 サウンドはまさしくスティーリー・ダン。20年経っても全く変化なし。が、この20年間の音楽界の変化を思えば、時間の経過をものともしない彼らのサウンドはやはり完璧なのだろう。
 スティーリー・ダンと言えば「豪華スタジオ・ミュージシャンを湯水のように浪費した」サウンドが特徴なわけですが、参加メンバー的には今回は結構地味。特にギターはソロも含めて大半がウォルター・ベッカー本人によるプレイ。エンジニアのロジャー・ニコルスによれば、「彼らの要求に応えられるミュージシャンが減った」結果、メンバー自身のプレイが増えたそうで、その辺の状況は寂しい気がしますね。


artist

D'ANGELO

title

VOODOO

label

Virgin (2000)

 久しぶりに買ったUSブラック物。これはいい。
 エリカ・バドゥ等と一緒に「ニュー・クラシック・ソウル」なんて呼ばれるディアンジェロですが、サウンドが醸し出す雰囲気は70年代のカーティスやマーヴィン・ゲイの世界に非常に近い。ボーカルのスタイルにはプリンスの影響もあると思う。と書くと、なんだかオリジナリティーが不足しているような感じがしますが、確かにソウル・ミュージックとして目新しいものはない。しかし、久しぶりにUS黒人音楽界の良心を感じさせてくれました。
 DJ プレミア、REDMAN&METHODMAN、といったヒップホップ勢と、チャーリー・ハンター、ロイ・ハーグローブのようなジャズ畑の人脈が混在するサウンド・プロダクションも渋い。


artist

dubtribe sound system

title

bryant street

label

imperial dub recordings(1999)

 サンフランシスコのインディー・ハウス・レーベル「imperial dub recordings」の看板アーティストのアルバム。ハウスにしては珍しく、バンド形態でのライブ活動を主体にしているらしい。
 基本ビートは当然の4つ打ちですが、その上にのるラテン・パーカッションと流麗なストリングスが強烈なグルーヴを出しています。ハウス・ミュージックらしいLove & Peaceに満ちた歌詞を歌い上げるボーカルも熱い。 それらの要素をまとめあげるミックスの基本には確実にダブの精神が感じられます。
 全12曲がノンストップでミックスされていますが、最後まで全く飽きさせない好盤です。日本盤はエイベックスからのリリース。


artist

SMITH & MIGHTY

title

BIG WORLD SMALL WORLD

label

STUDIO K7 (2000)

 ブリストル好きなら誰でも知っているだろうスミス&マイティ。しかし、私が彼らの音に接したのは、91年のCarltonのアルバム“The Call is Strong”、95年の自身のアルバム“Bass is Maternal”、そしてこの新作の3枚のアルバムのみ。情報が非常に少ない彼らですが、今回も突然のリリース。
 前作ではドラムンベース(あの頃はまだジャングルと呼ばれていた)寄りのサウンドでしたが、今回はより広くダンスミュージックにアプローチしている感じ。その底辺を流れる低音はまさしくダブ。全曲でボーカリストをフィーチャーしており、綺麗なメロディーと低音たっぷりのトラックとの対比が美しい。


artist

VA

title

THE BEACH

label

London Records (2000)

 ディカプリオ主演の映画のサントラ。アンダーワールドの新曲を収録ということなので買ってみました。
 収録アーティストはなかなか豪華で、テクノ系ではLeftfield, Moby, Underworld, Asian Dub Foundation, UNKLE, Orbital 等々、ロック系ではBlur, New Order といったところ。サントラの割には新録の曲が多いので、お買い得感(笑)があります。
 期待のアンダーワールドの新曲は結構地味。後半じわじわと盛り上がってくる感じはさすがですが、シングル・カットできるようなダンストラックではない。ホーンセクションをフィーチャーしたAsian Dub Foundationの新曲が、普段の彼らとは大違いなコミカルな曲調で面白かった。


artist

SPEED KING

title

SPEED KING

label

avex trax (2000)

 既にライブでは12月の武道館でお披露目済みのSPEED KING。ご存じスカパラに田中知之(ファンタスティック・プラスチック・マシーン)とサワサキ・ヨシヒロが合体したユニットです。
 スカパラは過去にケン・イシイとコラボレートしたシングルを発表していますが、今回はテクノよりもロック度の高い内容。打ち込みビートやTB-303のサウンドも飛び交いますが、全体的な感触はクラブ対応のロックンロール。冷牟田氏の指向性が強く出ていると思います。
 ボコーダーでボーカルをとる“SMOKE ON THE WATER”は強烈にカッコいい。ライブを体験したいですな。


artist

SPEED

title

Dear Friends 1&2

label

Toy's Factory (2000)

 こちらはKINGの付かないSPEED(笑)で、解散記念のベスト・アルバム2枚。ま、商魂たくましいというか、便乗商法というか・・・
 未発表曲が5曲収録されているんですが、付録のカレンダーの写真は全部過去のジャケットと同じものだし、2枚で5000円以上もかけるほどの価値はないと思う。特に4人全員がボーカルをとる新曲“コケティッシュDreamin'”はかなり脱力する出来で、多香ちゃんの歌の下手さを再確認(笑)。あと、パソコンのデスクトップ用のソフトも付いているんですが、Windows専用でMacの私は使えないのだ!
 と、文句を言いつつ買ってしまう自分が悲しい(笑)。


artist

VA

title

HOJE E NATAL

label

mercury (2000)

 アート・リンゼイが選曲したブラジル音楽のコンピ。収録されているのは4組で、大メジャーなカエターノ・ヴェローゾとジョルジ・ベンはともかく、カシアーノとジェルソン・キング・コンボという2組はブラジル本国でもCD化されていないらしい。
 選曲テーマは「70年代のブラジリアン・ソウル&ファンク」で、こんなブラジル音楽もあったのか!?という感じで、感触はアメリカのファンクに非常に近い。特にジェルソン・キング・コンボなんて、まるでジェームス・ブラウンそのもの。こういう視点でカエターノ・ヴェローゾを聴いてみるのも、意外とダンサブルな曲もあることが分かって面白い。


artist

VA

title

Tropicalia Essentials

label

Hip-O Records (1999)

 冗談みたいなタイトルのコンピですが、内容は非常に良質なCD。カエターノ、ジルベルト・ジル、ムタンチスなどのトロピカリア期の代表曲をもれなく収録。いまいち実体が掴みにくいトロピカリア運動ですが、これさえあれば音楽面はとりあえずカバーできる感じ。
 このHip-Oというレーベルのカタログを見ると、“Bluegrass Essentials”とか“Jazz Vocal Essentials”とかいう怪しげなコンピをリリースしているようなんですが、まさかそのシリーズでブラジルのトロピカリアを取り上げるとはビックリ。レーベルとかバラバラな音源のはずですが、権利関係はクリアされているのでしょうか?


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