ディスク・レビュー 2001年1月


artist

MORENO+2

title

MAQUINA DE ESCREVER MUSICA

label

RDS (2000)

 カエターノ・ヴェローゾの息子、モレーノ・ヴェローゾのデビューアルバム。音楽の才能はきっちり遺伝しているようで、音の感触はやはりカエターノに近い。他のブラジルの若手(パウリーニョ・モスカとか)のクリアでデジタルなサウンドに対し、モレーノのくすんだような暖かみのある音像は、非常に心地良い。
 本人の歌とギターを中心としたサウンドですが、アナログ・シンセやノイズ・ギターも巧みにミックスされており、アート・リンゼイ好きの人ならきっと気に入るでしょう。
 ラストの曲は、なんとトム・ジョビンの孫、ピアニストのダニエル・ジョビンとのデュオ。単なる2世タレント以上のマジックが彼等にはあります。


artist

Caetano Veloso

title

NOITES DO NORTE

label

UNIVERSAL (2000)

 こちらは御大カエターノ本人の新作。お馴染みのジャキス・モレレンバウムはもちろん、息子のモレーノも参加。
 ここ数年は年末になると必ず新作を発表してくれるカエターノですが、今回もまた文句無しの傑作。キャリア30年にして、全くハズレなしのリリースを続ける才能には敬服します。
 今回はパーカッション部隊よりもドラムをフィーチャーした曲が多く、歪んだギターを使った「ロックンロール」なんてタイトルの曲も。しかし、極上の味わいは変わらずにキープ。ジャケット等のアートワークも素晴らしい。「粋な男」は21世紀もこのまま走り続けるのだろう。


artist

Caetano Veloso

title

a bossa de caetano

label

UNIVERSAL (2000)

 カエターノが歌うボサノバ集。色々なアルバムからボサノバ曲のみをピックアップした企画盤ですが、これが実にいい。サンバもボサノバもMPBも飲み込んだハイブリッドな音楽を創作し続けているカエターノですが、シンプルにギターを弾きながら歌うボサノバも、これまた非常に美しい。
 実は、ジョアン・ジルベルトの“Joan voz e violan”に匹敵するアルバムかも?


artist

Seigen Ono Ensemble

title

at the Blue Note Tokyo

label

SAIDERA RECORDS (2000)

 エンジニアとして有名な小野誠彦ですが、実は演奏家としても優れた才能をお持ちでして、自らのバンドを率いてのライブ盤です。2000年3月12日にブルーノート東京で収録。
 三宅純、五十嵐一生、村田陽一といったジャズ系のプレイヤーと、ヲノサトルのような音響系の人脈がミックスされたバンドが奏でる音楽は、ブラジル音楽を基本にしながらもまさに無国籍風。そして超一流。カエターノやピアソラの音楽に全く引けを取らない。
 確か、これがセイゲン・オノ・アンサンブルの日本での初ライブだったはず。既成のカテゴリーに分類できない音楽なので、商売にはなりにくいのでしょうが、この素晴らしい音楽はもっと多くの人に聴かれるべきです。
 A5版の本のような変則ジャケットも美しい。


artist

Seigen Ono Ensemble

title

MONTREUX 93/94

label

SAIDERA RECORDS (1994)

 こちらはセイゲン・オノ・アンサンブルが93年、94年のモントルー・ジャズ・フェスに参加した時のライブ盤。日本では2000年までライブが出来なかったのに、ジャズ・フェスの名門モントルーにしっかりと参加していたという事実には驚かされる。
 メンバーは2000年東京ライブにも参加している三宅純、村田陽一の日本人勢に加え、ピーター・シェラー、ダギー・バウンといったニューヨークのダウンタウン・シーンの強者が参加。ブラジル音楽が根底にある2000年のライブに比べると、ヨーロッパ(特に東欧)的な感覚が強いと思う。
 アコーディオンを中心に、ストリングスとホーン隊が複雑に絡み合うアレンジは重層的かつ立体的。しかし、自由。音楽を演奏する意義を根底から考えさせれるような、素晴らしいライブです。


artist

キム・ゴードン DJオリーブ イクエ・モリ

title

ミュージカル・パースペクティブ

label

SYR (2000)

 ジャケットには思いっきりカタカナで「キム・ゴードン」と書いてありますが、本当は輸入盤(多分)。ご存じソニック・ユースの女番長キム・ゴードンと元DNA(アート・リンゼイが在籍した伝説のノイズ・バンド)のイクエ・モリ、そして謎のDJオリーブによるユニットのアルバム。なんとミックスはジム・オルークで、チボマットの本田ユカも参加という、その筋の人にはたまらないメンバーです。
 音は予想通り、サンプル・コラージュ物。不協和音が唸りますが、全体的にはソニック・ユースの色が強いか?
 それにしてもこんな強烈なメンバーの音源がひっそりとリリースされていたことに驚くと同時に、しっかりと入荷しているタワーレコード渋谷店のアバンギャルド・コーナーにリスペクトです。


artist

dumb type

title

memorandum

label

cci recordings (2000)

 舞台集団dumb type の新作のサウンドトラックで、音楽担当は池田亮司。「サイン波といえば池田亮司」というのが世界の常識(笑)ですが、ピュアな音響を聴かせるソロ作に比べると、舞台の音楽である今作はコラージュの要素が強い。
 舞台のダンスと一緒に体験するともっと強烈なのでしょうが、普通の音楽に飽きたらなくなった方にはお薦めです。音楽、そして音響を突き詰めると、最後には「音波」にたどり着くのだ。


artist

EXPERIMENTAL AUDIO RESEARCH

title

VIBRATIONS E.P.

label

rocket girl (2000)

 これもヤバイ音響系。「E.P.」といいながら、4曲で44分もあるという(笑)。
 サンプル・コラージュとアナログ・シンセの発振音がループし続けるサウンドは、中毒性あり。一種のドラッグですな。dumb type よりは聴きやすいでしょう。


artist

DARREN EMERSON

title

URUGUARY

label

GLOBAL UNDERGROUND (2000)

 アンダーワールドを脱退したDJダレン・エマーソンのミックスCD。DJプレイを収録したものなので、他人の曲のミックスなのだが、これが驚くほどアンダーワールドのテイスト。残されたカール・ハイドとリック・スミスは「ダレンがいなくなってもアンダーワールドは変わらない」と言ってはいるが、やはりダレンのリズムの感覚がいかにアンダーワールドのサウンドに影響を与えていたのか、これを聴くとよく分かる。


artist

Sasha/Emerson

title

Scorchio

label

BMG (2000)

 こちらはダレン・エマーソンとサシャという人のコラボレート作。3バージョン入りのシングルですが、見事なダンス・トラックです。っていうか、これアンダーワールドのサウンドそのものだろ?(笑)
 ダレンの好調ぶりをみると、アンダーワールド本体がますます心配になってきます。


artist

VA

title

Glucklich 4

label

Compost Records (2000)

 ドイツのコンポスト・レーベルのコンピレーション。ブラジル・テイストのクラブトラック集で、日本のKyoto Jazz Massive とHimiko Kikuchi(誰?)の曲も収録。コンポストらしく、ちょっとラウンジ入った感じの曲が多いですが、70年代の古い曲と2000年の新しい曲を同列にコンパイルする感覚がさすがです。
 国も時代もバラバラな音源ですが、まるで一組のアーティストのアルバムのように聴こえます。


artist

竹内まりや

title

スーベニール

label

MOON (2000)

 なんと18年ぶりという竹内まりやのライブ音源。バックはもちろん山下達郎&達郎バンド。これで悪いはずがない。
 1曲目の“アンフィシアターの夜”は、本人抜きで女性コーラスがリードをとっているのだと思うけど、やはり本人が登場する2曲目の“家に帰ろう”からは空気がまるで違う。これが本物のアーティストのオーラなのだろう。18年ぶりのライブとは思えない存在感。
 どんなに時代がスピード感を増しても、色褪せない音楽がここにある。


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