ディスク・レビュー 98年8月


artist

角松敏生

title

Realize

label

BMGジャパン (1998)

 角松敏生、5年ぶりの復活シングル。が、それほど入魂の作品という訳ではなく、割とあっさりとした曲です。生演奏でガツンといくのでもなく、打ち込みサウンドを聴かせるわけでもなく、今一つ何を狙っているのかが分からない。
 最大の欠点はドラムがポンタではないこと。ポンタのグルーヴが入るとかなり違った雰囲気になると思うんだけどねぇ。ともかく、これでは新しいファンは開拓できませんな。復活してはみたものの、この人はどうするつもりなんだろう?


artist

MASSIVE ATTACK

title

ANGEL

label

Circa Records (1998)

 傑作アルバム“MEZZANINE”からのリミックス・シングル。話題はやはりブラーのデーモンとグレアム・コクソンによるリミックスでしょうが、私としてはマッド・プロフェッサーのリミックスが目的。彼らしい正統派ダブ・ミックスが聴けます。“Protection”同様、マッド・プロフェッサーによるダブ盤のリリースが噂されていましたが、結局こういう風にシングルで小出しされて終わりなんでしょうか? ぜひダブ・アルバムとしてのリリースを望みたいところです。
 ブラーのミックスも、ある意味大胆な再構築を試みており、クラブ系のリミキサーとは異なる発想が興味深い。


artist

Pedro Luis e A Parede

title

Astronauta Tupy

label

WARNER MUSIC BRAZIL (1997)

 ブラジルからまたスゴいバンドが登場してしまいました。ペドロ・ルイス&パレーヂという5人組のロック・バンドで、シコ・サイエンス&ナサォン・ズンビ以来の衝撃的な才能と言えるでしょう。レニーニ、リミーニャ、フェルナンダ・アブレウといったブラジル音楽ファンにはお馴染みの人達も参加しています。バトゥカーダ(サンバのリズム隊)をバックにした曲はもちろん、通常のバンド・セットでの演奏でも明らかにブラジル的なリズムが感じられる。ブラジル音楽の伝統の奥深さと新しい音楽と結びついていく生命力には本当に驚かされます。
 こういうバンドを聴くとやはりシコ・サイエンスが交通事故死したことが残念でなりません。生きていれば今頃ブラジルを代表するアーティストになっていたはずなのに… 
 ちなみにペドロ・ルイスは宮沢和史の“AFROSICK”に作詞で参加しています。


artist

SOULFLY

title

SOULFLY

label

Roadrunner Records (1998)

 ブラジリアン・スラッシュメタル・バンド「セパルトゥラ」を脱退したマックス・カヴァレイラ(Vocal) が、ナサォン・ズンビのメンバーと結成したバンド。基本的にはスラッシュというかデスメタルですが、ギターのフレージングはまさしくナサォン・ズンビで、ブラジルのパーカッションも結構使っている。しかし、ボーカルスタイルはまさしく「デス」で「ダイ」。歌詞の内容はかなり硬派で、黒人奴隷の歴史や人種問題を鋭く指摘しており、その姿勢はRage Agaist The Machine に近い。
 正直な話、毎日聴きたいサウンドではないのですが、「ブラジルの音楽はMPBだけではない」「メタル系のバンドもブラジルのルーツを大切にしている」という意味で、ブラジルファンなら聴いておいて損はないです。ジョルジ・ベンの“UMBABARAUMA”のカバーもある。


artist

古内東子

title

魔法の手

label

Sony Music Entertainment (1998)

 前作“恋”に続いて元オリジナルラブのベーシスト小松秀行のプロデュースで、今回はLA録音。一流のミュージシャンを使っていて、サウンドのクオリティは恐ろしく高い。
 しかしなぁ、何かが違うのだ。サウンドが乾いていて、古内東子の日本的な湿った詩の世界とマッチしていないように感じる。“雨降る東京”という光景が浮かんでこないのよ。日本で録音した曲も何曲かありますが、そっちの方が安心して聴いていられる。やはり中西康晴のピアノは絶品です。
 ま、このアルバムで一番凄いのはジャケット写真だよなぁ。JAROに訴えるぞ、おい(笑)。


artist

フィッシュマンズ

title

8月の現状

label

Polydor (1998)

 フィッシュマンズのライブ盤。といってもかなりスタジオ処理を施していて、普通のライブ盤ではない。
 昨年観たライブはめちゃくちゃ良かったんですが、やはりCDではあの音響と張りつめた空気は伝わってこないのが残念。若手No.1エンジニア“ZAK”とのコラボレーションは解消してしまいましたが、このCDにはZAKがPAミックスした曲が2曲収録されています。1曲目の生ダブは強烈。


artist

東京スカパラダイスオーケストラ

title

ARKESTRA

label

avex trax (1998)

 なんとスカパラ、エイベックスに移籍です。新天地での第1作目はマジでカッコいい。スカパラというと「ライブはすごいけど、CDで聴いてもなぁ」という感じだったんですが、今回はイイ。
 やはり注目はデニス・ボーヴェルがプロデュースした曲で、特に1曲目の重厚なダブは最高。この曲のためだけでもCDを買う価値はあります。


artist

山下達郎

title

COZY

label

MOON RECORDS (1998)

 これはもう文句のつけようがありません(笑)。買いましょう。


artist

山下達郎

title

CIRCUS TOWN

label

RCA (1976)

 達郎の最新作を買った後、立ち寄った中古レコ屋で発見。即買い、です。
 ニューヨークとロスで録音された1st アルバムで、このレコーディングでのスコアを帰国後に詳細に研究した、とどこかで読んだ気がする。“Windy Lady” 収録ということで、最近はクラブ方面からも注目されているらしい。
 多分10年前なら「古くさい音」で片づけられそうなサウンドですが、フリーソウルを通過した今の自分の耳には“COZY”よりもフィットする。不思議なもんです。
 しかし、このアルバムを制作した時の達郎は23才なんですよね。恐ろしい人だ。


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