ディスク・レビュー 99年1月


artist

宇多田ヒカル

title

Automatic

label

EASTWORLD (1998)

 Misia 以降やたらと出てくるR&B系女性シンガーですが、この子は決定版です。宇多田ヒカル、生まれも育ちもニューヨークの15才。詞も曲も自分で書くんだから、Misia よりも才能あるかも?
 私は彼女の倍近い年齢なわけで、自分がいかに無駄な人生を過ごしてきたか、恥ずかしくなります。音楽に携わる者は、全員聴いて懺悔するべし。


artist

面影ラッキーホール

title

代理母

label

WAX RECORDS (1998)

 やたらとインパクトのあるバンド名なので、てっきり色物バンドだと思っていたんですが、ギタリストが私の学生時代のバンド仲間・木原宙君だということが判明して、あわてて購入しました。ついに知人のバンドのCDを普通にレコ屋で買える時代が来たなぁ(涙)。
 曲のタイトルが「俺のせいで甲子園に行けなかった」とか「あんなに反対していたお義父さんにビールをつがれて」とかなんで、どう見てもやっぱり色物なのですが、内容はあなどれません。詞の世界が独特で、CDの帯に大槻ケンヂとみうらじゅんの推薦コメントがあるのも納得。人生裏街道とでも言いますか、駆け落ち、水商売、売春等々がやたらとリアルに描かれていて、聴き始めると最後の曲までやめられません。ソニーが発売自粛したというのも分かります。
 サウンドは黒人音楽をベースにした伝統的な歌謡曲という感じで、ホーンも入ったソウルフルな演奏。プロデュースはなんとあのビブラストーンのOTO。コーラスには吉田美奈子(!)と元ZELDAのサヨコが参加しています。内容的に聴く人を選ぶタイプのバンドですが、人間の真実を確実に描き切った問題作。


artist

山崎まさよし

title

ドミノ

label

POLYDOR (1998)

 テレビ「奇跡の人」主演で突然お茶の間にまで浸透してきた山崎まさよしですが、この新譜も力が入っています。今までは「弾き語り系」のイメージがあったのですが、今回はスガシカオばりのグルーヴ系のトラックを大フィーチャー。中村キタローがベース、打ち込み、アレンジと大活躍しています。そして、マスタリングはまたしてもオレンジの小泉由香。
 山崎のボーカルが非常に個性的なため、作り込まれた分厚いトラックとはイマイチ合わないという気はします(生ギターをバックにした方がボーカルが生きる感じがする)が、ベックやスガシカオ同様、ギター一本でも歌えるシンガーが最新のテクノロジーを自在に操った時は本当に強い。ブレイクするアーティストの勢いが確実に感じられます。


artist

Boom Boom Satelites

title

OUT LOUD

label

R&S (1998)

 久しぶりに買ったテクノのCD。これはマジでカッコいい。おそらくこのサウンドはイギリスやドイツのテクノ・アーティストには作れないでしょう。デビュー盤“Joyride”では「デジタル・ロック」という言葉で語られることが多かった彼らですが、今作でケミカル・ブラザーズを超えたかもしれません。
 同じ日本人にここまでやられてしまったのは、結構悔しいですよ。負けてられん!という気にさせてくれるアルバムです。


artist

Asotr Piazzolla

title

57 Minutos Con La Realidad

label

INTUITION Records (1996)

 ピアソラ晩年のスタジオ録音とライブ録音の編集盤。プロデュースはキップ・ハンラハンですが、リリースは american clave ではなく、ドイツのレーベル。
 バンドネオン2名、ピアノ、ギター、チェロ、コントラバス、という6重奏団による演奏で、バイオリンがいないため重心の低いサウンドとなっています。やはりピアソラにハズレなし。鮮烈な演奏です。


artist

小松亮太

title

VERANO PORTENO

label

Sony Music Entertainment (1998)

 日本のバンドネオン奏者・小松亮太によるピアソラ曲集。旧ピアソラのバンドメンバーとのブエノスアイレス録音で、まさしく本物の音を聴かせる。
 ピアソラの深い味わいには至らなくても、小松亮太のバンドネオンは攻撃的なスピードに溢れていて、非常にカッコいい。NHKのピアソラ特集で小松亮太の日本でのライブが少しだけ放送されたのですが、すさまじいほどの演奏でビックリしました。是非生で観てみたいアーティストです。


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