ディスク・レビュー 99年7月


artist

坂本龍一

title

ウラBTTB

label

WARNER MUSIC JAPAN (1999)

 「インスト曲初のオリコン1位」ということで話題になったシングル。実際、例のCMで使われた“energy flow”は名曲だと思う。「ヒーリング云々」はともかく、ピアノの鳴らし方、収音も完璧。
 世界的なアーティストでありながら、日本のお茶の間をも席巻してしまう教授はやはり天才だよね。芸術性と大衆性を両立できるということは素晴らしい。


artist

SILVA

title

HONEYFLASH

label

boogaloo (1999)

 話題のディーバのファースト・アルバム。朝本浩文他によるデビュー以来のシングル曲を集めているだけに、曲のクオリティはすごく高い。つまらない曲が1曲もないところがすごい。
 基本的には4つ打ち系の下世話なディスコ・ビート(クラブではなく、ディスコね)で、ソウル汁が滴るようなSILVAのボーカルもかなり下世話。しかし、そこがソウル・ファンにはたまらないのよ。私にとっては宇多田ヒカル以上のヒット作。


artist

角松敏生

title

voices under water/in the hall

label

IDEAK (1999)

 「ヒーリング・インストゥルメンタルとライブ・パフォーマンスの融合」という新作。早い話がTIME TUNNELツアーのライブ音源の合間にインスト曲が挿入されているという謎の構成で、かなりの角松マニア以外には商品としての訴求力はないのではないか?
 普通ライブ盤というと、「ベスト選曲」的にライブの一番盛り上がる部分を抽出するものだけど、ここではTIME TUNNEL収録曲を曲順通りに並べるという試みがされている。「レコーディングしたのと同じメンバーで、ライブでもきっちり演奏する」という挑戦で、ミュージシャンシップが失われつつある日本音楽界へのアンチテーゼでもあるようだけど、角松にちょっと興味がある程度の人にとっては、「この前のアルバムと同じ曲なら買わなくていいや」ということにならないか?
 インスト曲は元々は本人が趣味でストックしておいた曲のようだけど、「ヒーリング」というには角松色が強すぎて、手抜きの“SEA IS A LADY”のように聞こえなくもない。
 ライブ音源の演奏が素晴らしいだけに、パッケージングの失敗が残念です。


artist

HITOE'S 57 MOVE

title

INORI

label

TOY'S FACTORY (1999)

 SPEEDの仁絵ちゃんのソロ。ジャケットは完全に色物(笑)。発売日にHMV新潟に買いに行ったけど、ニューリリース・コーナーではなく、普通にSPEEDのコーナーに置かれていたのが泣ける。
 曲はSPEEDと同じく伊秩弘将だけど、手抜きしてないか? ま、売れるわけないわな。


artist

ELI+HIROSHI

title

MARCHIN' ROUND THE WORLD

label

CRUE-L (1999)

 藤原ヒロシと元ラブ・タンバリンズのエリというちょっと意外な顔合わせ。藤原ヒロシの創り出すグルーヴは相変わらず気持ちいいし、ラブ・タンバリンズ時代を彷彿とさせるスウィートなエリのボーカルもいい。
 とてもインディー盤とは思えない豪華なパッケージもすごいです。


artist

スガシカオ

title

夜明け前

label

KITTY ENTERPRISES (1999)

  シングルだけど、すごく充実した内容。タイトル曲は明るめなファンク・ナンバーで、歌詞の鋭さは今回も絶好調。山木秀夫と中村キタローのリズム隊も強力。
 2曲目の“ココニイルコト”はSMAPに提供した曲のセルフカバー(だよな?)。
 一番凄いのは3曲目の武道館ライブ版“SWEET BABY”で、ヘビー・ファンク大爆発。なんとドラムは沼澤タカじゃないですか! 活躍してますねぇ。


artist

VA

title

PUNCH THE MONKEY! 2

label

HEAT WAVE (1999)

 ルパン三世のリミックス集第2弾。今回はカバーが多く、リミックスも分かりやすいバージョンがそろっているので、第1弾より一般受けすると思う。スカパラのカバーは最高です。
 マンデイ満ちるにはリミックスではなく、“ラヴ・スコール”を歌ってほしかったなぁ。


artist

PePe California

title

Telesco

label

HOT-CHA (1999)

 以前D.U.B.とデモテープの交換をしたことがある東京の「ペペ・カリフォルニア」のインディー・デビュー盤。単独でミニ・アルバムをリリース出来るとはうらやましいなぁ。
 彼らの音楽はすごく面白いです。言葉では表現が難しいんだけど、モンド風味な音響系とでもいいますか? ジム・オルークあたりをちょっと彷彿とさせる感じ。
 新宿HMVの日本のインディー・コーナーで買ったけど、こういうのは渋谷タワレコとか渋谷WAVEのアバンギャルド・コーナーで売ってほしいなぁ。


artist

SCRITTI POLITTI

title

ANOMIE & BONHOMIE

label

Virgin Records (1999)

 スクリッティ・ポリッティの新譜! そんなものがこの1999年に出ようとは誰が予想しただろう?
 私は実はスクリッティ・ポリッティが好きだった。“Cupid & Psyche 85”も“PROVISION”もシャバ・ランクスと共演したシングルも持っている(笑)。サウンドはあの頃とは全然違うけど、グリーン・ガートサイドのボーカルは全く変わっていないのが嬉しい。
 今の音楽シーンに大きな影響を与えるようなアルバムではないけれど、80年代にティーンネイジャーだった世代にとっては、ビートルズ再結成並の衝撃作でしょう。


artist

dumb type

title

OR

label

Foil Records (1998)

 池田亮司が音響を担当するパフォーマンス集団「ダムタイプ」によるCD。池田亮司といえばサイン波(笑)ですが、サウンド・コラージュによる楽曲も強力。本来は舞台でビジュアルともに表現されるはずの作品ですが、音だけでも圧倒的なクオリティを持っています。


artist

VA

title

microscopic sound

label

CAIPIRINHA MUSIC (1999)

 WAVE渋谷で買ってきた音響系コンピレーション。池田亮司も収録されているけど、詳細はよく分からん。
 電子音とノイズが飛び交う怪しげな曲が10曲収録されており、世界にはキテレツなアーティストが沢山いるものだとビックリするやらあきれるやら。


artist

oval

title

szenario

label

徳間ジャパン (1999)

 マーカス・ポップによるプロジェクト、オヴァル。これもかなり強力な音響系。レコードの針飛び音みたいなノイズと出所不明なサンプル音がループし、混沌とした空間を形成していく。
 当然普通の「音楽」とは呼べない作品ではあるけれど、確信犯的なその姿勢からは、音楽の新たな地平が見えるような気がする。


artist

miyazawa

title

afrosick (VIDEO)

label

東芝EMI (1999)

 ずっと観たかったんだけど、新潟では見つけられなかったビデオ版アフロシック。ようやく入手しました。
 前半はブラジルでのレコーディングとライブ、後半が東京でのライブ。一番面白かったのはレコーディング風景で、ブラジル人ミュージシャンの強烈なヴァイブの前ではさすがの宮沢もちょっと影が薄い。特にカルリーニョス・ブラウンの存在感は圧倒的で、音楽の化身という感じ。すごいです。


artist

VA

title

Orfeu

label

NATASHA RECORDS (1999)

 1959年公開の映画「黒いオルフェ」のリメイク版が作られたらしく、そのサントラ。プロデュースはカエターノ、アート・リンゼイ、ジャキス・モレレンバウムという無敵の3人。このメンバーが揃って駄作になるわけがない。ジャキスのオーケストラ・アレンジが冴え渡っています。
 気になるのはジャケットを見る限り、ユリディス役が白人らしいこと。だからタイトルが「Orfeu Negro」ではなく、「Orfeu」なんだろうか? う〜む・・・


artist

Astor Piazzolla

title

Live in Weien

label

messidor (1984)

 ここからはピアソラ3連発。
 これは1983年のオーストリアのウィーンでのライブ。ピアソラ5重奏団第2期のピークを捉えた作品です。選曲は“ブエノスアイレスの夏”“リベルタンゴ”“アディオス・ノニーノ”など有名な曲が並んでいて、ピアソラ入門用にも最適。


artist

Astor Piazzolla

title

Tristezas de un Double A

label

messidor (1987)

 前記「ライブ・イン・ウィーン」と同じ会場、同じスタッフで1986年に録音されたライブで、国内では初のリリース。5重奏団はギターだけが替わり、名盤「タンゴ:ゼロ・アワー」と同じメンバーになっています。
 20分以上に及ぶタイトル曲“AA印の悲しみ”が圧巻ですが、全編に緊張感がみなぎる壮絶なライブです。必聴。


artist

Astor Piazzolla & Osvaldo Pugliese

title

FINALLY TOGETHER

label

LUCHO (1992)

 オズバルド・プグリエーゼという人も現代タンゴ界の大物らしい。その2人の楽団が共演した1989年のオランダのアムステルダムでのライブ。2枚組で、Vol.1がピアソラ6重奏団、Vol.2がプグリエーゼ楽団で、最後に両者の共演する“アディオス・ノニーノ”を収録。
 ジャケットはやたらと平和なイラストで「?」ですが、演奏内容は凄い。特に“アディオス・ノニーノ”のイントロのピアノの即興演奏はブッ飛んでいます。「LUNA」というタイトルでピアソラ単独のCD(ジャケットはこっちの方がはるかにカッコよい)も出ていますが、“アディオス・ノニーノ”が収録されていないので、こっちの2枚組を買った方がいいと思います。


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