2月10日(水)

お隣りの一番大切な働き者、アイーダ(アミールの妻)が、ヘルニアの手術で入院して、1週間。


なぜか、お隣りのアミールは、アイーダがいなくなってから、なんだかだと用事を作っては、我が夫を誘いに来る。
アミールもアイーダもタタール人で、アラーの神を信じている。タタールの勇敢な歴史を誇り、ドゥニャンにも解説してくれる。
「おれたちの先祖は、チンギス汗と一緒にブルガリアまで遠征に行ってきた血が俺には流れているんだ。俺達は、働く時は頑張って働く。なんせ、どこへでも平気で行って、自分の生計を立ててきた民族だからな。」
「は・は〜。」



「知ってるか。」
「は?」
「男には、ガレージが必要だ。あれは男の第2の家だからな。ヘンヘンにも借りてやってくれ。車が動かないのはガレージがないからだ。外で置いておくのは寒い。車には悪いんだ。車は男の第二の妻だ。わかるかな。とにかく、どっちにしても、ガレージはどうしてもいるものなんだ。」
確かに、おとつい、ヘンヘンがガレージ・パーティに誘われて行った時、ガレージには小さなストーブがついていて、終日車を暖めているらしい。その上、エンジンやバッテリーに古くなったコートなどを着せているほどの大事にしよう。その点、うちのマドンナはマイナス20度でも外で待ってなくてはならない。その間にバッテリーの容量が減ってしまって、次の日には動かなくなってしまうのだそうだ。
「考えてみます。」
「今日、夜、ヘンヘンを連れて、ガレージを見に行く。その時に、ウォトカを持ってきてくれ。話が早い。」
「それから、2月12日夜は、ガレージでダチの誕生日の祝いをやる。何かきっかけがなければ飲めないからな。夫に伝えておいてくれ。」
「ほ・ほぉ。ドゥニャンも一緒に行っちゃぁ、だめ?」
「男の世界は男が守る。あそこは寒すぎて女向きじゃない。」



4日前にはロシア風サウナへのお誘いが、アミールからヘンヘンにあった。
おとついは自分でビールを持って来て、つまみも何も無しに飲んで帰った。
3日前、夜10時に、
「すまない、もう、寝ているかい。ちょっと、話がある。」
と、言ってはビールを飲んでいった。

ウォトカを勧めると、今日はタクシーを流しに行く(彼の本職はブヌコボ航空のフライト・エンジニアであるが、給料の遅配がここでもあって収入にならないらしい。それで、じまんのボルガ(ロシア版クラウン)で時間のある時は白タクのドライバーをしているのだ。)ので、あんまり飲めないからと、おとついは断ったのだ。しかし、すかさず、昨日はヘンヘンのウォトカを持って、ガレージ・パーティに出かけた。ヘンヘンの持って行った1本のウォトカを5人のむさい男たちでグビっと飲んだらしい。あっという間にヘンヘンは帰ってきた。
「何でこんなに早いの。」
「だって、僕の持っていたウォトカしかなかったから・・・。」



「俺はカラテを習いたいんだ。あれは男を強くする。俺は強いが、もっと強くなりたい。」
「ほほぉ〜。ヘンヘンは、実を言うと柔道2段なんだよ。彼も見かけより強いかも・・・。」
「そうか。それはもっけの幸いだ。俺は柔道も習うことにする。春になったら、森に行って柔道を一緒にやろう!!」





アイーダが家にいる時にアミールはこんなに遊んでいたかどうかは、つまびらかではない。


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