1999年5月25日(火)

今、上のむすめは目を血ばしらせ、時には大粒の涙をいっぱいに目に溜めながら、試験勉強に余念がない。

朝起きて、ご飯を食べたら時間を惜しむようにして机に向かう。(学校へ行く前にも・・・)
それは26日、28日にある進級試験の準備のためだ。

数学は約100問、図形の証明、そしてその定理の証明を丸暗記している。
それって一口に言っちゃえば簡単な事なのだが、とにかくこれを全てロシア語でやらなければならない。
100もの問題・・・(考えた先生もエライと思う)。
いちいちロシア語の字引を引いて、その問題の意味をまず知って、その後、その解を得るために日夜努力する娘を見ていると、我が娘ながら憐れをさそう。
朝から深夜まで娘は机に向かいっぱなし。

エライ!!


どうぞ、褒めてやってください!!


その上、26日にはロシア語で読むサンテグジュペリの「星の王子様」の感想と概要を、
居並ぶ4人の試験管の先生方の前で、詰まらずにスラスラと言わなければならない。

これは文学の試験なのだが・・・。
これだって、大変だった。
最初に「星の王子様」をロシア語で読む。とにかく全部ロシア語なんだから。分かってあげて欲しい。
そしてその翻訳をやってみた後、日本語で概要を頭の中でまとめて、してからにロシア語の概要をつくるのであ〜る。
その上、それについての感想も付けなければならない。

娘にとっては、一ひねりも二ひねりもどころか、百ひねりくらいある。

そして、出来上がった概要感想を丸暗記するのである。
日本語の原稿用紙5枚と違ってかなりの量になる。




なんで、なんで。こんなこと・・・。




とも言わず、モクモクとやっている娘を見て、エライ!ただ、ひたすらエライっと心から感心する。

「もういいよ。やるだけの事はやったから・・・。先生も認めてくださるから・・・。辛かったら止めてもいいんだよ。」
思わず、夫の口からも私からも、モウイイジャン、なんて本音が出る。
かわいそうだよぉ。

「あのね。数学の問題を暗記してるとね、わたし、ロシアに来て始めて思った事があるよ。」
「なぁ〜に。」
「日本へ帰った方がいいかなって。」

ロシアが大好きで、一日も長くいたいっていう娘なのに・・。本当に辛いんだなぁ。


4人の試験官の前で、口頭試問を受けると言うのは、どんなことかなぁ。彼女はまだ若干13才になったばかり・・・。

出来る限りはロシアの子どもたちにハンディキャップを付けないで自分の力で精一杯やれるだけはやるという娘の心意気。

ドゥニャンなんか感心しっぱなし。出来ないよなぁ。ドゥニャンには・・・。



でもこのページは娘には読ませないでおこう・・・。
(どんな問題が出て、試験がどんなだったか、お知らせします。ハイ。)



それから、娘のピアノの先生、タマーラ・セルゲイヴナが、この試験の準備のためにピアノを教えてくださってから、数学をこのところ毎回4・5時間見てくださった事。本当に感謝の念に耐えません。せめて私たちの気持ちの証として、手紙と共にお金を包んでみたが、彼女は受け取ってはくださらなかった・・・。
「これは、わたしがしたくってやってることだから・・・。」
と。
「息子のセリョージャが大きくなって巣立っていって、なかなかわたしのところへかえってきてくれないから、なつめとあびとがわたしの生きがいなのよ。」
と、いってくださっていたそう・・。
ありがとうございます。タマーラ・セルゲーヴナ!

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