2000年4月28日(金)

実は最近、よく地下鉄でジプシーの人達を見る。町での取り締まりがきつくなって、警察が来たら、すぐに移動できる地下鉄を選んでいると思う。
つい十数日(これでは’つい’は使えない!)前、小さな子どもを連れたジプシー女性2人組に出会った。
5歳くらいになろうか、その子どもは物乞いを無理矢理させられているらしい。
車両の中でお母さんの所に戻っていこうとすると、すぐに追い返されている。

「さぁ、行って稼いでおいで。一文無しで戻ってきたら、承知しないから。」
なんて、言われているんだろう。
お母さんの所へもどって来るたびにその女の子は、また車両の中をあちこちしている。

興味を持って見ていたら、隣りの席が空いた。
お母さんとその連れはどっかりとドゥニャンの横に座った。

強いアクセントのある全く違うジプシー語を喋っているようだ。向こう隣のおじさんが、もっと私寄りに席を詰めろと言っているのが聞こえた。どうもロシア人はジプシーがあまり好きではないらしい。

そして、ついこの間、東洋学研究所の日本語の先生と話しながら地下鉄に乗ろうとすると、ジプシーの若い母親が、突然背中に背負っている子どもの頬をピシリと殴った。
あまりのことにびっくりして見ていると、その先生は、
「気をつけて下さいね。」
と、注意を喚起して下さった。実はきっとドゥニャンの目はものほしそうに、或いは好奇心にらんらんと光り輝いていたに違いない。
列車が来て、あの子どものことを気にかけていると、やにわ!
そのジプシーがドゥニャンの近くに入って来た。
そして、ドゥニャンのバッグの中に手を突っ込んだ。
そして、あっという間に列車を降りていったのだ。
あまりの早業に声もでない。

ドゥニャンの財布は、自分でもバッグの中に手を突っ込んで、ゴソゴソと探し出さなければなかなか出ては来ない。
相手を間違えたのだ。
これがバッグの中がきちんと整頓されているような人ならば、きっと相手もプロだから、やられていたに違いない。


しかし、彼女のあの早業はなんというものなんだろうか。
さっと入って来て、バッグの中に手を突っ込んで、ドアが今にも閉まろうとしている時にすっと出る。

んん〜〜〜。

感心することしきり。

自分で言うのもおかしいが、もし日本でスリに遭ったら、ドゥニャンは悔しくって仕方がないにちがいない。自分のぼんやりさ加減を、反省することだろう。そして腹が立つだろう。
でも、あの時、ジプシーのスリに財布を盗られていても、きっとなんとなく嬉しかったに違いない。あ〜、あの人達は、一つの仕事を全うしたのだと、変に感動しながら。

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