スタニスラフスキー&ネミーロヴィチ=ダンチェンコ音楽劇場 白鳥の湖


1998年11月2日(日)

配役:オデット:アクサーナ・クズメンコ、王子:ドミトリー・ザバブーリン

指揮:ヴラジーミル・ヴァシラッゼ

演出ヴラジーミル・ブルメイステル





一幕は通常見るプチパ・イワノフ版と異なり、ブルメイステル演出による、この劇場独自の演劇的なすすめ方で、悪魔のロットバルトがオデット姫を白鳥に変えてしまうところを一番の見せ場として、またボリショイバレエとの違いを見せ付けてくれる。バレエを見ているというより、仕種や動作によって物語を説明している。王子が宮殿での遊びに飽きて、森へ狩りをしに行く。
二幕では、王子は白鳥に変えられたオデット姫に会う。彼女のあまりの美しさに驚き、愛するようになる。白鳥たちの踊りや王子とオデットのパ・ド・ドゥが繰り広げられる。有名な4羽の小さな白鳥の踊りや3羽の大きな白鳥が舞う。
3幕目は、宮殿での王子の見合いの場面。ここがプチパ・イワノフ版と異なり、各国の花嫁候補は悪魔の従者である。しばしばオディール姫も挑発的に王子の目の前に現れるが、従者によって隠される。それによってますます王子の気持ちは高ぶり、悪魔の世界に引き込まれていく。オディール姫と王子のパ・ド・ドゥで王子は決定的に悪の虜となる。 最後にオデットとオディールを間違えている王子は愛の証としてオデットの白い羽をオディールに渡すが、オディールはそれを嘲笑いながら捨てる。その時、王子は始めて自分の間違いを知る。
オディールと愛を間違えて誓ってしまった王子への愛が満たされないことを知り、悲しみに浸るオデットとその従者である白鳥たちの踊りがとても悲しい。従者が王子を拒否しながら幕間へと消えていく場面は、せつない白鳥たちの思いが振り付けにより表現されきっている。 そして、王子はロットバルトとの闘いを挑み、悪魔から解き放たれる。最後に、悪魔から解放されたオデットが人間の姿になって王子に抱きかかえられながら出てくる。そして幕となる。

去年夏、プリマがチェルノブロフキナで見た時はオデットの優しく、切ないまでのはかなさや弱さとそれに伴う美しさと、対照的にオディールの挑発的な妖しく激しい美しさを見事なまでに踊り分けていたが、今回、アクサーナ・クズメンコは体の柔らかさと技術のみが目立った。まるで新体操の大会をみているようで、抒情性を感じられなかったのは残念。でも、白鳥の群舞はとても美しかった。


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