ロシア・ナツィオナリヌィ・オーケストラ コンサート


1999年5月29日(日)

演目
マーラー交響曲第10番
シュニトケ ヴァイオリン協奏曲第1番
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
シベリウス 憂鬱なワルツ

指揮:アンドレイ・ヴァレイコ

ソリスト:ギドン クレーメル

場所:モスクワ音楽院大ホール


ソ連末期にミハイル・プレトニョフによって創設されたロシア1といわれるオーケストラ。聞くのは今回がはじめて。左右に第一第二ヴァイオリンが並び、第二の後ろにヴィオラ、第一の後ろにチェロ、左奥にコントラバス。20世紀前半にはやり、ムラヴィンスキー/レニングラードフィル以後あまりみられなくなった配置。

はじめはマーラー。この配置のせい、あるいは指揮者のねらいなのかわからないが、極端な強弱の変化をつけない穏やかで内にこもった演奏。よかったのは弦。かつてイスラエルフィルがマーラーを演奏するとでてくる木の樹液、あるいは一種麻薬的な艶をもっている。97年にイスラエルフィルを聞いたときにはこれはすでになく、インターナショナルな響きとなっていてがっかりしたものだが、ここで聞くことができるとは・・・。弦楽主体の曲だからなおさらつぼにはまっていた。

2曲目はシュニトケ。独奏はこの曲を得意とするギドン・クレーメル。かつてのぎすぎすしたなめし革的な音はややまあるくなっていたが、スリリングな演奏。

3曲目はチャイコフスキー。50歳を過ぎたクレーメルがロシアにきてポピュラーなこの曲をどう聞くか興味津々だったが、はじめの1フレーズをきいてノックアウトされた気分。もったいぶって叙情的にいかに弾くかで勝負がつくと思われてきたこの部分をクレーメルは全く異なったアプローチ−言葉でいえば「現代的」というよりほかないのだが−でやってきた。それは曲全体の解釈にも通じる。全体的には早めのテンポだが、必要なところは充分スピードを落とし、でもメランコリックにならずに刻印するかのように強調する。明るいけど軽くなく、深刻だが暗くない。指揮者でいえばカルロスクライバーともっとも近い演奏。楽譜をめくるのがまにあわず1小節抜かしてしまうというハプニングもあったが、充分以上に満足できました。天才は年をとっても天才なんですね。恐れ入りました。

ちなみに当日はイエフディ・メニューヒン追悼コンサート。メニューヒンがこの時モスクワにくるはずだったのをクレーメルがひきとったものでした。


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