貴男に夢があるように、テロリストにはテロリストの夢があるのよ。

実現の難しさに関しては、貴男の場合とほぼ同じかそれ以上よ。

真紀子も、普段、いろいろな男の子といろいろな話をするけど

一般的に日本の男の子って話題性に乏しいし、スケールが小さいし

インパクトに欠ける話、どうでも良い話ばかりしているような気がするの。

テロリスト要員（テロリストの卵）の語り、それはそれは熱いわよ。

ボクサーなどに見られるハングリー精神ともチョット違うの。

ついつい引き込まれ、酔っちゃうんだなぁ、これが。

緊迫感はいうまでもないんだけど、緩急の使い分けが絶妙なの。

「世界を変える」と訴え、「自分の成すべきコト」を語ったかと思うと

その同じ口から、成し遂げた後のユートピアについて、

蕩々と口をついて出てくるのよ。

えっ、これが同一人物の語りなのか？って感じるくらい

パラグラフ毎の語りのテンポや仕草に落差があるんだけど

それらが全て自然で、決して必要以上に気負っていないんだなぁ。

「ああ、この人ならやってくれそうだ、きっとやれる」と確信するわよ。

命令されて、給料を貰って、それを職務として動くのとは、全然違う。

大声で体制を批判し、同僚を募り、アジって大同決起するやり方じゃぁないのよ。

だから彼等は、多分、最後のひとりになっても走り続けると思うわ。

だって、自分に命令しているのは、他ならぬ自分なんだもの！

真紀子ね、つくづく自己嫌悪に陥ったわ。

真紀子の場合、騒ぎ、けしかけ、脅し、侮辱する・・・無責任の固まり。

それでも決起しない場合は、ハイヒールとムチによるお仕置き・・・何これ？

だけど、日本男児って変なところに気骨があると感じるわ。

侮辱されようが脅されようが、決して危険なところに自分の身を晒さないものね。

安全第一、良い子、従順、無気力、無関心・・・夢なんて知れてるわよね。

昭和４０年代後半かな？派手な大学紛争があったと聞くけど、

だとすれば、ＤＮＡが無いわけでなく、

たまたま今は、密かに隠れ潜んでいるだけということなのかな？

なら、待ちましょうか？

そのＤＮＡが頭を持ち上げてくる頃、

真紀子、老齢で死んじゃってないことを祈りつつ！

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