1999年 8月12日 更新
2003年3月 9日 手直し

マイケルのファ・ソ・ラ・シb・ド・レ

マイケルが最近多用する、「ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ」(厳密にはファ・ソ・ラ・シb・ド・レ、実音ではミb・ファ・ソ・ラb・シb・ド)を、どうしてぼくが狂喜乱舞するのか、訝しがる方も多いでしょう。実際、海老久でも他のメンバーはポカンとしてましたから。
このインパクトは強いけど、その凄さがサックス奏者以外には判らないワザについて、説明しようと思います。

まずは実際の音を聴いてみましょう。
(ot.aif AIFF形式 139K)

アフリカの草原で象が鳴いているような音ですね。「ああ、これか」とお思いになった方も多いでしょう。ところがこのフレーズ、吹くのは死ぬほど難しいんです。

このフレーズを説明するためには、オーバートーン(倍音)の説明から始めなければならないでしょう。オーバートーンの物理的な話は専門の方に任せるとして、大ざっぱに言ってしまうと、


ある音が鳴っていると、その音に混じっていろんな音が同時に鳴っている。
その混じっている音をオーバートーンという。


でしょうか。随分アバウトだな。

このオーバートーン楽器の音色を決める上で非常に重要な要素なのです。また、意外でしょうが、みなさんが小学校時代に吹いたリコーダーの運指が1オクターブ目と2オクターブ目でほぼ同じなのも、倍音のおかげなんです。

オーバートーンには一定の法則があり、無茶苦茶な音が出るわけではありません。元の音の周波数の整数倍の音が出ています。例えばサックスで最低音「シb」を吹くと、以下のようなオーバートーンが出ています。


Bbのオーバー・トーン・シリーズ


この音の並びをオーバートーン・シリーズ(倍音列)といいます。元の音を第1倍音、以下順番に第2倍音、第3倍音、第4倍音...といいます。

管楽器の場合、オーバートーンをコントロールして、例えば第2倍音を強調して演奏するということが可能なのです。

で、話を戻すと、マイケルの「ファ・ソ・ラ・シb・ド・レ」は全部、オーバートーンで出しているわけです。

ひとつひとつの音で見ていくと、
 ファ−シbの第3倍音
  −ドの第3倍音
  −レの第3倍音
 シb−シbの第4倍音
  −ドの第4倍音
  −シbの第5倍音

という具合に吹いているわけです。つまり運指としては「シb・ド・レ・シb・ド・シb」なわけです。

シb、ド、レの倍音列を参考のために書きますと以下のようになります。
シb・ド・レの倍音列
で、言うまでもなくこれはとっても難しいワザなのです。

マイケル自身も「What It Is / Jacky Terrasson」では第5倍音のを失敗していますし、斑尾でもちょっとミスしていました。しかし、こういったフレーズが思い浮かぶのも、完璧にオーバートーンをコントロールできるマイケルならでは、とも言えるわけです。普通の人だったら考えも付かない。

そんなわけで、ぼくはこのフレーズが出ると狂喜乱舞するわけです。
自分でも吹くかって? 密かに練習はしてますが、全然、出来ましぇ〜ん。

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※日本でオーバートーン理論がジャズ界で一般的になったのは比較的最近だと思います。ぼくの知るところでは、1978年のJAZZ LIFEに載ったDAVE LIEBMANのサックス・セミナーで紹介されたのが最初ではないでしょうか。まあ、知ってた人は知ってたんでしょうけど。

※クラリネットでは奇数倍音しかでないため、運指が1オクターブ半ごとになっているそうです。びっくり。


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