陽だまり こもれび 水平線 えび きゃすと(さんにん) 男 女 その他 はじめに 春になる頃には 彼女の病気も治るだろうと 医者は言った 木の葉が散るのを見て 死を想った詩人は 春になり、新緑の葉が陽だまりをつくる頃 何を想うのだろう。 浜辺。静かに波の音。女がひとりただずむ。 女「波の音に心が洗われるようだ・・なんて、詩人は偉いなあ。 男登場。 男「やあ。 女「おはよう。 男「もう昼だぞ。 女「そう。 男「眠そうだな。 女「眠いよ。 男「春眠暁を覚えずだな。 □ 女「まだ、見つからないの? 女「男。 男「まだ。 女「そう。たいへんね。 男「ああ。 □ 男「そっちは暇そうだな。 女「変なの。 男「何だよ。 女「ここに人捜しにくるなんて、変わってるわ。 □ 男「まあ、変わってるかな。しょうがないよ。 女「しょうがない、か。 女「がんばって自分の足で探しなさい。 男「そのつもりだよ。 □ 女「あのさ。 男「なに? 女「となり座らない? 女「休憩。 男「ああ。 男座る。 女「あっちの入り江の方は行った? 男「まだ。 女「そう広くもないからね。すぐ見つかるよ。 男「ああ。 ざざーーん。 男「いい風だな。 男「気持ちいい風だろ。 女「そう? 男「感じない? 女「わからない。 男「そうか。俺は海の男だ。だからな。 女「ふーん。 女「もう長いの?その男を捜して。 男「ああ。長いな。 □ 女「人生は何かを探す旅なんだってさ。 男「えっ。 女「みんな見つかるあてのないものを探して人生を旅してるんだってさ。 女「くらいね。 男「そうだな。 □ 男「君はいま何してるんだ? 女「ただ寝てるだけよ。 男「退屈じゃないか?ただ寝てるだけってのは。 女「別に。 男「そうか。 女「眠いからね。 男「夜ちゃんと寝れないのか? 女「別に。 男「そうか。 女「わりと夜の海をぼーーっと見てるかも。 男「夜更かしは、良くないな。 女「分かってるわよ。 □ 男「星とか見るか? □ 男「海に出るとすることがないからな。眠れないときは波か星を見ていた。月のない夜は波の音だけが聞こえるんだ。月が出てれば、くだける波のしぶきが月明かりに少し輝く。 女「そう。 男「海は男のロマンだ。 □ 男「なんだよ。 □ 女「ね、男を捜してどうするの? 男「船に乗るんだ。 女「どうして? 男「女には分からないよ。 女「そう。 男「ああ。 □ 女「それじゃあさ。 男「ん? 女「捜してる男ってどういう人? 男「どうって? 女「どうしてその人と船に乗りたいの? 男「いいだろ、別に。 女「どういう人なの? 男「・・・・・親友だよ。むかし同じ船に乗ってたんだ。 女「どんな船? 女「どんな船? 男「どんなって・・・戦艦だ。どでかい戦艦だ。 男「そびえ立つ艦橋に、9門の46センチ砲。ハリネズミのように無数に備え付けられた対空砲。・・昔の話だ。もう沈んでしまって今はない。 女「そう。 男「なんだよ。 女「男の人って好きね。そういうの。 男「まあね。 女「そこであいつに会った。 男「あいつは舵を、俺が砲を担当した。俺は砲術長だった。 女「ほうじゅちゅちょう? 男「言いにくいんだよ。いいだろ別に。 女「いいわよ。別に。 □ 女「撃ったの? 男「撃った。 女「人を殺した? 男「いや、たぶん。 女「どっち? 男「俺の弾は敵に当たらなかった。 女「そう。 女「じゃあ死にそうになったことは? 男「漂流した。 女「それで? □ 女「わたしのおじいちゃんがね、やっぱり戦争に行って二回も漂流したって。輸送船だけど。 男「へえ、どこで?何日ぐらい? 女「弟にはよく話してたけど、わたしにはあまり話さなかったから。 男「そうか。 女「20日ぐらい漂流してたって。 男「長いな。 女「そうね。盲腸が心配だったって言ってたよ。 男「まあしかし、生きていてよかったじゃないか。 女「まあね。 男「そう思えるようになるまでが大変なんだ。 ざざーーん。 女「戦争ってさあ 男「ん? □ 女「別に。 ざざーーん。 女「・・ねむい □ 男「寝れば? 女「いや、いい。まだ昼だし。(あくび) 男「寝ないの? 女「そんなに私を眠らせたいの? 男「おまえのこと心配して言ってるんじゃないか。 女「そう。 □ 女「ねえ。どうしてその友人がこの場所にいるって思ったの? 男「あいつは怪我を負っているはずだ。沈むときに俺をかばって。だからこういう場所を順番に探してるんだ。いつか会えると信じて。 女「ふーーん。 □ 男「なあ。 女「なに? 男「んーー、いや。 ざざーーーん 男「(立つ)もうそろそろ行くよ。 女「そうね。 □ 女「どこへ? 男「聞いてどうするんだ? 女「別に 男「この場所にいると思ったんだ。あいつがさ。 女「うん。 女「あんたの探す男は、きっといるよ。 男「ああ。 女「じゃあね。 男「ああ。 □ 男「じゃ。 女「うん。 男退場 女「あいつは数日前、この場所に現れた。傷を負った戦友を捜していると言って。あいつが探している男はこの世界にはいない。戦争なんて、とっくに教科書の中だけの出来事になっている。それでもわたしは、がんばってね、というようなことを言ってしまう。そんなこと、思ってもないのに。話を合わせたって、お互いに、いいことなんてないのだ。 ざざーーーん 女「あ、忘れてた。ここ砂浜なんだ。(ちょっと場所を移動) 女「うーーん。(砂を払う)砂浜ってのも、考えものね。気付かずに寝てたら、流されちゃう。 砂浜っぽいさまざまな音が聞こえてくる 女「かーもーめーーのすいへいさん。 女「ちょっと前まで、水平線だと思ってたのよねぇ。かもめの水平線。意味があるようでナイ。 ざざーーーん 女「ああ・・・どうしようかなあ。 女「んーーー ざざーーーん 女「空は青い。海も青い。空気も水も透明なのにねぇ。(手をかざす)うすーーーくブルーなのか、これは? ざざーーーん しばらく浜辺の喧騒。そして遠くに何かを見つける。 女「あ、船長だ。そうか。もうそんな時間か。 ざざーーーん 女「船長はわたしがここで眠り始めるよりも前からずーーっといて、いつものこの時間になると入り江にある船の手入れをしている。わたしは船長と、まともに会話を交わしたことがない。女嫌いなんだろう。船長の正式なあだ名は丘の船長で、わたしは彼が海に出ているのを見たことがない。彼はとても船を大切にしている。 女「彼は、わたしだけでなく、誰とも会話しない。それはただ頑固なんだけど、性格が悪いのに付ける薬はないので大変だと、先生が言っていた。確かに、大変だ。よく分からないけど。 ざざーーーん 女「こうして、私はどんどんひとりごとが多くなっていく。 女「誰も話す相手のいないこの場所で、わたしは一日の大半を無為に過ごす。たまに出会う人とも、満足に会話しないままに別れてしまう。わたしはもう何年も前から、いや、生まれたときからここにいるような気持ちにさえなっている。わたしはこの場所から出るすべを知らない。わたしは、この場所を離れて誰かに会いに行くことができない。わたしは、人を捜すことができない。いや、わたしは誰かを捜そうと思わない。そしてわたしは、誰かが探しに来るのを待っているわけでもない。わたしはただ、この場所で時間を流しているだけだ。わたしは眠る。まいにち。 女「ああ、これは長いひとりごとだ。 ざざーーーん。 女「自然はいいなあ・・・・・なんてどうやって想うのかなあ。そんなの都会に住んでる人だけだよ。やっぱり。 ざざーーーん。 女「あ、あいつだ。 女「ああ、船長怒ってる。なに話してるのかなあ。 □ 女「まあ、別にいいかあ。 ざざーーーん。 女「んーーー、ねむ。 女「ああ、船長怒って行っちゃった。 女「・・・たいへんだよねぇ。人を捜すってのも。世の中、何をするのもタイヘンだ。大変大変。人が人を捜す。そういや、人という字は人と人が引っ張り合ってる姿を現しているんだってどこかに書いてあったなあ。自分の所にね。引き寄せたいの。餌撒いてさ。うで引っ張ったりしてさ。ああ、そう考えるとあいつは偉いね。詩人の次に偉い。自分から動いて人を捜してるんだからねぇ。んーーと、ねむい。誰か私とちゃんと話のできる男はいないのかなあ、・・・ま、私もまともに話をしようとしてないけどさあ。今日のひとりごとはいつもより長くしゃべっております。なんてね。んーー、私のひとりごとも板に付いてきたぞ。なんとも。 ゆっくり暗転。闇の中。激しい戦闘の音。 男「左舷さらに2発被弾。 声「傾斜角72度。修正不能。 声「やはり神風はふきませんでしたね。 声「そうだな。 声「負け、ですか。 □ 声「総員退去。 男「えっ 声「聞こえなかったのか。総員退去だ。 声「早く行け。 男「しかし、自分は 声「(ばきっ)馬鹿、若い者は死ぬな。飛び込んで泳げ。 ざざーーーん。 男「艦長は船と命を共にした。多くの仲間が死んでいった。俺はあいつを見つけて、そして何を言うつもりなんだろう。お互いの無事を喜ぶのか。 □ 女「やっほー。(明るくなる) 男「わあっ。 男「なんだ、おまえか。・・どこでもいるなあ。 女「そうよ。ここはわたしの場所だもの。それよりすごい驚き方。・・・・夜が恐いの? 男「俺は男だぞ。 女「私は女だけど、夜が好き。私、夜目(よるめ)が利くのよ。夜になると、いろんな物が見えるようになるの。 男「・・・・・・そういうのを夜目というのか? 女「私、人には見えないものも見えるのよ。たとえばあなたのうしろにも・・・ 男「・・・・ 女「うっそー □ 男「ん、まあ船乗り向きだな。 女「船乗り? 男「そう。海の男だ。向いてるよ、鳥目じゃないってのは。猫目かな。夜目ってのは。まあとにかく、船乗りってのは、夜の海をじっとにらんで、島影や暗礁がないか確かめたりもしないといけないからな。 女「私は女だから、せっかく夜目が効いても、海の男にはなれないなあ。 男「そうだな。 女「海の女ならなれそう。 男「海女さんだな。あれは潜るだけだから夜目は関係ないよ。 □ 男「潜水や水泳は得意か?海の男になれば、時には何十キロも泳がないといけない。不幸にしていざということが起こったとき、最後に頼れるのは自分の泳力だけだ。どのくらい泳げる? 女「まっすぐは進めないわ。 男「? 女「そう、何故か必ず斜め下に進んじゃうのよね。 男「泳げないって事か? 女「潜水は得意なんだけどね。浮かばないけど。 男「それは潜水じゃなくて、溺れてるというんだ。日本語を無駄遣いするな。 女「まあいいじゃない。 □ 女「で、あなた何してるの? 男「えっ? 女「こんな夜中に何してるの? 男「・・夜目の訓練だよ。 女「ああ。 □ 女「なに? 男「元気だな。 女「夜だからね。 男「夜型なんだ。 女「さあ。 男「いや、夜型だろ。 女「あんた、変なことにこだわるのね。 男「・・そういうもんか? □ 女「昼間、船長と会ってたよね。 男「船長? 女「そう。あの、船のぐるぐる回すやつを背中に背負ってる人。 男「ぐるぐる回すやつって、操舵輪(そうだりん)か? 女「さあ、名前はしらないけど、そういうの。何か話してたよね。 男「ああ。 女「この入り江のところって、あの海岸から見えるのよ。 □ 女「今は夜だから見えないけどね。あっちが海岸。あの辺が、わたしがいつもいるところ。わたし、目はいいからね。 □ 女「よかったじゃない、男と会えて。 男「あいつは違うよ。探してるやつじゃない。 女「そうなんだ。 男「あいつは海をおそれている。 女「そういえば、船に乗って沖に出てるのを見たことないなあ。 男「海をおそれるようなやつは海の男じゃない。 女「船長なのにねぇ。 男「あいつを船長と呼ぶな。 女「でも、あの、ぐるぐる回すやつ持ってるのに。 男「船長は舵輪(だりん)なんか持たないよ。それは航海長だ。 女「ふーーん。 男「あいつには船乗りの、いや、船を持つ資格なんかないんだ。 女「厳しいのね。 男「だから、海の男は男の中の男なんだ。何物も恐れない。 □ 女「今かっこいいことを言った気になってる? 男「そういう、人を小馬鹿にしたような言い方は良くない。 女「女は素直な方がいい、と。 男「何だよ。根に持っているのか?男とか女とか関係ないよ。人間、素直な方がいいだろう。 女「あんたを見てると、そういう気になってくるよ。わたしもがんばらなきゃね。 男「それは俺に何が言いたいんだ? 女「別に。 □ 女「夜っていいよね。 男「え、ああ。 女「わたし夜が好き。 男「そうか。 女「なんか夜の思い出ないの? 男「えっ? 女「んーーと、ほら、なんか思い出よ。あんた船乗りでしょ。そしたらさ、なんか思い出あるでしょ。だからほら、んーーーー、幽霊船が出たとかさ。 男「幽霊船? 女「たとえばよ。なんかないの? □ 女「そうか、残念だね。 女「男が見つからなくて。 男「やっぱりこの場所にもあいつはいないのかもしれないな。 女「そうだね。 男「そろそろ次の場所に行くかな・・ 女「この場所から出ていくの? 男「ああ。 男「君は? 女「えっ? 男「君はこの場所から出なくていいのか? 女「さあ。 男「さあって? 女「わからないなあ。 男「自分のことだろ。 女「そうだけど。 男「君はこのままでいいのか? 女「あんた変なことにこだわるのね。 男「・・そういうもんか。 □ 男「ま、無理にがんばらなくたっていい。がんばりたくなったときに、がんばりたいだけがんばればいい。 女「はげましてるの? 男「そうだよ。 女「なんだか 男「何? 女「掃いて捨てるほどに理解のある言い方だわ。 □ 女「皮肉じゃないよ。 男「ああ。 □ 女「変わりたいの?この場所を出て。 男「変わらないよ。どこにいても俺は俺だ。 女「そう。 男「どんな場所でも、俺は変わらず俺でありたい。そういう強さも、海の男には必要なんだ。 女「ははは。 男「何? 女「変わらなければここからは出られないわ。だって 男「何? 女「なんでも。 □ 男「ここが好きなのか? 女「夜の海は好きよ。特に、今日みたいに月の出ている夜は。 男「そうじゃなくて 女「この場所? 男「そう。 女「さあ。 男「何が? 女「わからないわ。 男「好きかどうか? 女「そう。 男「そうか。 □ 男「今の自分は? 女「何が? 男「好きかどうか。 女「さあ。 男「分からない? 女「好きよ、たぶん。 □ 女「何でそんなこと聞くの? 男「何でって、別に。 女「変なの。 男「お前のことを心配してるんだよ。 女「珍しいわね。 男「何が? 女「みんな自分のことで精一杯なのよ。 男「なんだよ。 女「この場所にいる人たちはね。 ざざーーーん。 女「母さんみたい。 男「何が? 女「君のこと心配して言ってるんだよ。って。 男「俺は男だ。 女「そうね。 □ 女「あんたのこと心配して言ってるのよ。ってね。漫画ばっかり読んでるんじゃないの!とか、いつまでもテレビ見てるんじゃないの!とか、どれだけ眠れば気がすむの!とか。 男「心配性なんだな。君のお母さんは。 女「そうね。母子家庭だからね。 男「そうか。 男「俺もそうだ。戦争でな。父は立派なおとこだったと母は言っていた。 女「そう。いいね。 男「そうか? 女「立派な男だったんでしょ。 男「ああ。 女「よかったじゃない。 男「まあね。 □ 男「それで。 女「何? 男「どっちを言ってほしかったんだ?いつまでも寝てていいよ。と、いつまで寝てるの!と。 女「わからないなあ。 男「それじゃあ、君の母さんも困るだろ。 女「でも、言われるたびにつらかったわ。見捨てられたような気がした。 男「見捨てられ体験だな。 女「そうね。心の発達に深い影を落とすわ。 □ 男「じゃあ、いつまでも寝てていいよ。 女「えっ? 男「かわりに言ってやるよ。寝ろ。そしてもう起きるな。 女「ひどいなあ。 男「大人なんだから、好きにしたらいい。好きなだけ寝て、好きなだけテレビ見て、好きなだけマンガ読んで。 女「怒ってくれる人がほしい、監視してくれる人がほしい。そんなんじゃ、自堕落な人間になっちゃう。 男「ひとりは嫌か。 女「いや、ひとりがいい。自由がいい。 男「矛盾してる。 女「いいじゃない。 男「で。じゃあ君が母親になったら、どっちを言うつもりなんだ? 男「どうした? 女「ん、そんなこと考えたことなかったから。 男「そうか。 女「うん。 男「しかし、いつか君も母親にならなきゃいけない。 男「まあ、ならなくてもいいけどな。 女「そうね。 男「どうなんだ? 女「んーーーー、なってみないとわからないなあ。 男「あいまいだな。文句言う資格なし。 女「文句なんか言ってないわよ。 男「そうか。 女「そうよ。母さん、好きだもの。 男「好きだから文句言うんじゃないか。 女「・・・・わからない・・ 男「好きかどうか? 女「好きよ。わからないのはあんたの話。 □ 男「君は父親を求めているんだ。 女「ちがうわ。 女「嫌いよ、あんな奴。 男「そうか。しかし、実在としての父親を嫌っても、役割としての父親は求めているんじゃいか?いや、君は君を守り助けてくれる存在を求めているんじゃないのか? 女「ちがうわ。 男「そうか。まあ、海の男らしくない会話だったな。もうやめよう。 女「変なの。 男「女から見ればな。 女「そういう言い方、いまどき良くないよ。 男「いいんだよ。 女「あんたも父親を求めているのよ。立派だったという父親の影を。 女「あなたは自分の父親を投影できる友人を捜してる。 男「ちがうよ。友は友だ。 ざざーーーん 男「もうやめよう。会話が変だ。 女「そうね。 □ 男「もう行くよ。 女「そう。 男「じゃ 女「うん、私はもう少しここにいるわ。 □ 男「もし 女「なに? 男「いや。 女「もし? 男「もしよければ。 女「いいよ。 男「何が? 女「さあ。 男「いいの? 女「何が? 男「なんでもないよ。 女「そう。 □ 女「変なの。 男「そうだな。 男「気にするな。 女「気にしてないわよ。 男「そうか。 □ 男「もう行くよ。 □ 男「じゃ 男退場 ざざーーん。 その他登場。ぐるぐる回すやつ、操舵輪を背負っている。 その他「おい。 その他「おい。 女「船長。話しかけてくるなんて珍しいわね。 その他「何だ。その船長ってのは? 女「あだ名よ。 □ 女「・・・なに? その他「いま、あの男となに話してたんだ? 女「別に。 その他「おまえもあいつとグルなのか? 女「グル? □ 女「・・・・・座らないでよ。 その他「ここはおまえの土地か? 女「なに子どもみたいなこといってんの。 その他「(座る)あいつは俺の船をねらってるんだ。 女「なによ、それ。 その他「そこの入り江に俺の船がある。 女「船・・ああ、いつも手入れしてる・・ その他「あいつはここから出たがっている。俺の船を使ってだ。 女「それで。 その他「あいつは船乗りから船を奪うつもりだ。同じ船乗りなのに! 女「・・・・・それで。 その他「あいつは何か言ってたか? 女「別に。 その他「話はそれだけだ。・・・・女に話すようなことじゃなかったな(立つ) 女「船乗りってやなやつが多いわ。 その他「女に何がわかる。 女「船乗りに何がわかる。 その他「・・・・女はろくなもんじゃないな。やっぱり。 □ その他「(去り際)あいつも船乗りだろ。 女「あいつもやな奴よ。 その他「ふん。 その他退場 女「なによ、ああ、やな気分。こんなに月がきれいな夜なのにさ・・・なんて想えないなあ。やっぱり。小説家は偉いよ。うん。 女退場 船のなか。 その他「おい、そこで何してる。 男「夜目の訓練だ。 その他「なんだそれは。 男「知らないのか。海の男のくせに。 その他「俺の船に勝手に乗り込んで、何をするつもりなんだ。 男「海へ。 その他「まだそんな事を言ってるのか。 男「もちろんだ。 その他「だめだ。だいたいこれがなきゃ動かせないだろ。(舵輪を示す) 男「そうだな。 □ 男「なあ、どうしてあんた海に出ないんだ。 その他「そう決めたからさ。 男「じゃあなぜ船を持ってるんだ。 その他「同じ話を何度も繰り返す気はない。お前こそ、人の船に頼ってないで、自分の船を使ったらどうなんだ。 その他「自分の船も持ってないなんて、海の男失格だな。 男「それでも俺は、あいつを捜し続けなければならない。わずかでも可能性があれば、それを信じて行動するのが男ってもんだ。そうだろ。 その他「だったら泳いで行ったらどうだ? □ その他「とにかく、俺と俺の船を巻き込むな。 □ 男「使わない船を大事に手入れだけするなんて、男らしくないな。 その他「なんだと。 男「あんたは海に出ない。ならどうして船なんか持ってるんだ。壊してしまえよ。どうせ使わないんだから。 その他「そうか。そうだな、そうしよう。そうすればおまえにもつきまとわれないですむ。 男「いや、あんたは壊せない。 その他「壊せる。 男「カケをしよう。あんたが本当に船を壊したら、俺はもうあんたを巻き込まない。ただし、壊せなかったら、あんたは俺と一緒に海に出るんだ。 その他「そのカケは俺にどんな利益があるんだ? 男「なぜ、そうやってすべてを否定する? その他「若造がわかったような口をきくな。 男「俺は若造じゃない。 その他「若造が無駄に若気を振りまいて、迷惑なんだよ。 男「頑固じじいの方が、よっぽど迷惑だ。 その他「かまうから迷惑なんだろ。かまわないでくれ。 男「かまってほしいくせに。 その他「何を 男「俺にはわかる。 その他「虫酸の走るガキだな。そういうのはまったく嫌いなんだよ。 □ その他「お前の方がよっぽど頑固だ。 男「そうさ、頑固にもなるさ。じゃあ俺はどうすればいい。 その他「知るか。 男「この場所から出るには、この船しかないんだ。 その他「都合のいいときだけ利用されるのはもうごめんだ。まずはギブ。それからテイクだ。 男「俺はあんたに何を与えればいい? その他「お前から欲しいものなんてないな。 男「どうしろって言うんだ。 その他「知るか。 □ その他「じゃあ聞くが、もし俺が船を持ってなかったら、どうしたんだ? 男「何が? その他「もし俺が船を持ってなかったら、だ。 男「どうって その他「俺の船に集まってくる連中はみんなそうだ。 男「一緒にするな。 その他「一緒だ。どいつもこいつも。 男「何を・・ その他「別の方法を考えるんだな。 □ 男「それがあんたの本音か。 その他「知るか。 その他「とにかく、だめなものはだめだ。今すぐ俺の船から下りろ。 女登場 女「何やってるのよ。 □ 女「へえ、船の中ってこんなになってるんだ。あれは何? その他「降りろ。 女「何よ。 その他「早く。 その他「今すぐ。 女「いいじゃない。ちょっとぐらい。 その他「だめだ。 男「女は船に乗っちゃいけない。 女「あんたまで。 その他「出ろ。早く。 女「どうしてよ。 その他「いいから黙って船から降りろ。 その他「・・どうしておまえらはそんなに頑固なんだ。 女「あんたの方がよっぽど頑固だと思うけど。 男「一緒にするな。 女「わかった、理由を教えてくれたら降りる。 その他「女は知る必要のないことだ。 男「女には関係ない。 女「何よ、ふたりして女おんなって。ばっかじゃない?今時そんなのはやらないわよ。 その他「いいから、あっちに行ってろ。 男「もう寝たらどうだ? 女「うるさくて眠れない。 その他「おい。少し静かにしろよ。 女「だから何なのよ。 男「女には分からない話だ。 その他「そうだな。 女「なにが・・ 男「蒸気機関は、 女「えっ その他「蒸気機関は。 女「なによ 男「蒸気機関は炭坑で最初、実用化された。 その他「炭坑に溜まった地下水をくみ上げるためだ。 男「力強いその動き。 その他「滑らかなその動き。 男「男は誰もが魅せられた。 その他「やがて、 男「やがて炭鉱は閉鎖され、俺達は船に乗った。動力はもちろん 二人「蒸気。 男「風が吹かなくても前に進める。 □ 女「はあ 男「女には分からない話だろ。 女「そうね。 男「蒸気機関は男のロマンだ。 女「SLどころか、ディーゼル車ももう走ってない時代に何言ってんだか。 男「ディーゼルなんかくそくらえだ。 その他「だから女は嫌いなんだ。 男「女には分からないのさ。いいか、バーナーからは300度を超える高圧の蒸気がタービンに送り込まれる。うなりをあげる15万馬力のタービン。タービンの25ミリの小さな羽が、直径5メートルのスクリューを回転させる。そのとき、鋼(はがね)で出来た大木のようなスクリューシャフトが一瞬ねじれるんだ。そしてそのスクリューの回転は、7万トンの巨艦を30ノットまで加速する。いいか、これが蒸気の力だ。ディーゼルなんかくそくらえ。真っ白な蒸気。それが男のすべてだ。 □ その他「おい、分かったら早く船を下りろ。 女「分かったけど、それとこれは関係ないじゃない。 男「おおありだ。 その他「船は男達を戦場にいざなうものだからだ。だから船には力が必要だ。そして、それを操る人間にも、力が、強さが求められる。その巨艦に見合うだけの強さを兼ね備えた男達だけが、それを操ることが出来る。 □ その他「結局、人は強くて大きいモノに寄りかかるのさ。そうして、人は巨大戦艦を生み出した。 男「まて、何が言いたい? その他「おい、あいつを降りさせろ。 男「俺がか? その他「そうだ。 男「どうしてだよ。 その他「知り合いなんだろ。 男「何でもないよ。 その他「いいから、早くしろ。 女「いいわよ、降りるわよ。けち。 □ 男「・・さて その他「お前も降りろ。 男「なに。 その他「早く降りろ。 男「俺はこの船を使いたいんだ。 その他「だめだ。 男「だったらカケをしよう。 その他「あれは俺に利益がない。 男「どうして海に出たくないんだ? その他「それを聞いてどうする? 男「俺はどうすればいい? その他「知らん。 男「いいから、うんと言え。 その他「い・や・だ。 女「ねぇ。 男「この船を 女「ねえってば。 その他「うるさい、早く降りろ。 男「だまれ、海に出るんだ。 その他「いやだ。 男「それが 女「ねぇってば。 男「海の男の誇りだ。 女「ちょっと見てよ。 その他「何度言っても 男「だから邪魔するなと その他「駄目なものは駄目だ。 女「見てってば。 男「くどいぞ。 その他「くどい。 女「外の様子が変なのよ。 男「外の様子が変…… 男「変? その他「それはもしや 女「ちょっと外見て。 男「もういいから、黙ってろ。 女「だんだんこっちに近づいて来てる。 その他「敵だ。いや、しかし・・・ 女「敵? 男「敵だと。 その他「ああ敵だ。 男「何だよ敵って。 その他「・・・・。 男「まさか。 男「ちょっとどけ。 女「・・なによ。 その他「確かに敵なんだな。 女「さあ。 男「間違いない敵だ。 その他「そうか。 女「空一面、水平線までびっしりでしょ。でもあれ、敵なの?わたしには 男「やはり敵は機動艦隊(きどうかんたい)で来たか。 女「なにそれ。 男「雷撃機(らいげきき)や爆撃機(ばくげきき)なんかの航空機部隊だ。戦艦はこれに弱い。 女「でも 男「いいか、戦艦の主砲は一トンの徹甲弾(てっこうだん)を40キロ飛ばすのがせいぜいだ。しかし航空機は同じ爆弾を500キロ遠方まで運ぶことが出来る。小刀で弓矢と戦うようなものだ。我々の弾は航空母艦には届かない。しかし奴らの爆弾や魚雷は確実に我々にとどめを刺せる。 女「いや、だから その他「とにかく、のんびりしてられないな。 男「ああ その他「どこか隠れる場所を探さないと。 男「なんだって。 その他「さっき自分で言っただろ。艦(ふね)は航空機に勝てない。逃げるんだよ。 男「どうしてだよ。戦うんだ。 その他「勝てるわけないだろ。 男「貴様ぁ。何だその軟弱な精神は。 その他「なんだ。いきなり。 男「叩き直してやる。 女「何やってるのよ。 男「うるさい。おんなこどもは黙ってろ。 女「わたしは女だけど子どもじゃないわ。混ぜないでよ。 男「(ばきっ) 女「あっ 男「目を覚ませ。貴様の体にも海の男の血が流れているのなら。 その他「勝てない戦いをするのが海の男なのか? 男「なんだと。 その他「言っとくが、この船はお前の乗っていた戦艦とはわけが違う。ただの汽船だ。何の武器もないんだぞ。どうやって戦うんだ。魚を釣りに行くんじゃないんだぞ。 男「そんなもん、何とかなる。 その他「なるわけないだろ。 男「なるんだ。 その他「勝手にしろ。 □ 女「・・ねぇ。 その他「(船の出口に行く)なんだこれは。くそ、どうして沖に出てるんだ。 □ その他「おまえ、イカリを上げたな。 男「ああ。 その他「なんてこった。あの場所にいれば敵は来なかったのに・・・ 男「だが、いずれ出て行かなければならない場所だ。 その他「傷つくためにか。 女「ねぇ。 男「違う。お前も男なら分かるはずだ。 その他「わからんな。 男「誰の敵だと思ってるんだ。 その他「誰の敵なんだ? □ 男「いいか、これは男の戦いだ。男の戦いとは何だ。男は何のために戦うんだ。 その他「知るか。 男「逃げるのか。 その他「祖国のためか?愛する者を守るためか?俺は祖国なんか知らないし、愛する者もない。この戦いは無益だ。俺は戦いたくない。 男「ちがう。男はしょうがなく戦うんだ。男とは貧乏クジだ。戦うしかないから戦うんだ。 その他「何だそれは。 男「そうだろ。 その他「分からんな。 男「助けを求めている者がいる。助けないわけにはいかないだろ。しょうがないんだ。あきらめろ。 その他「むちゃくちゃだ。何を言ってるんだ、お前は。 男「そんな戦いだ、逃げるのを責めることは出来ないかもしれない。でも。 □ その他「嘘だ。 その他「それは嘘だ。 男「何が? その他「おまえらは、 男「何がだ? その他「うるさい。お前らはさんざん俺を利用しておいて 男「ちょっと待て。 その他「それなのに簡単に俺と、そしてこの船を捨てた。 □ 男「だからまた、お前もこの船を捨てるのか。 その他「じゃあ、助けるために死んでいった男達は、誰が助けてくれるんだ。 □ 男「(船から出ようとするその他に)どうする気だ。 その他「泳ぐのさ。あの場所なら敵も手を出すことはできないからな。 男「これが最後の船なんだろ。この船がなくなれば、おれたちはもうどこにも行くことができない。 その他「船があったって、敵がいる限りどこにも行くことはできない。こんな船、あったってなくたって同じだ。 男「何を。 その他「また殴るのか。 男「なんだと。 その他「おかしいじゃねえか。戦艦大和が沈んだのは第二次大戦の末期。1945年、徳之島沖だ。今は何年だ。 その他「お前は何なんだ。何を探してるんだ。え。 その他「お前を俺の海に入れるわけにはいかんのだよ。 ずがーーーーん。 男「攻撃?魚雷か? その他「なに、まだ射程距離には・・・ 女「うそっ、何なのよ。 男「新型だ。足が速い。 その他「また新型か。 男「2・3・4・・まずい。 □ 男「逃げるならその舵輪を置いていけ。おい、炉に火を入れろ。それから、そこの石炭をくべるんだ。 その他「まて、俺の船だ。女は触るな。 男「うるさい。逃げるなら早く逃げろ。 女「ちょっと、どうやるのよ。 男「来る。何かにつかまれ。 ずがーーーーん。 ずがーーーーん。 男「よし、二発はそれたか。敵はまだ遠いな。今のうちだ。急げ。 女「そんなこと言ったって。 その他「かせ。 その他「おい、舵輪だ。 □ その他「じゃまだ、あっちに行ってろ。 □ 男「(舵輪を取り付けながら)敵は? □ 男「おい、敵はどうなんだ?夜目がきくんだろ。 女「わたし? 男「いいか、雷跡をよく見るんだ。海の上に白い筋が見えるだろ。どの方向だ。 女「あ、見えた。左前から来てる。 男「左舷前方だな。よし、面舵(右)いっぱい。 □ 女「ねえ、動かないわよ。 男「あわてるな。 □ 女「だめ、当たるっ。 男「あわてるなっ。 ずがーーーーん。 女「ちょっと、大丈夫なの? 男「黙って、海を見てろ。 □ 女「あ、同じ方向からまた。 男「まだか? その他「ボイラーが熱くならなければ、船は動かない。蒸気が出なければ、こんなモノただのお釜だ。 女「どうするのよ。 男「うるさい、今何月だ。 女「五月だけど。 男「そう。君が目覚めるはずの3月はとうに過ぎ、季節は晩春。最後のチャンスだ。感じるんだ、最後の春一番を。その心地よい風を背に受け、俺達は走り出す。 □ 男「帆を張れ! 男、自らの体をいっぱいに広げる。 風がふく。 男「自分で動けないときは誰かに押してもらうんだ。こんな風に。 □ 女「また来るわ。今度は後ろから。 男「かわしてみせるさ。 ぷしゅーーーーー その他「蒸気が 男「やがて自分の力で歩けるような気がしてくる。そしたらしめたもんだ。 □ 女「だめ、まだまだ来てる。 男「まかせろ。 □ その他「おい、そっちは。 その他「突っ込む気か。 男「おちつけ。 その他「落ち着くのはおまえの方だ。 男「大丈夫。今度は大丈夫だ。絶対大丈夫と自信を持ち続ける限り、道は必ずそこにある。そう信じてやってみるしかないじゃないか。 その他「逃げるんじゃなかったのか。 男「逃げるのはもうごめんだ。 その他「特攻する気か。 男「戦え。戦うんだ。しょうがないじゃないか。俺達は男なんだ。女じゃないんだ。 男「目を開け。何が見える。敵から目を逸らすな。まっすぐ突っ込むんだ。何が見える。この先にいったい何があるっていうんだ。 鳥の鳴き声と羽音が世界を包む。 再び海岸。 女「眠い。徹夜だね。 男「そろそろ行くよ。 女「そうね。 □ 女「どこへ? 男「いちいちどこに行くとか言わないんだよ、海の男は。風のふくまま、潮の流れるまま。 女「そう。 ざざーーーん。 女「気取っちゃってさ。 □ 女「ねぇ、誰の敵だったの? □ 男「それは、大して重要なことじゃないよ。 女「だったら言ってよ。 男「そうだな。 □ 女「なぜ戦うの? 男「海の男だからだ。 女「そう。 □ 男「無理にがんばらなくたっていい。がんばりたくなったときに、がんばりたいだけがんばればいい。 女「はげましてるの? 男「そうだよ。 女「なんだか 男「何? 女「そういう言い方、嫌いだな。 ざざーーーん。 男「そうか。 女「うん。 □ 男「なあ。 女「なに? □ 男「いや、いい。 女「そう。 □ 男「この場所にいると思ったんだ。あいつがさ。 女「うん。 女「あんたの探す男は、きっといるよ。この場所ではないどこかほかの場所に。 女「何? 男「本当にあいつはいるんだろうか? 男「どう思う? 女「(ほほえむ) 男「俺はあいつを、そして他の仲間も捜さなきゃならない。また再び船に乗るために。 女「見つかるといいね。 男「見つかるさ。俺が見つけると信じている限り、あいつも必ずどこかにいる。 □ 男「(その他に)船は借りていくからな。 その他「勝手にしろ。 男「なあ・・・ その他「俺はいかねぇよ。ひとりで勝手に行け。 男「そうか。 その他「そうだ。 その他「おい。自分の船が見つかったら、返しに来いよ。ただの汽船でも、あれが俺の船なんだ。 男「ああ。 その他「じゃあな。 男「ああ。 その他「壊すなよ。 男「なるべくな。 □ 男「・・・じゃ 女「うん。 男退場 その他「さて、お前はどうするんだ。 女「んーーー その他「俺はあいつみたいに、気の効いた言葉は言えねぇぞ。自分で考えろ。 女「あいつって・・・(男の去っていった方を指し)あいつ? その他「そうだ。俺はあんな軟派野郎じゃねぇんだよ。まったく、あれで海の男を気取るようじゃ・・・ □ その他「なんだ? 女「ん、あいつだって、気の効いた言葉なんか言わないよ。どっちも落第。もっとがんばりましょう。 その他「ふん。 女「大変だね。海の男は。 その他「勝手にしろ。 □ その他「ちっとさみしくなるな・・・ 女「そう? その他「ああ。 女「そうかな。同じだよ。 その他「そうかもな。 □ 女「ねえ。 その他「俺のことはかまうな。 女「それが海の男ってもの? その他「そうだ。少しは海の男のことが分かったか? 女「全然。 その他「ふん。 □ 女「いいの?船、上げちゃって。 その他「俺はもう海には出ないからな。 女「あいつのこと、気に入ったの? その他「そうじゃない。 その他「なんとなくだ。 その他「むしろ、気に入らないな。あいつは。 女「そうだね。 □ 女「わたしも気に入らないな。 女「みんな自分以外の誰かなんて気に入らないのよ。誰だって、自分の抱えてる問題で精一杯だもの。 その他「さあな。 女「こういうのを希薄な人間関係って言うのかな。 その他「知らんよ。 女「悲しい?船長は。 その他「別に。 女「そう。 女「海は広いね。 その他「ああ。 女「この場所は、やっぱり狭いのかな。わたしもここから出た方がいいのかな。 その他「好きにしたらいい。 女「そうね。 □ 女「かーもーめーーのすいへいさん。 □ その他「風は、感じられたのか? 女「さあ・・ その他「そうだな。 □ その他「じゃあな。 女「うん。 その他退場 女「風を感じる・・・か。海の男は偉いねぇ。まったく。 幕