EPILOGUE6
「身寄りは?」
将軍校がつとめて穏やかに問いかけても
シェリー・バーキンは答えなかった。
少女に肉親はいない。
自らが生み出した軍用ウィルス゛G"
によって無残な最後をとげたのだ。
少女は自身の両腕で身体を抱きしめると
小さな唇をかみしめた。
きっと戻って来てくれる……。
孤独なシェリーにとって
クレアの残した赤い革ジャケットだけが
ただひとつ残された人との絆であった。
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EPILOGUE7
女は鏡に映る自身の姿を見つめていた。
エイダ・ウォンと呼ばれた女……。
しかしその名前に
別れを告げる朝が訪れていた。
次の任務まで、あと数刻。
「私はもう、エイダじゃない……」
わき腹には真新しい裂傷があった。
女がエイダであった時
愛した男を守るために受けた傷である。
「これはエイダの傷。私に傷じゃない」
エイダ・ウォンで無くなる朝
女はとめどない涙を流していた。
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EPILOGUE8
「またあんただけかよ、死神」
回収した唯一の兵士がハンクである
ことがわかると
ヘリのパイロットは毒づくように言った。
「いつもだ、あんただけが生き延びる。
どんな地獄のような戦場でもな」
ハンクはパイロットには応えず、
回収したカプセルを掌に取り出して
もてあそんだ。
地獄は死神の領域である
「死神は死なず、か……」
生還者はかすかな笑みを浮かべていた。
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