ハルマゲドンの話  7

 

   7.Happy end (ハッピーエンド)の書を開く 

 6までに記したように、ハルマゲドンという言葉は現在『ヨハネの黙示録』と呼ばれている文書の中の言葉です。そしてその『ヨハネの黙示録』は新約聖書に収められています。ですから、ハルマゲドンについて知ろうとする場合、新約聖書の『ヨハネの黙示録』を読んでいけばいいことになります。

 『ヨハネの黙示録』を開きたいと思います。

 お手許に『ヨハネの黙示録』を含む聖書をお持ちでない方は、7−5を参考にして『ヨハネの黙示録』を用意して下さい。


   7−1 バラ色の世界の到来 

 そして、どんなに強調しても強調しすぎることがない一つの大事なことがあります。
 それは、『ヨハネの黙示録』はハッピーエンドで終るのだ、ということです。

 黙示録」と聞いただけで暗黒・絶望の書だと誤解している人が多いのですが、
 『ヨハネの黙示録』を正しく読めばその誤解は解けます。そして、6にも書いたように、
 『ヨハネの黙示録』は読者に大きな喜びをもたらすのです。

 きわめて単純な一言で表わせば、『ヨハネの黙示録』は「バラ色の世界の到来の予告」です。


 

   7−2 『ヨハネの黙示録』は難解な書か?

 『ヨハネの黙示録』は、一般に「難しい」「難解」「晦渋」と言われています。

それは、新約聖書が古代ユダヤの習慣と伝統の中での言い回しや表現を含んでおり、同時にそれと言わば対立する関係にあるギリシァ的な合理的な考え方による文の組み立てが試みられている部分があるためで、そこにさらに執筆当時のキリスト教を厳しく弾圧するローマ帝国の政治支配という状況があって、隠語や比喩が使われ、国名や地名や動物の名前が、その言葉で表わされるそのものを指さないことが多いことによります。
 しかし『ヨハネの黙示録』は決して難しい文書ではありません。いくつかのことに注意して読んでいけば、中心的なメッセージについては誰にでもわかるように書かれています。


   7−3 少し注意して読む、特別な知識は不要。

 昔のユダヤの習慣や伝統、ギリシァ的思考の特徴、ローマ帝国の支配状況などについて、詳しく調べて了解した上でなければ『ヨハネの黙示録』を読めないなどということはありません。わずかな注意を心に留めながらそのまま文章を辿っていけば、『ヨハネの黙示録』は理解できます。むしろいろいろ調べたり考えすぎると理解できなくなってしまいます。

 聖書は、それを読む前提として特別な知識を必要としません。また、参考書や注解書は、特別に研究するような場合を除いて必要ありません。一般の読者が必要なことは全て聖書そのものの中に書かれています。もし聖書を読んでいてわからないことがあれば、聖書の別の箇所でそれに対する関連記事を読むと解決します。

 [8]以降は『ヨハネの黙示録』の案内です。お手許に聖書を開きながら進んで下さい。
 

 ★ここで、すでにお手許に聖書をお持ちの方は少し飛んで、<8>に進んでください。

[ 8に進むクリックボタンへ ]

 ★これから新たに聖書を入手しようと思っている方、聖書の日本語翻訳の種類や聖書の構成について関心のある方は次の<7−5>に進んでください。  


 

   7−4 『ヨハネの黙示録』の日本語訳

 ギリシァ語で書かれた『ヨハネの黙示録』は、世界一のベストセラー本と言われている聖書の一文書なので、多数の日本語訳があり、容易に手に入ります。

 聖書の新たな購入を考えている方は、以下7−5−nを参考にして『ヨハネの黙示録』を含む日本語訳聖書を入手してください。
 

 

    7−4−1 どの聖書が良いか/最も優れた聖書の翻訳は?

 翻訳はどんなものでもそうなのですが、普通は新しいものほど優れています。

 それは、訳者がそれ以前に訳されたものを参考にして、さらにより良い翻訳を作ることができるからです。また、言語は時とともに絶えず変化していて、翻訳されて活字となった言葉と日常使用言語との間の意味のズレが時の経過とともに大きくなるからです。
聖書ももちろん新しいものほど訳が優れている傾向があります。

 ここでは〈新・旧〉が揃った聖書の翻訳を見ていきます。新約聖書だけの訳は多数出ていますが、新約と旧約の両方が揃った聖書の翻訳はそれ程多くありません。

 代表的なものには、1954年の「口語訳」(日本聖書協会)、1970年の「新改訳」(日本聖書刊行会)、1987年の「新共同訳」(日本聖書協会)があります。これらの中で「口語訳」は、1975年に若干の改定が加えられていますが、すでに時代遅れで、部分的に多少の難のある訳を含むものとなっています。

「新改訳」(日本聖書刊行会)「新共同訳」(日本聖書協会)の二つが現在の代表的な日本語訳聖書で、日本のキリスト教会の大半が現在はこの二つのいずれかを公式使用しています。

また、その他に、キリスト教界の特殊な用語を排し、わかりやすい日本語を用いた1983年の尾山令仁訳『聖書・現代訳』(現代訳聖書刊行会)のような個人訳聖書、同様に意訳の1975年「リビング バイブル」もあります。

(注)ここに記した年号は初版の発行年です。

 特殊なものとしてはエホバの証人の作った「新世界訳」というようなものもありますが、意図的に内容を改変した偽訳です。

 

 1995年に出た最新訳の新約聖書、岩波書店〈新約聖書T〜X〉(新約聖書翻訳委員会訳)は、極めて完成度の高い訳です。現時点で最もレベルの高い訳だと言えるものです。ただしこれは新約聖書だけで5分冊となっており、5冊を合わせると一万数千円と高額になります。

 この〈岩波版〉は旧約部分が15分冊、新・旧約合わせて20分冊となるため、購入、運搬にはかなり不便で、一般向きではありません。

 

 ここで新たに『聖書』旧・新約を購入するという場合は、一般的には、現在の代表的な日本語訳である「新改訳」または「新共同訳」のいずれかを選ぶのが無難で適切であると思います。「新改訳」と「新共同訳」二つのそれぞれの特徴を以下7−5−1に記します。

 また、短期間で早く聖書を一読したい、という場合は、とりあえずわかりやすい言葉に訳された「現代訳」や「リビングバイブル」を読んでみるのが効率的かもしれません。
 

★聖書の《新約》と《旧約》の構成については、7−4−2を参考にしてください。
[ 7−4−2へ ]

 
「新改訳」と「新共同訳」二つのそれぞれの特徴を以下 7−4−1-1,2 に記します。

 

      7−4−1−1  「新改訳」聖書  

「新改訳」は、昭和20年代の翻訳「口語訳」(日本聖書協会)の不備な箇所を改めるため、別の団体の学者が集まって翻訳したものです。完成したのは1970年(昭和45年)、出版は1973年です。全体にわたって使用する言葉や文が統一されていて、読みやすくなっています。

 難点は、翻訳当時からすでに30年近くになっていて、一部に現在の日常語とのズレが生じてきていることです。特に、変化の激しい敬語表現が、訳文の敬語と現在の日常語で使われている敬語とで意味が一致しない部分が生じています。そのため、すでに若い世代の人に意味が伝わらない、誤解を招く、…などの事態となっています。例えば「仰せられた」(オオセラレタと読む)というような、現代語としてはもはや通用しない死語が多用されていたり、「死なれた、葬られた、よみがえられた。」というように、一つの文の中に用法の異なる複数の同一発音の助動詞が混在していて、すでに若い世代にとっては判読不明な部分もあります。古い敬語表現の多用が「新改訳」の寿命を短くしていると言えます。

 新改訳には本文の他、欄外に「引照」が付いています。これは後述しますが、聖書を読解するのにひじょうに役に立ちます。
 

     7−4−1−2 「新共同訳」聖書 

「新共同訳」は、日本聖書協会が「口語訳」を全面的に改訳するために企画したものです。ちょうどローマ・カトリック教会とプロテスタントの一部の教会で共同の翻訳が意図されていたこともあり、ローマ・カトリックとプロテスタントの両方からなる学者の集まりによって「新共同訳」が翻訳されました。

 「新改訳」からさらに約15年後の翻訳で、文章の流れが滑らかでたいへん読みやすい感じがします。やはり新しくて現在の日常言語により近いからでしょうか。新約は1978年の「共同訳」の改訳、旧約はこの1987年のものが初訳です。外国語の固有名詞が原語の発音にかなり近づいた表記となっています。

 難点を挙げれば、全体の統一が完全ではない、ということです。このことに関しては、私は「新共同訳」をあまり読んでいないのではっきりしたことは言えません。立場の違うカトリックとプロテスタントの「妥協の産物」という面も無いわけではなく、一部に若干の不統一が見られるとのことです。以前私は「新共同訳」の翻訳を分担した先生を信州の山奥の山荘に招いた修養会に参加したことがあるのですが、そこでその先生が「カトリックへの配慮のためにいくつもの心残りのある訳にせざるを得なかった」とこぼしていたのを聞いたことがあります。

 また、新共同訳の大きな特徴に、「旧約続編」と呼ばれる、聖書本文とは別のもの(外典)を付け加えた版が出版されたことがあります。「旧約続編」は、トビト記、マカバイ記、シラ書などの書名を持つ、旧約聖書が書かれた後に書かれた約13の文書です。

 旧約聖書の最後から新約聖書までの間の状況を知るための資料としては貴重なものですが、神からのメッセージを直接記した聖書本文とは異質のものですから、同じ一冊の中に収められていても、区別して読む必要があります。

      7−4−1−3 便利なのは「新改訳」 

 現在最も便利な聖書は「新改訳」です。それは、「引照」が付いていることによります。引照というのは、聖書のある箇所に出てくる一つのある言葉や事例が他の箇所でも出てきていることと、その箇所を示す欄外の案内です。

「新改訳」聖書のあとがきからこの引照についての説明をそのまま転記してみます。

「聖書の中には、同じようなことばや事例が別の個所に出ていることが多い。また、相互に関係のある個所も少なくない。そのような個所を引いて照らし合わせると本文の理解に役立つ。」

 実際にこの引照を使ってみると、ひじょうによく聖書が理解できるのです。参考書や解説書などを読むよりもずっと良くわかります。もともと聖書は完全な書物で、それを補う書物は必要がないようにできています。聖書は聖書によって解き明かされる、という大原則を、引照を使うことによってはっきりと体験できます。


     〈 初めて聖書を開く方は参考にしてください。〉

    ( 7−4−2 聖書の構成について )

 

 聖書は66巻の文書を合わせたものです。66巻の中の39巻が旧約聖書で、新・旧約が一冊にまとめられた「聖書」では、前半に収められています。残りの27巻が新約聖書で後半に収められています。ここで「新約」「旧約」の「約」というのは、契約のことです。新しい契約と旧い契約。その契約というのは、神と人との間の契約を言っているのですが、ここではそのことについては詳しく説明しません。

 旧約聖書はヘブライ語(ごく一部はヘブライ語に近いアラム語)で書かれた紀元前の文書です。これはユダヤ教の聖典でもあり、ヘブライ語では「タナハ」と呼ばれます。(ついでながらイスラームの聖典であることも付け加えておきます) 各書名とキリスト教界の一般的な区分を並べておきます。

 律法書… 1.創世記 2.出エジプト記 3.レビ記 4.民数記 5.申命記

 歴史書… 6.ヨシュア記 7.土師記 8.ルツ記 9.サムエル記・上巻 

      10.サムエル記・下巻  11.列王記・上巻 12.列王記・下巻

      13.歴代誌・上巻 14.歴代誌・下巻 15.エズラ記 

      16.ネヘミヤ記  17.エステル書

 詩歌…  18.ヨブ記  19.詩篇 20.箴言 21.伝道者の書 22.雅歌

 大預言書…(「預言」とは単に未来の予言でなく神の言葉を預かって伝えること)

      23.イザヤ書 24.エレミア書 25.哀歌 26.エゼキエル書 

      27.ダニエル書 

 小預言書…28.ホセア書 29.ヨエル書 30.アモス書 31.オバテア書

      32.ヨナ書  33.ミカ書  34.ナホム書 35.ハバクク書

      36.ゼパニア書 37.ハガイ書 38.ゼカリア書 39.マラキ書

 以上の39巻です。

 ユダヤ教のタナハ(聖書)も内容は上の39巻と同じです。ただし、ユダヤ教では並び順が異なります。また、サムエル記、列王記などで上巻・下巻を区別せず、一つのものと数え、(もともと1つだったのを長すぎるのでキリスト教聖書は2つに分けている) また、いくつもの預言書をまとめて1巻としているので、全部で24巻と数えられています。

 新約聖書は紀元後にギリシァ語によって書かれています。

 歴史書… 1.マタイによる福音書   

       (福音書とは、よろこばしい音信を記した書ということです。)

      2.マルコによる福音書      3.ルカによる福音書 

      4.ヨハネによる福音書      5.初期教会の使徒の働きの記録

 書簡 … 6.ローマの教会への手紙     7.コリントの教会への手紙・T

      8.コリントの教会への手紙・U  9.ガラテアの諸教会への手紙

     10.エペソの教会への手紙    11.ピリピの教会への手紙

     12.コロサイの教会への手紙   13.テサロニケの教会への手紙・T

     14.テサロニケの教会への手紙・U  15.テモテへの手紙・T

     16.テモテへの手紙・U     17.テトスへの手紙

     18.ピレモンへの手紙     

     19.ヘブライ人のクリスチャンへの手紙

     20.ヤコブの書いた手紙    21.ペテロの書いた手紙・T

     22.ペテロの書いた手紙・U  23.ヨハネの書いた手紙・T

     24.ヨハネの書いた手紙・U  25.ヨハネの書いた手紙・V

     26.ユダの書いた手紙

 預言書…27.ヨハネが受けた啓示を記した黙示録

 以上が新約聖書の27の各文書です。

 書かれた順番と現在並べられている順番は一致しません。また、聖書の各文書の中にある章や節の番号は4世紀後半に新約聖書がほぼ完成した時に後から付け加えられたものです。

 ここで問題にしようとしているのは、この聖書の一番最後の『ヨハネの黙示録』と呼ばれている文書です。

             [ 7-4-1-1 「新改訳」と「新共同訳」の特徴に戻る ]

 


     


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1997.12.17. 7−3削除