和尚さんいますか?


 それは真夏の暑い昼下がり、私が友達の家へ行く途中でのこと・・・
「この辺に神社ありますか?」突然の声に振り向くと、ダンボール箱を抱えた少女、
すかさず「和尚さんいますか?」
???「あぁ、お寺ね、すぐそこだけど・・・」
「あのね、子猫(捨て猫)がいたの。持って帰ったらお母さんが家においては駄目
だって言うの。学校へ持って行きなさいって・・・夏休みで先生はいないの。そしたらね、
お母さん、和尚さんに相談しなさいって。和尚さんいますか?」
 幼稚園に隣接しているそのお寺、おそらく母親に教えられてここまで尋ねて来たの
だろう。8月の暑い昼下がり、帽子も被らずに鼻の頭には可愛い玉の汗が・・・それでも
しっかりと箱を抱えた姿がいじらしい。私はお寺まで一緒に歩き「和尚さん、いると
いいわね」少女が門の中に消える姿を複雑な気持ちで見送った。
「和尚さんいますか?」少女の声が聞こえてきそうだ。
和尚さんはいただろうか?今時の和尚さんはどう対応するのだろうか?良寛さん、
一休さんだったらどうだろう?和尚さん留守だったら少女はどうするだろう?
第一あの子は(和尚さん)なるものを知っているのだろうか?最初「神社ありますか?」
と言ってたけど・・・・・
それにしても「和尚さんに相談しなさい・・・」と言った母親、よくぞ言ったものだ。
私だったらどうしただろう。多分「猫のお母さん、必死で子猫ちゃんを探しているわ。
貴女がここに連れてきていたら、なかなか見つけて貰えないんじゃない?
元の場所に置いていらっしゃい。猫のお母さん、きっと見つけてくれるから・・・・・」
としか言えないだろう。あぁなんたる無責任な言葉。