イチゴと少女


 イチゴ摘みから帰ってくると、一軒隣の少女が弟とボール遊びをしている。
摘んできたばかりのイチゴ! 部屋に運び入れると甘い匂いが部屋中に漂う。畝を潰すから
好きなだけと言われ、面白さと欲とでずいぶん摘んだものだ。
「そうだ!あの子に上げよう」
私はボール遊びしているAチャンに、ちょっと大きめのナフキンに包んで持たせてやった。
彼女は大事そうに両手で支え持って帰った。その姿が可愛かった。

熟しきったイチゴは甘くてもう最高!だが痛むのも速い!存分に食べた後はジャム作り、
甘ったるい匂いで最後は鼻についてしまう。もう沢山!贅沢なこと言ったりして、作りながらも
パクリと・・・

翌々日朝、「ピンポ〜ン」出て行くとAチャンが、封書と花のキャンドルを持って立っていた。
封筒にはイチゴの絵の切り抜きが張ってあった。もじもじしながら、恥ずかしそうに嬉しそうに、
私に渡してくれたのだ。

 【○○さん(私のこと)、イチゴありがとうございました。あまくて、おいしかったです。
ごちそうさまでした。○○さんとは、あまりしゃべったことがなかったから、さいしょは、
ドキドキしました。でも○○さんは、朝のつうがくのときに「おはよう」と、やさしくいって
くれました。わたしは、そのときから「あぁ、やさしいなぁ」と思いました。そしてまた、
イチゴをくれて、ありがとうございました。以下略】

 この可愛い手紙とキャンドルを私は大事にしまってある。無地の封筒にイチゴの切り抜きを
貼ってくれた子供ながらの気遣い?それともお遊び?がとても嬉しかった。又、不思議なことで、
翌年イチゴ摘みからの帰りスーパーに寄ったら、そこで偶然パッタリ!「イチゴ上げましょう。
あとでいらっしゃい!」

可愛い少女も今は社会人。お嫁に行くとき、この話してあげようと思う。覚えているかなぁ?