アヴェマリア

おそるおそるドアを開けたときシューベルトの【アヴェマリア】が流れていた。そーと席に着く。先生はピアノの前にかけていらした。次々と生徒が入ってくる。運動着のままの人もいた。その間、先生も先に来ている生徒もシーンとして【アヴェマリア】を聴いていた。全員が揃い、曲が終わったとき、「さぁ、息も整ったでしょう。始めましょう」音楽の授業は始まった。
音楽の前の授業が体育であった。運動会を間じかに控えて、ダンスの練習にも熱が入り、終礼のベルが鳴っても一曲終わらせてしまったのだ。休憩時間が削られ、いや、足を洗う、着替える、おまけに音楽室は校舎の一番端っこ。始業のベルは鳴る。息弾ませて入った音楽室。そこに流れていたのが【アヴェマリア】だった。席に座ったときは???だが、みな神妙に黙って聴き入っているうちに、いつしか呼吸も整っていた。先生はひとことも仰らず、【アヴェマリア】をかけて、みんなが揃うのを待ってくださったのだ。素晴らしい気配りだった。その時、その先生が好きになった。そして思った。音楽って素晴らしい!音楽の力って、こんなにも説得力があのかと力が湧いてくるようなベートーヴェン第九の合唱、心の静まるドビッシィの月の光、ジンと来るアロハオエ、etc・・・・・

横道に逸れるが【アヴェマリア】で思い出すのは、映画【未完成交響楽】最後の場面だ。麦畑・・・・小さなマリアの像・・・・あぁよかったなぁ〜 ♪高校三年生!・・・♪