出羽三山

 地図も持たずに、地図も持たずにただ観光案内のパンフレットを頼りに、山初めての友を
連れて行った。何で出羽三山に行くことになったのか、今でも解らない。元々はカメラ旅行
の友、山よりも出羽三山と言う魅力的な言葉の響きか?写真集からの影響か?
彼女はザックから靴、総て新調。ルンルンの気分である。上野から寝台特急で翌朝鶴岡へ。
待合室で飲んだ、彼女が持ってきた温かい紅茶、すごく美味しかった。ほっとした。有難かった。
スタートは羽黒山!喘ぎながらの長い長〜い石段、夜行の疲れも忘れ二人はシャッターを切るのが
忙しい。勿論モノクロだ。山伏にも出会った。御朱印を貰ったがさすがに豪快なものであった。
朱印帖一ページには納まらない。直径十五センチもある。月山・湯殿山のも同じビッグなものである。
月山八合目へはバスで、あの時のレンブランド光線に彼女はすっかり感激していた。神々しくさえ
あった。山小屋のおじさんもいい人だったなぁ〜。その夜は我々二人っきり。薬草のお風呂も専用
寝しなに又、入ったっけ。朝、「窓の下まで野うさぎが来てるよ」と、おじさん。そぅ〜っと
そぅ〜っと覗いたっけ〜。鼻をヒクヒクさせていたうさぎ。おじさんと三人の朝食!
我々持参のものも差し出し、 いい感じだったなぁ。
おじさんに案内されてのお散歩。チングルマ、シオガマなどお花畑あり雪渓あり、 この時初めて
【アオノツガザクラ】を見て以来、この花がすっかり好きになってしまった。

月山から湯殿山への道、地図のないパンフレットだけの我々に「右へ右へと行きなさい」と・・・・・
おじさんに言われた通りに行く。途中会う人も無く二人で山を占領し、雲と一緒に歩いたっけ・・・
もう最高だった!月山頂上では白装束の講の人がいっぱい。何処から?人に出会わなかったのに
と思いきや直下に宿泊所のようなのがあった。
人型の紙に名前を書き、流し清めてからの参拝。カメラはいけない。喋ってはいけない。
真っ青な空を見上げる。この大きな大自然の中にあって、こんな高い所にごく狭いところに
囲まれてある小さな祠に手を合わす。寒気がするような妙な雰囲気だった。羽黒山とは大違い。
いよいよ湯殿山へ!地図が無くたって別に不安も無かった。ひたすら歩いた。が遂に彼女が
ギブアップ。私は彼女のザックを抱え、自分の疲れどころじゃない。時間は気になるし必死だった。
湯殿山も一風変わったものだった。裸足でお参りするのだ。御神体(岩?石?)からお湯が流れ
出ているからだ。時間も遅く我々二人だけだった。イヤ、蛇に合ったっけ〜・・・・・こんな所に蛇?
とも思ったが神の使い?のような気もした。大きかったし静かだった。
出羽三山の旅!無事でよかったものの今思うとぞっとする。 (何て大胆な、山、初めての彼女を
よくまぁ連れて行ったもの)と恐ろしく思う現在だ。 私自身地図も持たず、一寸ばかりの経験を
頼りに(もしも)なんて、ぜ〜んぜん思わなかったのが不思議なぐらい。若さなのかバカさなのか?
怖いもの知らずの無鉄砲。常識知らず? 何と言われても仕方ない。ただ、無事でよかった。
二人にとってはいい思い出になっている。彼女とはカメラを携えあちこちとよく出かけたけれど、
一番印象に残っているのがこの出羽三山だ。先に行く私が時々振り返ると、尾根を遅れがちに歩いて
来る彼女の赤い帽子!青い空!流れる雲! 昨日のようにさえ思い出され、目に浮かぶのだ。
若かった二人!今度は、【老女二人、月山を歩く】なんてどうだろう?彼女に怒られちゃうかなぁ?