ハッピーバースディ(ウクレレ教室)


 ウクレレ教室の講習会に参加した。申し込みはもっといたはず、いざとなったら初心者は五人ほど
だった。全員で十二・三人ぐらい。どう見ても私がずば抜けての・・・?の生徒さんだ。
おまけに夜である。目はショボショボしてくるし、指は思うように動かない。何回目ぐらいだったか、
休憩時間に廊下で、先生とお会いした。ニコニコ顔の先生「どうです?慣れましたか?」
「先生、もう大変です。指は動かないし、どこの弦押さえていいのか気にしていると、譜面が、
どこやっているのか迷子になるし、そのうち目はショボショボしてくるし・・・」
「結構年配の方もやっていますから、まぁゆっくりやりましょう」 
先生は笑顔! 同じ年配の人でも若い時からの人とは別だ。こちらは七十の手習いもいいところ。
「だって先生、私、七十の手習いもいいところ、昨日また一つ歳とっちゃったんです・・・」
後半の稽古も終り、いつものように皆起立、お互いに「有難うございました」「お疲れ様でした」と
御挨拶で終る。
だが、その日は違っていた。起立した後、先生は仰った。「はい、今日はこれで終わります。昨日、
Kさんのお誕生日だったそうです。ハッピーバースディをプレゼントしましょう!。」一瞬???
あの時と同じ、いや逆だ。古いメンバーは即、先生と共に弾き出した。新人は歌ってくれたのだ。
私はニコニコ?ニヤニヤ?すご〜く嬉しかった。そして最後に「有難うございま〜す」と、
デタラメに弦を「ポロンポロン〜ジャカジャカ〜ポロ〜ン」と 恥ずかしくもなくやってしまった。
休憩のときの先生との会話、きっと先生は私を励まし、労わりの気遣いだったのではと思った。
嬉しかった。気持ちの良い夏の夜だった。あのフラの新年会のことを思い出した。
あの時の私があって十数年後の今夜、逆の立場の私がある。嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
私は迎えに来てくれた夫に、その夜の顛末を話した。夫は一言「そりゃ良かった!」 何か物足りない。
どれだけ真剣に聞いていてくれたことかと・・・・・まぁいいか、運転中だもん、安全運転が第一! 
私は助手席で、もうルンルンだった。
次の練習日、先生にお礼を言った際、「ところで先生は?」「僕も七月です。」「エッ!同じ、
何日ですか?」その日は過ぎていた。
翌年の夏、私は先生のお誕生日に「ハッピーバースディ!」と、自作の革のキーホルダーを
プレゼントした。