アルバムの整理


 アルバムの整理をする。懐かしい写真がいっぱい。しかしそれらは自分ひとりの思い出だからと、
同じようなものから残したいものを選び、先ずは三分の一を目指す。
関西旅行一人旅のところには、各案内書から調べ上げて纏めた一冊のノートが添えられていた。
パラパラとめくったところ・・・・・・・よくまぁと我ながら感心しきりだ。旅の楽しさ、その半分は机上に
あり。私の哲学だ。 初めての一人旅!さぞロマンティクになっていたものと思われる。
下手くそな歌まで詠んである。たいそうな、歌でもあるまい。思いを綴っただけのものであろう。
恥はかき捨て!!!だ〜!
 
 常ならば 我が安らぎの刻(とき)なるを 旅たつ今宵 列を作れり    上野駅での列車待ち  
 よくぞ我 大和のくにを訪ねたり いざ、ひも解かん そのいにしへを  奈良駅
 先ず来る 旅の振り出し法隆寺  歴史になつかし 斑鳩の里      法隆寺  
 いにしえの 移りを知るや登り龍  塔より高く 我を連れ行け     五重塔  
 薬師寺の 塔の下にて思うこと  塔は立ちたり 我傍にあり      薬師寺東塔
 いつの日か 君と仰がん薬師寺の  九輪水煙 その美しき       薬師寺東塔  
 憧れし 西の京(みやこ)を歩きたり  道静かなり 春まだ浅し     薬師寺より唐招提寺への道  
  東京(ひがし)にて 君と語りし大和路を 一人往く身に 風は冷たし   薬師寺より唐招提寺への道  
  書に読みし 唐招提寺に訪ねきて  しみじみ味わう 寺の静けさ    唐招提寺
 法華寺の 尼寺なるをその庭は  語るが如く 梅は香りぬ       法華寺  
 横笛の はかない恋のものがたり  聞けば淋しき 嵯峨の夕暮れ    祇王寺  
 日暮れて やっと着きたる大覚寺  静けき夕べよ 大沢の池      大沢の池  
 その昔 兵どもが戦える  宇治の流れに 歴史を読みぬ        宇治川  
 千体(あまた)なる み仏の前に立ちたれば  
            信仰(かみ)持たぬ身も 頭(こうべ)の下がるる  三十三間堂  
 将軍の 権力(ちから)のほどを 今ぞ知る  昔に響け 鶯の廊下    二条城  
 二条城 城の造りにいや勝る  そを、治めたる 人の偉大さ      二条城  
 魅せられて じっと見るなり石の庭  石は語らず ただ、じっと聴く  龍安寺  
 古池に 朽ちたる舟あり西芳寺  時雨れて更に 庭静かなり      西芳寺(苔寺)
 苔寺を 歩けばいつか雨やみぬ  なお、美しき ビロードの庭     西芳寺(苔寺)  

 ロマンチックな古都の旅を自分で演出していたらしい。そのようなのに憧れていたのだろう。
とにかく何処へ行っても、人は少なかった。懐かしい写真ばかりだが思い切る!
東山工芸店で買った鈴雛は、三百円とついている。吾唯足知の蹲が百五十円なり。驚いたのは上野駅の
列車待ちで並んだ時、貸し椅子があったらしく、貸し椅子、十円、と記録されている。(そんなの
あったかしら?)と全く覚えがない。拝観料も50円〜70円、入場券、タクシー代も150円、など
事細かに記されている。箸袋まである。これじゃぁ なかなか処分する気になれないのが当然。
写真だけは大分減ったものの、このノートは今回も見送りとして再び収めた。