或る日タイムスリップ


 日記帳もずいぶん少なくなった。アルバムと同じ、少しずつ処分しているから・・・
残っているのは特別の事柄があった年のもの。入学、卒業、成人、就職、出会い、別れ
格別の感動、感激・・・・・十七歳のときのが残っていた。目を通してみる。
今まで、この繰り返しで一つ二つと減っていった。今回は残るかポツになるか?・・・
我ながら信じがたい事実が記されていた。
「そんなことがあったの?」と、驚きやら、懐かしいやら、急にタイムスリップして
しまった私、あぁ、どうしよう。当時のことが頭から離れない。
高校一年の春から夏休みを経て、二年になる頃までの自分がそこにあった。そこには
或る先生の名がしきりに出て来る。ハンサムな数学の先生!
数学なのに何故かご挨拶は、「 グッモーニング ミスター ・・・・・!」だった。
映画【舞踏会の手帳】【天の夕顔】の話も聞かされた。ロマンティストだった。
私はその先生が好きだった。卒業の時は既に他校へ転校されていたが、転校された
当時は友達と二人、その男子校の学校祭へ遊びに行ったものだ。昨日のようにも思い出
される。そのへんのこと、悔しかったことはしっかりと覚えているのに・・・どうしても
解らないこと、お手紙のことだ。度々出てくる(先生にお手紙書いた)とか(お手紙がきた。嬉しい!)とか、いったい何なの? どんな封筒だったのかしら?
(便箋四枚書いた・・・)って、何を書いたの? 解らない。たったひと夏の間のことだ。
ましてや一通なりとも残っていないし・・・・・・「そんなことあったんだ〜」何だか急に
懐かしくなってしまった。お会いしてみたいなぁ〜 私のこと覚えていてくれるかなぁ?
大して出来のいい生徒じゃなかったし、それより六十年以上の御無沙汰で、今こんなこと
言い出すなんて、何とも虫のいい話である。
よく先生のお宅へ遊びに行ったのよ〜 土いじりのお好きだった先生のお家、広いお庭
だった。お留守のとき、「折角来たのだから」とお昼にお母様と二人、パンにジャムを
つけて頂いたことよく覚えているわ。 新宿へ映画を見に連れてって下さったし、あの時
上級生と会ってしまった。(マズカッタ!)
いろいろあった先生!六十数年ぶりに思い出したT先生!急に気になって仕方ない。
遠足で写した写真、河口湖でSさんと三人ボートに乗っているもの。夏の蓼科高原、
あの時はM先生もご一緒だった。M先生、眼帯していたのよね〜片目のジャック!
懐かしいなぁ〜  「先生!お逢いした〜い!」

 十年前にその気になり整理を始め、これを読んでいたら必ずやお会いできていたと、
残念でならない。でもね、若いうちは昔を懐かしむ・・・そんな気になんか、なれないのよ〜
又、なるのもおかしいし、やっぱりオトシにならないとね・・・・
        或る日、タイムスリップした私・・・・あぁ、どうしたらいいの?