ステレオグラムと遠近法の文献案内
ステレオグラムや遠近法に関する書を紹介します。
不十分ながら、なにかの参考になればと。
他によい本があれば、教えていただければ幸いです。順不同。

ステレオ感覚のメディア史
吉村信・細馬宏通=編著 ペヨトル工房 1994
図版、およびステレオグラムを参照しつつ、ステレオグラムをめぐるエピソードや考察を読むと、文字どおり、奥行きのある世界がひらけてくる。多彩な項目がそれぞれ短くまとめられていて、どうしてもさらにその先を知りたくなる。そんな本であります。
著者たちの対談が実に楽しそう。
幻想文学/ミステリファンの自分は、「黒死館殺人事件」に両目視に関する記述があるということを知って、かなり驚いた。「えっ」と思った方は各自確認のこと。
遠近法の精神史
―人間の眼は空間をどうとらえてきたか―
佐藤忠良・中村雄二郎・小山清男・若桑みどり・中原佑介・神吉敬三 平凡社 1992
絵画などにみられる遠近の表現を手がかりに、人と世界の関係をさぐる、といった内容。講義録というかたちで、読みやすい本です。
空間を描く遠近法
黒田正巳 彰国社 1992
遠近法の、しっかりとした知識を得たいと思ったとき、どこを探しても役に立ちそうな資料がありませんでした。建築パースの技法書などは、実用的な描き方だけしか載せていないことが多くて、その歴史や理論について触れたものは皆無。
でも、探せばあるのですねこういう本が。
西洋、日本の遠近法の歴史から、各種透視図法の紹介、さらに視知覚についてまで。ていねいに書かれていて、この一冊でかなりの知識を得られました。
パースが描けるだけでは満足できない人に。
遠近法の発見
辻茂 現代企画室 1996
遠近法の逓減比に関して、重要な指摘があります。
また、ルネサンス以前の距離点のない遠近法と、アルベルティやブルネルスキのまとめたルネサンス遠近法をはっきり区別し、前者に「天使の遠近法」というステキな名称を献じています。ちなみに後者は「地上の遠近法」。
逓減比(碁盤目を斜めから見たときに、先へ進むほど短くなっていく。この比のこと)の理解は、見事。疑問が氷解しました。
ビジュアル美術館
遠近法の技法
アリスン・コール、高橋裕子=監訳 同朋社出版 1993
遠近法で視る美術史。
美術史で遠近法といえばかならず出てくる、デューラーやパオロ・ウッチェロ、ダ・ヴィンチなどの作品から、はたまた、カメラ・オブスクーラやホイートストーンのステレオスコープなどの光学装置まで、オールカラーで紹介、その構造を検証する。
一見、子供向けの本かと思うが、そんなこともなく、楽しめます。
ビジュアル・ブックはこうあるべきでしょう。

遠近術
CD-ROMによる荒俣宏の奇想天外な遠近法
荒俣宏=責任編集 アスキー出版局 1995
遠近法を遊んでしまおうという、CD-ROM+BOOK。さすがにグラフィックは綺麗。
視覚の冒険
イリュージョンから認知科学へ
下条信輔 産業図書 1995
そもそも、RDS(ランダム・ドット・ステレオグラム)とは、単に見える見えないといったクイズに尽きるものではなく、認知科学の分野に新しい展望を開くものでした。
RDSの発明者、ベイラ・ユレシュ博士へのインタビューから始まり、視覚科学の最前線にいたる、実にスリリングな本。一部は小学館の「CG STEREOGRAM 3」に載ったもののようです。
象徴シンボル形式>としての遠近法
E・パノフスキー、木田元=監訳 哲学書房 1993
精神的意味内容が具体的感性的記号に結びつけられ、この記号に同化されることになる」その形式が、象徴(シンボル)形式。著者は、遠近法をそのような視点からとらえる。
それはいいのだけれども、本文を越える注がつくなど、やけに難解。
曲面遠近法についての記述が多い。遠近法・誤解と錯覚の歴史としても読めます。
光と視覚の科学
神話・哲学・芸術と現代科学の融合
アーサー・ザイエンス、林大=訳 白揚社 1997
光とは何か、その認識をめぐる歴史。ニュートンの光学、ゲーテの色彩論、相対性理論から量子光学までが、なぜか神学書のような雰囲気で語られる不思議な本。易しくバランスよい記述。個人的に、とてもお気に入り。
「どんな対象も、じっと観察すれば、私たちの内に知覚器官を作り出す。」
ゲーテは、こんなことを言っています。ちなみに、このHPの巻頭も、この本からの引用。
遠近法の誕生
ルネサンスの芸術家と科学
辻茂 朝日新聞社 1995
ルネサンス遠近法最初の作品とされるブルネルスキの板絵が、実は光学機器(投影装置)を用いたものだった。
つまり、遠近法は、理論からではなくて、暗箱(カメラ・オブスキュラ、つまりピンホール・カメラですね)による光学実験から生まれたものだ、というのが、本書の仮説。これまでの常識を覆す、なかなか大胆な仮説で、説得力もあります。
どうしてものがみえるのか
村上元彦 岩波新書 1995
視覚のしくみの解説書。神経細胞やら視物質タンパク質やら、ちと難解な部分もある。色覚異常(いわゆる色盲)についても、間違った情報を払拭できます。
鏡の中のミステリー
左右逆転の謎に挑む
高野陽太郎 岩波書店 1997
だれでも一度くらいは疑問をもったことがあるであろう、鏡の謎。しかし、これまでに、すっかり納得のいく説明を聞いたことがあっただろうか。
本書は、そのタイトルのとおり、鏡の謎を解明し、その現象を完全に説明する。
アフォーダンス
―新しい認知の理論
佐々木正人 岩波書店 1994
三次元空間や視知覚のことをつきつめて考えていくと、どうしても「人の目の曖昧さ」という壁に当たってしまうような気がする。しかし、それは初期設定として「完全な空間」を仮想してしまう故の、大きな誤謬なのではないだろうか。
アフォーダンス理論では、「環境」が最初にある。当たり前のことのようだが、近代科学の考え方では、理論が優先され、はみ出た部分は「誤差」として切り捨てられてきたのではなかったか?
ともかく、この分野の今後の研究には注目していきたい。
ステレオ日記
二つ目の哲学
赤瀬川原平 大和書房 1993
ステレオグラムの写真集である。いかにも立体!という押しつけはなく、日常のさりげない風物を撮っているのが、とても良いです。トマソン的(説明略す)物件もあり。日記もかなりおかしい。
僕もステレオカメラほしいなー。
新版 遊びの百科全書2
だまし絵
種村季弘・高柳篤 河出文庫 1987
新版 遊びの百科全書3
映像遊戯
広瀬秀雄・矢牧健太郎 河出文庫 1987
ステレオグラフィックス&ホログラフィ
―ザ3D―
安居院猛・中嶋正之 秋葉出版 1985
古典的なステレオグラムからホログラフィまで、立体映像の技術について、実用化一歩手前の、さまざまな手法を紹介。科学万博―つくば’85―を機に出版された本らしく、各パビリオンの映像技術を解説しています。また、手書きステレオペア、及びその作成装置なんていうのも載っていて、驚かされました。この本によれば、最初に手書き立体画(ステレオペア)が描かれたのは1600年頃(!)らしいが?
目玉の思想と美学
図像学入門
荒俣宏 集英社文庫 1998
美の図学
日本図学会=編 森北出版 1998
迷宮としての世界
マニエリスム美術
グスタフ・ルネ・ホッケ 種村季弘・矢川澄子訳 美術出版社 1966
澁澤龍彦の種本として、つとに有名。図版も多く、楽しい。マニエリスムにおける“加速された遠近法”、トロンプ・ルイユについての記述あり。
遠近法
絵画の奥行きを読む
小山清男 朝日選書 1998
西洋美術史の中の遠近法。とてもよくまとまっていて、入門書としては最適。
映像体験ミュージアム
―イマジネーションの未来へ
監修=東京都写真美術館 工作舎 2002
図版が多くて、お得。最近の動向もつかめる。年表が便利で、これは必携。
任意の点P
慶應義塾大学佐藤雅彦研究室+中村至男 美術出版社 2003
二枚絵の立体図版集。いかにも理系なテイストが楽しい。3Dは、シンプルなほうがかえって美しく見えるのだ。眼鏡付きの造本にびっくり。