Free kick
Date : 2000.11.24 00:52:00
J2最終戦浦和レッズ対サガン鳥栖。駒場スタジアム独特の大歓声の中で
ルシアノがゆっくりとペナルティースポットにボールを置く。西部が自分自身に
気合いを入れるかのように大声で何かを叫んだ。軽くうつむいてキックに
集中しようとするルシアノ。ゆっくりと助走を始め、キックモーションに
入る。ヤマをかけて横っ飛びした西部と逆の方向へボールが飛ぶ。駒場に悲鳴が
響く。ゴンッ。ボールはポストを直撃した。浦和の選手が安心できたのは一瞬だけ
だった。ポストから跳ね返ってボールにいち早くルシアノが反応し、押し込もうと
する。素早く起き上がった西部が懸命に体を投げ出すが、間に合わない。
しかしルシアノの蹴ったボールはバーを越えていった。スタンドにいた赤い
レプリカを着た観客が怒ったように叫ぶ。「リバウンドへの反応が遅すぎるぞっ!!」
別の観客は泣きそうな声でつぶやいた。「助かった。」
さて彼は何に「助けられた」のでしょう。ルシアノのキックミス?
いいえ、違います。正解はルシアノの判断ミスです。正確にはルールの認識が
不足していたのです。ルシアノがリバウンドのボールをゴールマウスに蹴りこんで
いたとしてもそれは得点にはなりません。ルシアノはリバウンドのボールに触った
時点でそれは「ファール」なのです。
説明に入る前にまずこれを知っておいて下さい。試合中に主審および副審にボールが
当たっても「人」に当たったとはみなされません。主審および副審は
試合中は「ピッチの上の石」と同じ扱いであり、ゴールポストやコーナー
フラッグと同じなのです。つまりこれから「誰かに当たらなければ」という
前提の「誰か」とは敵味方問わず選手のことを指し、主審および副審は含まれません。
さて話しをルシアノのプレーに戻します。ペナルティキックとは一種の
フリーキックです。つまりキッカーはボールが誰かに当たってから
はじめてボールに触れることができるのです。簡単にいえばフリーキックからは
ドリブルはできません。ルシアノがボールを蹴って(ペナルティキック)
からもう1度ボールを蹴る(リバウンドを押し込もうとする)までに
誰もボールには触れてません。だからルシアノのプレーはファールなのです。
ペナルティキックに限らず、ゴールキック、コーナーキックもフリーキックの
一種です。そしてフリーキックには2つ種類があります。それは直接フリーキックと
間接フリーキック。直接フリーキックは蹴ったボールがそのままゴールに
入れば得点と認められるFKであり、間接FKとはそのままゴールに入っても
得点にはなりません。誰かに当たって入ればゴールになります。
つまりペナルティキックは直接フリーキックです。コーナーキックも
直接フリーキックになります。誰も触らなくても得点と認められます。
ゴールキックは間接フリーキックです。直接ゴールに入っても得点と
認められません。ただゴールキックを相手ゴールまで蹴るには90M超の
キック力が必要となるので、現実にはまずありえませんが。
相手のファールによって得たフリーキックもすべて直接、間接の分類が
されています。ハンドは直接フリーキックになるファールであり、オフサイドや
ゴールキーパーへのバックパスは間接フリーキックになるファールです。
それ以外の反則はスタンドからは判断しづらいです。ただ判断するのは
主審なので主審のジェスチャーで直接か間接かを判断する
ことが出来ます。
間接フリーキックの場合、主審は腕を真上に上げます。オフサイド後の
フリーキックやゴールキックで主審が腕を上げているのに気付いて
いる人も少なくないと思います。対して直接フリーキックでは主審は
腕を上げません。ファールがあってフリーキックの場面で主審が手を上げて
なかったらそれは直接フリーキックです。
当然選手は蹴る前に主審の腕を確認してから、蹴るわけですが、見落して
間接フリーキックなのに直接ゴールを狙って蹴る選手もいます。もちろん
入っても得点にはなりませんが、ゴールキーパーが手を出してしまって、
さらに手を弾いて入ってしまえば誰かに当たったということになり得点になります。
柏レイソルにいたストイチコフはブルガリア代表として参加した94年の
アメリカW杯で間接フリーキックを直接と勘違いし、直接ゴールに蹴りこんでしまい、
さらに得点と勘違いし、喜んでスタンドまで猛ダッシュしてしまうという失敗を
やっています。普通の選手だったらW杯という「本番」でこんな初歩的な
ミスを犯した上勘違いして猛ダッシュしてしまったらそれ以後は良いプレーは
ほとんど出来なくなるでしょうが、ストイチコフは違いました。チームを
ベスト4まで導いた上、大会得点王にまでなってしまいました。やはり
スターというのは常人には理解できない精神を持っているようですね。