Back still growing up

 1999年8月7日(土)18:00キックオフ
於 新潟市陸上競技場
アルビレックス新潟 対 コンサドーレ札幌
 
暑い。いま全国でもっとも暑い都市新潟。最高気温が35度を越える日が1週間以上続き、今日も夕方6時とはいえ、軽く歩く程度で汗がでてくる。コンサの選手にとって大きな脅威とあるはずのこの暑さだが、当然アルビの選手にも大きな脅威である。
苛酷なスケジュール(徹夜のうえに鈍行で新潟入り。37度の炎天下の下、1時から3時間もサッカーをやっていた。)のため、すでに足元がおぼつかない、コンタクトレンズもなかなか視力を上げてくれない。
頭もボンヤリしながらスタジアムへ到着。噂のスタオレ作戦が決行されたらしくバックスタンドにはオレンジ袋を持った人達が見える。ゴール裏へ行くといつもとは違い、ドラムとコールリーダーが上段にいる。話しを聞くと今日は上からやってみようということらしい。それなら僕も上段へ席を確保。
そしてスタメン発表。コンサの方は前回やられた吉原や名塚、アシスを危険人物と判断。そしてアルビ。GKは前節につづいて木寺。いつものDF、MFのあとに今回の2トップは前節に結果を出した鳴尾とシンゴ。このコンビ、悪くないけど高さという面で不安が残る。そしてサブには珍しく島田、サウロと2人のFWが控える。
キックオフ。今回は前半アルビがこっち(アルビゴール裏)に攻める。前半はコンサがペース握ってるかなと思った瞬間、コンサの選手が前線の吉原へロングパス。なんとマーカーのセルジオが完璧に裏を取られている。コラー、セルジオー。早くも気抜くなー。そして木寺が前に出るのか出ないのか迷ってる間に吉原にヘディングシュートを打たれる。ボールは木寺の頭上を越え、放物線を描きながらポストに当たって木寺の胸におさまる。助かった。ただでさえ暑いんだからあせらせないでくれよ。ホントに。
そしてさらにコンサが中盤でキープ。しかし、さっきのプレーが印象に残っているのかラストパスがいつもロング。さすがにもう警戒済みのアルビDF&木寺が簡単に処理。
こっちはシンゴが前線で動きすぎてうしろからのパスのタイミングがずれる。特に中野からシンゴへのパスが立て続けに相手に渡ってしまう。そしてシンゴが左に動きすぎて鳴尾が左でボールを持っても中央には誰もいない。後ろに戻すかとおもいきや鳴尾がDFをかわしてミドルシュート正直ビックリした。鳴尾がヒールキックするより驚いた。なんだよ、打てるじゃん。これはGK軽くファンブルするもキャッチ。
20分過ぎからじょじょに今度はアルビペース。リカルドのFK、CKでコンサゴールにせまるものの相手DFも堅い。なかなかシュートまでもっていけない。前半終了間際までかなり押し込み、最後には瀬戸のボレーがGKの脇を抜けるもののDFがかろうじてクリア。さわんなよー。邪魔すんなよー。うまくインパクトしてたのに。もう。
前半終了。なんとか前半のうちに点とりたかったな。先制すれば勝ちなんだから。でも先制されると、いや考えたくない。とにかく7時近くになっても暑い。前半からケガで試合が止まる度にほとんどの選手が給水してる。今日は選手ツラいだろうな。ただ声だしてるだけで汗でTシャツの色が変わるくらいの暑さだから。周りも飲物を買いに行く人が多い。
後半開始。とりあえず、点とられないようにセーフティでセーフティで行こうって思った瞬間、あ〜、ビジュのミドルシュートが決まってしまった。高橋が頭でクリアしきれず、木寺も反応するもののゴール右隅にやられた。大分のときといい、川崎Fのときといい、なぜホームだとこんな不運なシュートを決められてしまうんだ。まだ後半5分。あと40分もある。まだまだあきらめるなよって叫びながら、また負けてしまうのかとよからぬ考えがちらつく。選手を信じなきゃいけないのに、いままで見せられてきた試合が脳裏をよぎる。押し込むんだけど、点が取れない。むしろスペースを与えて追加点を取られる。ダメだ。だめだ。集中しよう。大きな声でアルビを応援しよう。これしか僕にできることはないんだから。
アルビのキックオフ。コンサの選手が当然のように出足の良いチェックを始める。もちろん、コンサも分かってるんだろうな。先制すればアルビは弱いって。後半から入った島田の動きが悪い。コンサの交代で入ってきた村主の動きがいい分、余計目立つ。全体的にコンサの選手の方がスタミナがあるようだ。アルビは上がれず、下がれずの状態になりつつある。そして負けてるときのお約束になりつつある木沢の前線でのボール待ち。いつもはボールが回らないのに今度はうまく通った。チャンス。前半にケガで一度倒れている木沢。無理にドリブル突破するなよ。さあ、センタリングだ。あれ?なんと木沢がスルーパス。そこへ走り込んだのはシンゴ。そしてシュート。ネットがゆれる。ゴールか?サイドネット?ゴールと信じたい反面、ここでサイドネットという場面はいやというほど見てる。しかし、主審がゴールの合図をしているのが見えた。同点だ。
いままで公式戦22試合やって、先制されると1点取り返すことがどうしてもできなかったアルビがとうとうやった。呪縛が解けた。盛り上がるゴール裏。とにかく喜び爆発。ゆきやこんこんをやるのを忘れるくらいの大爆発。しかしまだ同点。まだまだ気は抜けない。ここからお互いにチャンスを作るもののなかなか決定的なシュートが打てない。ここでリカルドに代わってサウロ。ここでクセ者の登場に精一杯のサウロコール。頼むぞ。サウロの個人技でコンサに一泡吹かせてくれ。しかし今日は悪いサウロの日だった。無理に突破を計り、ボールを奪われる。そうなるともうあとはお前頼みだ。頼むぞ。シンゴ。前線でシンゴがボールキープ、フェイントで相手をかわし、もう一人かわしてシュート。いったか?しかし惜しくもポストのわずかに外側。
ここからコンサが押し込みはじめる。アシスから吉原へのセンタリングになぜか、セルジオ、高橋が空中戦でかぶる、かぶる。木寺のファインセーブに助けられる。そして、後半終了。
さぁ、延長だ。コンサにとってはお馴染みだろうけどアルビにとっては2節の山形戦以来2回目。体力的に大丈夫なのか?見てみるとアルビの選手は座り込んで水飲んでるのに、コンサの選手、水飲んでない。やっぱ、去年Jを経験してるだけあって、体力には自信がありそう。この時点で口にだせないけどかなり弱気。「負けるかも。」心の中でつぶやく。そこでメインから電話連絡。「コンサのサポの声の方がでっかいぞ。」
むむむ。コンサはバックに陣どってる分メインに聞こえやすいのは分かる。でも、ここは新潟。ホーム新潟。かなり負けず嫌いこころに火がついた。こうなりゃ死ぬ気で応援だ。
延長戦は前半はコンサがこっちに攻めるみたい。シュート打ってもはじきとばすくらいの勢いで叫んでやる。延長になってから両チームともラインを押し上げず、少ない人数で攻撃してカウンターさせない作戦を取る。後半、投入された関が走る、走る。左サイドを中心にかなりかきまわされる。そしてセンタリングをなぜか吉原が頭で折り返して関がシュート。悲鳴が上がる。しかしシュートはわずかにポストの外側。そしてまたもや左からのセンタリング。そこへ走り込むのはまたもや吉原。しかも完全にノーマーク。マズい。正直負けを覚悟した瞬間。なんと木寺がスーパーファインセーブ。ボールをゴールからかきだした。なんという反射神経だ。すごすぎる。そして延長前半が終了。
延長戦はハーフタイムがなく、そのまま後半へ突入。しかしここまで熱い試合を見せられるとこっちもかなりの疲労。とりあえず、水分補給と座り込むとコールリーダーの拡声機から「みなさん、座らないで、選手達はがんばっています。あとすこしです。俺達の応援で新潟を勝たせましょう。みんな、もっと中央に集まって、そしてかたまって声をだしましょう。」
無論、中央近くにいながらさらに中央へ寄った。そして振り返った瞬間自分の目を疑う。バックの観客が続々とこっちへゴール裏へ向かって来てる。そしてメインの反応を聞いてもかなりの数が集まったに違いない。もうみんなの願いはひとつ。勝ってくれ。アルビレックス。
はじめてタオルマフラーを振り回すのに気をつかうくらいの密集度での応援。かなり感動した。これがどれくらい選手に通じたか分からないけど、その場にいた人は感じとったんじゃないかな。選手をサポートしてるってことが。もうこの雰囲気は活字にできません。残念だけど。
後半、両チームともチャンスがありながら結局ノーゴール。引き分け。特にアルビは水越のシュートがポストにあたるなどかなり惜しかったんだけだけどなぁ。でも引き分けたことに怒ってる人はいなかったんじゃないかな。もちろん、引き分けに満足した人もいないと思うけど。僕としても初めての引き分けになんとも言えない気持ちに困惑。しかし、試合内容は素晴らしかった。お互い、死力を尽くした総力戦。今年1番の好ゲームの声も聞こえる。僕もそう思う。とにかくすごかった。
試合後、こんな声が聞こえた。
「こういうのがあるからサッカーは生で見るに限るよ。明日の新聞じゃ惜しくも引き分けの1行になっちゃうんだよ。このすごい試合が。」
7時間かけて新潟行って本当に良かった。心からそう思った。

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