Back still growing up

 1999年10月2日(土)14:00キックオフ
於 新潟市営陸上競技場
アルビレックス新潟 対 川崎フロンターレ
 
10月だっていうのにこの暑さはなんなんだ。今日の新潟の最高気温は32度。真夏とかわらない暑さ、基本的にはサッカーを見るなら寒いより暑い方がいい。でもこの暑さにくわえ、ゴール裏への日射しの強さは半端ではない。
暑さ対策のためにいつもの500mlではなく2Lの飲物を買う。スタジアムに入ると日射しにくわえて、向かい風も相当強い。厚別に行った人から厚別もこれくらいの風は吹いていたと聞き、改めて厚別へ行かなかったことを悔やむ。今回はスタジアム入りが遅かったのでスタメン発表はすでに終わっていた。スタメンは前節と同じく吉原、木沢、柴、高橋、中野、秋葉、筒井、瀬戸、水越、シンゴ、島田でサブが木寺、藤田、式田、リカルド、鳴尾。厚別では島田が好調だったときくが、鳴尾のスタメンが減ってきたのは少し寂しい。
フロンターレはスタメンに前回の新潟での試合で点を取ったツゥットと岩本輝がいない。しかし、順位的には2位しか離れてないが、勝ち点で大きく差をつけられているチームだけに層の厚さもアルビの比ではないはず。
キックオフ。いつも通り前半はアウエーチームゴール裏に攻めるアルビ。そしてこっちに向かって攻めてくるフロンターレ。フロンターレは思ったほどサイドをつかってこない。フロンターレといえば、ウイングバックを最大限に活用し、目一杯サイドをつかって攻めてくるチームだと思っていたが、前回の等々力での試合から反省したのか、中央からの攻めが多い。しかし、馴れない中央からの攻めはぎこちなく、結局ティンガの個人技頼みになっている。これなら守りやすい。持ち過ぎるクセのあるティンガなら抜かれてもフォローしやすい。
アルビは3人のボランチをおく4ー5ー1。これは中盤でチェックはしやすいが、FWが1人のために攻撃に結びつけづらい。しかも得点力のあるシンゴが中盤ではシンゴの良さがでない。逆に悪い面がでてくる。サイドバックから中盤で後ろを向いてボールをうけるとドリブルで加速するまで時間がかかり、相手にすぐ囲まれてしまい、削れられたり、すぐにボールを奪われてしまう。またシンゴが左に張り過ぎて、中野のオーバーラップするスペースを消し、右サイドの攻撃的MFの水越が中央へ引っ張られて、バランスを崩す。また、左のボランチの筒井もあまりそのことを考えずにポジショニングするために左サイドはとても人が詰まりすぎて攻撃が組み立てられない。
右サイドはケガの巧妙か、瀬戸、木沢がうまくスペースをつかい、こちらからの攻めが目立つ。しかし中央へおりかえしてもフリーの島田のシュートはワクの外。ワクを外してしまっては点は取れない。今度は瀬戸が同じような位置でシュートを打つが、これも同じようにシュートはワクの外。点の取れる気がしない。
フロンターレもあいかわらず、チャンスを作れず、結局サイドを使い始める。しかしサイドからセンタリングではなく、サイドからショートパスをつないでゴール前まで持ってくる作戦。さすがに4回目ともなると工夫しているのが分かる。一方、アルビは工夫の跡がまったく見られず。完全に手詰まりの状態。フロンターレがサイドからのショートパスでペナルティエリアの角くらいでティンガがフリーとなる、シュート体勢に入る。間一髪で柴がスライディングタックルでクリア。その後も中央へ折り返されたボールを木沢がギリギリでクリア。ちょっと危ない雰囲気がただよいはじめる。
20分、柴がマークしていたフロンターレの選手が一瞬のスキをついてドリブル突破。柴が完全に振り切られ、カバーに来た水越がななめ後ろからややファール気味にチェック。ここはファールか、流すか審判によって違うとは思うが、この場面はしっかり笛を吹かれる。ゴールまで30M弱の直接FK。たしかに安心できない距離だが、この風の強さならワクに蹴ることすら難しいと思った。フロンターレのキッカーは久野。右足でカーブをかけたボールは壁を越えた時点で失点を覚悟したくらいのきれいに決まった。その瞬間だけ久野に味方するように吹いた風がうらめしい。この場面で吉原がどこか負傷したらしくドクターが走ってきていたらしい。あまりに見事なFKで失点してしまったので僕は気が動転して、吉原の負傷に気付かなかった。その後すぐにピッチ脇に木寺が立って、20番交代が表示されたときにはじめて吉原の負傷に気付く。これで早くも交代枠をひとつ使ってしまった。もともと交代が決して早くない監督だけにこれは大きなダメージだ。
その後はフロンターレが守備位置をかえて、アルビがボールを奪うとハーフウェイラインまで下がって守りはじめる。これもアルビ対策のひとつだろう。引いてくる相手にとても弱いというのもすでに研究済みらしい。デェフェンスラインから島田めがけて放り込んでも必ず弾き飛ばされてボールを奪われる。フロンターレは追加点より、とりあえずリードを保って前半を終えるつもりらしい。この流れをかえるための選手交代が行われる様子はまったくない。せめてゴール裏からでもと、ゲットゴールを繰り返すが風上のためだろうか、声が小さすぎるのだろうか、試合の流れがかわる気配はない。
このまま、前半終了。なんともいえないストレスのたまる試合。お互いに覇気が見えない。余裕を持って1点で逃げ切ろうとする相手に必死で立ち向かうことを要求するのは高望みなんだろうか。この試合の重要性を監督は、選手達は分かっているのだろうか。
ハーフタイムの間、ピッチでは木寺以外のサブの4人がシュート練習をしている。つまり、後半最初からの選手交代はないということ。思い余ってゴール裏から鳴尾コールが連発される。このコールの意味を知ってか、めずらしくあまり笑顔ではなく真剣な面持ちで手を振ってくれる鳴尾。
後半が開始される。今度はこっちに向かって攻めてくるアルビ。早速あおりつづけるゴール裏だが、試合の流れはかわらず。あいかわらずやる気がみえない。勝つ気が見えない。球際で負け、競り合いで負け、ボールを追わない。それを主将みずからが率先してやってどうするんだよっ!木沢っ!
あいかわらず、センタリングはあげずにショートパス主体で攻めてくるフロンターレ。徹底している。ここで絶対負けられないという気持ちがこっちまで伝わってくる。ひとつひとつのプレーを正確に、丁寧に丁寧につないでペナルティエリアの中央まで持ってくるその選手にアルビのDFが2、3人でチェックにいくがボールを奪えず、軽くうかしたパスを中野とティンガが競り合い、こぼれ球を蹴り込まれる。何やってるんだよっ!
ここで式田が筒井にかわって投入。札幌戦で初ゴールを上げた式田。入団してから試合に出場するたびに伸びているのが分かる。プレーのひとつひとつに自信が感じられ、ここで自分がなんとかしようと走り回る式田に精一杯の期待を込めての式田コール。そしてまったく仕事の出来てないFWに鳴尾を入れろ、鳴尾を出してくれと鳴尾コール。試合にでてない選手のコールというのは初めてじゃないだろうか。これで決めたわけではないだろうが、ここで鳴尾がユニホームを着ているのが見える。そこで交代は島田かとおもいきや、中野?なんと左サイドバックに代えてFW鳴尾投入。永井監督の采配とは思えないほどの大決断。
ここで0ー2で負けるのも、さらに失点されても同じ。それならわずかでも同点、逆転の可能性にかけるということなのだろう。その決断。とてもうれしい。けどもっと早かったらもっと良かった。
ここでさらに盛り上がるゴール裏。鳴尾コール連発にくわえ、島田を叱咤激励「島田のゴールが見たい」コール。そして新コールなのだろうか、アルビゴール裏では初めて聞いた「ララララー♪ララララー♪ララララッラッララー♪」を連発。
このコールに応えてくれたのか、式田、鳴尾のチェックからボールを奪い、長めのボール主体で攻めはじめる。やはり2トップの方が攻めやすいうえに、木沢も上がりやすい。ボールがどんどん回り、フロンターレがあきらかに押し込まれてパニックになってるのが分かる。そこからCK、FKのチャンスにくわえ、鳴尾のロングスローで攻め続ける。
中盤からのロングパスを鳴尾が左サイドでうけ、DFを完全に振り切る。シュート体勢に入る鳴尾に思わずユニホームをひっぱる川崎のDF。しかし鳴尾は多少バランスを崩しながらも持ち前の下半身の強さで強引にシュート。GK浦上の脇を抜けるがポスト直撃。悲鳴が上がる。しかしそこに島田が詰める。もうゴール前には誰もいない。数Mの距離。でもボールは島田の股を抜ける。島田ー!これでも入れられないのかー!だけどさらに式田が詰めてシュート。DFに当たってコースが変わって浦上が逆をつかれゴール。やった。1点返した。あと1点で同点だ。
残り時間が15分強。スタジアム全体が盛り上がっているのが分かる。これならいける。追い付ける。誰もが信じていたはず。それくらい押し込んでいた。いつのまにやら柴がセンターフォワードの位置に入り、鳴尾、島田と3トップになり、木沢がトップ下に入る。DFは高橋、秋葉の2バック。完全に勝負に入った。負けられない。ここでようやく選手から気持ちが伝わってきた。
中盤まで圧倒的にキープしながら、風の影響だろうか、ラストパスがぶれる。こういうときだからこそ丁寧にやってほしいのだが、FKでさえもミスキックになってしまう。何回か受けるカウンターも秋葉と高橋で食い止め、木寺が飛び出してクリアしている。時間が刻々と流れ、早く1点と焦りの色がでてきた瞬間。フロンターレの攻撃、右サイドから低めのセンタリングを伊藤彰がニアで合わせる。決して威力があったわけではないが、木寺の脇を抜けてしまう。3点目。遠い方のゴールだっただけにはっきりと見えるわけではない。だからこそ信じられなかった。まさか、ウソだろ?
しかし、気をとりなおしてキックオフ。さらに攻めるしかない。気落ちしている時間はない。残り時間は5分強。5分で2点返さないと負ける。とてつもなく可能性が低くなったが、あきらめたら終わりだ。さらにゴール裏からあおりつづける。しかし時間は信じられないほど早くすすみ、ロスタイムの表示がでてまもなくティンガが木寺と1対1になり、冷静に左スミに流し込まれる。4点目。終わった。
そしてキックオフしてすぐに試合終了。1ー4。結果的に最高失点となった。そしてまたもやホームでの敗戦。
ここでゴール裏のコールリーダーから「ホーム新潟でこれだけふがいない試合を見せられてみんな拍手できるのか。おれは拍手しないぞ。ダメなときははっきりブーイングしよう。」ということをスピーカーを通して言った。こっちへ歩いてくる選手達。ブーイングが始まった。でも僕は拍手をした。コールリーダーの言うことが絶対じゃないし、僕はそこまでふがいない試合だとは思わなかった。拍手とブーイングが半分づつくらいだったときに、さらにコールリーダーがスピーカーを通して「こんな試合でも拍手をするのか。なんでもかんでも拍手するのはやめよう。」ということを言った。その場が静まった。しかし前段の若い男性は拍手を続けた。そしてはっきりとは聞き取れなかったが「俺は選手達は頑張ったと思ったから拍手をする。なんで頑張った選手達の拍手をすることが悪いんだ。」ということを多少荒っぽく言った。コールリーダーは何も言い返せなかった。そしてコールリーダーはその場へ座り込み、背番号0さんがその男性のところへ説明しに行った。僕はその男性の言い分が正しいと思い、コールリーダーの脇に行ってそのことを話した。コールリーダーは自分の考えが正しく伝わらなかったことにとても気落ちしていて僕の話しを聞いてくれていたかは分からなかったけど。そこへゴール裏で有名な初老の男性がスピーカーを持ち、言った。「みなさん、マイケル、イグナス(去年までアルビに在籍していた2人の外国人選手の名前)コールをしましょう。」誰もが呆れて声がでなかった。当然、それは周りの人が止め、そしてさっきまでの緊張感もなくなった。そしてコールリーダーと若い男性が話し合っているのを見ていた。さんざん言われてきたゴール裏の意識を変えるということを考えながら。

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