Back still growing up

 1999年11月21日(日)13:00キックオフ
於 新潟市営陸上競技場
アルビレックス新潟 対 FC東京
 
試合開始直前まで降っていた雨があがり、キックオフを待っていたかのように太陽の日射しがピッチを照らす。雨を含んだ芝は非常に美しい緑色に輝き、舞台が整ったことを知らせてくれる。メインスタンドはほぼ満員。アルビゴール裏にいつもより多くの人が足を運び、東京からも大勢のサポーターが詰めかけた。両チームに出場停止の選手はいない。ほぼベストメンバーでのぞむリーグ最終戦。3月から始まったJ2もこの試合で終わる。いや、終わってしまう。どんなに名残惜しくとも。
キックオフ直前にスタジアム入り。アルビのスタメンは吉原、木沢、セルジオ、高橋、中野、秋葉、瀬戸、水越、リカルド、シンゴ、鳴尾の11人。そしてサブは木寺、柴、筒井、式田、サウロ。セルジオとシンゴがケガから復帰している。対する東京のスタメンは鈴木、藤山、小峰、サンドロ、梅山、アウミール、浅利、奥原、加賀見、佐藤由、アマラオ。
東京は前節仙台に敗れ、自力での昇格がなくなった。アルビに勝って、さらに大分が負け、もしくは引き分けで東京が2位となり、J1昇格となる。とにかく東京は勝たなくてはいけない。
ここ7試合で1勝6敗、そしてアルビとの対戦成績は3戦全敗、1点も取れていない東京。そして対戦相手のアルビは現在4連勝中。引き分けをはさんで5連敗中の山形を得意のホームにむかえる大分はここ7試合を5勝2敗。前節で2位となっているので延長でも勝てば昇格となる。
データ上では完全に東京が不利。昇格には奇跡を起こすしかない。しかし奇跡はそう簡単におきるものではない。ただ、奇跡は絶対におきないというわけでもない。
完璧に近い舞台作りではあるが、完璧ではなかった。試合の演出者はのちに評判通りの実力をみせることとなる。
キックオフ。最初からどんどん前からプレスをかけてくる東京。絶対に負けられない。そんな闘志を全面に押し出して攻めてくる。
対するアルビはゆっくりとラインを下げつつ、じっくりと守りに入る。過去の3試合もこんな展開だった。攻め続ける東京。守りつつ、少ないチャンスにカウンターからゴールを狙うアルビ。
アマラオにはセルジオが完全にマンマーク。3試合とも完璧に抑えているからだろうか。セルジオの表情には余裕すら感じられる。
東京サポーターの目の前でロングスローを投げようとする鳴尾には容赦ないブーイングが浴びせられる。
東京は右サイドの佐藤由をつかってサイドから崩そうと試みるが、中野が体をはって突破をくいとめる。
アルビはほとんど攻めることができない。最終ラインでボールを奪ってもボランチの秋葉、瀬戸が完全にマークされていて前線にロングボールを蹴ることしかできない。そのボールは簡単にサンドロがはじきかえす。
佐藤由にサイドを突破され、センタリングをあげられる。そのボールにあわせるはアマラオ。しかしヘディングシュートは惜しくもポストの脇をぬける。
その数分後、今度はアルビのオフサイドトラップの裏へ奥原がうまく飛び出し、吉原と1対1の形を作りかけるが、トラップをミスし、そのまま吉原にとられる。
対するアルビはほとんど攻め手がない。東京の激しいプレッシャーで前線はおろか中盤でもボールをつなぐことができない。最終ラインからのロングパスのみでは東京の守備は崩れない。
左サイドは由紀彦の突破を警戒しすぎ、藤山が上がってきたときにマークにいく選手がいない。縦の突破を警戒した秋葉が振り切られ、中野もかわされ藤山がペナルティエリアに入ってくる。そしてシュートではなく、右サイドの由紀彦にスルーパス。完全にフリーの状態でボールをうけた由紀彦は冷静にゴール前の加賀見へつなぐ。ボールをうけた加賀見はうまく体を反転させ、シュート。吉原は完全にセルジオがブラインドとなってシュートが見えなかった。飛ぶこともできずに簡単にネットを揺らされてしまう。東京が先制。0ー1。
しかし、まだ前半30分。残り時間はまだまだある。シンゴ、鳴尾とつながったボールがまたシンゴへつながる。そして東京DFのスライディングタックルを直前でかわしセンタリング。水越がヘッドで合わせるが、ボールはおしくもバーの上をぬけていく。
そして前半が終了。ちょっと気になるのは基準の見えないジャッジを下す主審。評判通りの実力をみせる。前半はへんにファールを流し過ぎていた。この重要な試合での唯一の汚点となったのは主審だった。ジャッジ次第で非常によいゲームになっただろうに、今日の主審はこの試合には完全に役不足だった。
後半が始まる。圧倒的に攻め込む東京。ボランチを最終ラインにいれてまで守り切るアルビ。そしてチャンスとみるやときおりするどいカウンターをみせる。
じょじにカウンターをしかける余裕がないくらいまで攻め込まれる。必死で追加点を狙う東京。
そこで永井監督が選手交代。水越に代えて式田、シンゴに代えてサウロを投入する。これでリズムがかわった。
サウロが左に大きく開き、ウイング的なポジショニングをとる。そして足元にもらってから、ドリブルで果敢に突破を狙う。そして東京DFに倒されて得たFK。キッカーはリカルド。ちょっと遠めのこの位置はインステップでゴールを狙うがポスト脇のドリンクボトルを直撃。惜しくもゴールならず。
木沢もやや高めのポジショニングをとり、右サイドからスピードを活かした突破をみせるが、センタリングは東京DFにおいつかれ、なかなかあげられない。
前半とは逆に攻めるアルビに、じっくりとカウンターを狙う東京。またもや由紀彦の突破からアマラオがヘッドでゴールを狙うが、シュートははるかバーの上。
そしてまたもやサウロの突破からFKを得る。今度はペナルティエリアのすぐそばでのFKだ。東京の選手が主審に異義を唱える。そして主審がアマラオに警告。最終戦ならではのテクニックで警告を逆手にとってリカルドにプレッシャーをあたえてくる。
独特の短い助走から右足を振り抜くリカルド。しかしボールは惜しくもバーを直撃。なかなか点がとれない。
そしてここで永井監督。リカルドに代えて柴を投入。そして柴をCFにいれてパワープレーに入る。
前線にターゲットができ、さらに圧倒的に攻め込むアルビ。東京が鏑木を投入するも、リズムはかわらず。
しかし、チャンスを止めるのは東京DFではなく、主審。柴が完全に頭抜け出してヘッドで折り返すも。それがなぜかファール。ため息と怒りが混ざった声がスタンドから聞こえる。
リカルド交代後、式田がCKのキッカーとなったが、ボールにスピードがなく、簡単にクリアされる。CKよりサイドから切り崩してからのセンタリングからチャンスを作る。ロスタイム。柴のヘディングシュートはかろうじて鈴木が指先でかきだす。
そして試合終了。0ー1。東京が勝ち、アルビは負けた。
普段なら悔しさがとまらないのだが、今日はちがう。一言で言うなら「敵ながらあっぱれ」という気持ちだろうか、あれだけ華麗な攻めができるチームに1点で抑え、最後まで戦ってくれた選手を僕は誇りに思う。
3月に始まったJ2もこの試合で終わった。まだ実感はない。来週には天皇杯もあるし。天皇杯が終わってから気付くのだろうか。シーズンが終わってしまったことを。いまはJ2を楽しめたことによる満足の方が多い。そしてこれだけ楽しませてくれたチームに感謝したい。僕はアルビレックス新潟を誇りに思う。そしてこれからもずっと応援していくだろう。J2は終わったが、アルビレックスは終わってない。これがリーグが終わったという実感を感じない理由なのかもしれない。

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