Back still growing up

  2000年3月12日(日)14:00キックオフ
於 大宮公園サッカー場
大宮アルディージャ 対 アルビレックス新潟
 
 午前中に降っていた小雨がやみ、雲の切れ目からときおり太陽が顔を覗かせる。薄い曇り空の下、大宮公園サッカー場でアルビレックス新潟の'00J2のシーズンがはじまる。
 まだキックオフまで1時間以上あるがぞくぞくと観客がスタジアムに入ってくる。そこにはJ1のような殺気だった雰囲気もJFLのような寂しさもない、J2独特ののどかな空気がスタンドをつつむ。両チームのチームカラーはともにオレンジであり、両方のゴール裏を中心にスタジアムがオレンジに染まりつつある。
 大宮公園サッカー場には専用サッカー場であるのでピッチとスタンドの距離は非常に近い。試合前の練習をする選手達を間近でみることができる。木沢、セルジオら去年から見慣れた顔に服部、神田といった新加入の選手が混ざり、アウタイルコーチの指示にしたがってアップをしている。ジャージの背番号を見ながら遠征メンバーの16人を確認する。高卒ルーキーの本間を除き、ほぼ予想どおりのメンバーである。マルコは登録が間に合わず開幕戦には出られないらしい。
 簡単な開幕セレモニーの後、スタメン発表がはじまる。(スタメンおよびフォーメーションは「採点・寸評」「記録」を参照)前日にスポーツ新聞で予想されていたメンバーとまったく同じ。DF、FWには1人、MFには2人の新加入選手が入る。連携はどうだろうか。対する大宮も岡本、氏家といったなじみのある名前に名古屋から移籍の野口、ブラジルから加入したジョルジーニョの名前が上がる。
 キックオフ。最初から早めのプレスをしかけてくる大宮に対し、新潟はややおさえめか。右サイドのFKからゴール前に放りこまれたボールはセルジオがヘディングで大きくクリアする。積極的にラインを押し上げ中盤をコンパクトに保ってくる大宮にことごとくボールを拾われ、攻め込まれる時間帯が長い。セルジオの中途半端なバックパスを岡本が奪い、独走しかけたところを木沢が思わずひっかけファール。早くも木沢が警告をもらう。
 大宮に比べ、新潟は非常に連携がよくない。DFはともかくボランチを含めた中盤、および2トップはまったく機能しない。新潟は神田のロングキックしか前線にボールを運べないそのロングキックも服部、鳴尾がことごとく競り負け、まったくチャンスにつながらない。
 大宮は早めに野口、ジョルジーニョにボールを預け、中盤から飛び出してくる選手がゴールを狙う作戦らしい。ゴール前のセルジオとジョルジーニョの競り合いはとても激しく、ときおりPKをとられそうなプレーも見られる。最初に決定的なチャンスをつかんだのは大宮。DFラインの裏に抜け、パスをうけた野口がキープし、フリーの岡本にパス。インサイドでコースを狙ったシュートはワクをとらえきれずにバーを越える。頭を抱える岡本。胸をなでおろすゴール裏のサポーター。
 ここまでまったくいいところがなかった寺川から大きなチャンスがうまれる。寺川が左サイドからGKとDFの間にセンタリング。鳴尾がつっこみ、こぼれ球を鳴尾がヘディング、ボールはGK白井の頭上を越えるが間一髪でDFにクリアされる。
 今年は右のCKはシンゴ、左のCK、FKは堂森が蹴るようだ。シンゴはあいかわらず良いボールを蹴るが、堂森はあまり精度、威力ともによくない。ゴール正面のFK、堂森の蹴ったボールは力なくポストの脇を抜ける。
 前半は鳴尾のシュート以外ほとんどいいところがなし。覇気が感じられず、連携も最悪、ボールがまったくつながらない。失点も時間の問題と思っていた矢先、大きな縦パスに野口が反応し、一気に独走される。セルジオが懸命に追いかけるが、センタリングを上げられる。中央でフリーになっていたジョルジーニョにヘディングで合わされ、先制される。CBの2人の連携の悪さを完全につかれたかたちとなった。
 その後も攻め込まれ続けるが、なんとかしのぎつづけ前半を0ー1で終える。
 連携の悪さは仕上りが十分でなかったことの証明であろう。前線、および右サイド、そして中盤はまったくといっていいほど機能してない。それにもかかわらず選手交代をする気配は感じられない。ハーフタイム中、ピッチでは5人のサブメンバーが練習をしている。(ハーフタイムに交代がある場合は交代選手はピッチの練習に参加しない)連携以上に悪かったのは選手の気持ちである。勝とうというよりボールを奪うという気持ちがまったく感じられない。いいように大宮にボールをまわされ、チーム全体が舞い上がってしまっているのが分かる。唯一の例外は神田くらいだろうか。彼だけは落ち着いてプレーできている。これが経験というものだろうか。だが残念ながら神田から舞い上がった選手達を落ち着かせようとする気配は感じられない。
 選手達がピッチにでてきて後半がはじまる。両チームともに交代はない。後半は新潟サポーターが陣取るスタンドに攻めるアルビイレブン。
 後半も序盤はあいかわらず攻め込まれる時間帯が続く。ゴール前で大宮のFWと吉原が交錯し、こぼれ球を大宮の選手がオーバーヘッドでゴールを狙うが、ボールは無人のゴールの脇を抜ける。
 シンゴのCKからセルジオがヘディングシュートを放つ。ボールを運悪くGK正面だったが、威力は十分。ようやくチャンスらしいチャンスを作る。さらに大宮のDFの裏に流れたボールを鳴尾が懸命に追いかける。惜しくもファールになったが、じょじょに新潟がペースを握り始める。
 寺川が中盤の低い位置から攻撃の起点となり、鳴尾が前線でキープできるようになり、新潟が攻め込む時間帯が長くなる。寺川のパスを受けた鳴尾が強引に中央を突破し、シュート。ボールはネットにつきささった。同点ゴール。今シーズンのチーム初ゴールを決めた鳴尾に他の選手達が抱きつく。ゴール裏からの鳴尾コールに満面の笑顔でガッツポースをみせる。
 俄然盛り上がるゴール裏。先ほどとはうってかわって大きな声で白鳥の湖が唄われる。昨年は先制されるとなかなか同点に追い付けなかったが、今年は違うようだ。
 しかし中盤が機能しないのはあいかわらず。後半の15分になり、式田がアップを終え、ユニホームに着替えているのがみえる。式田の運動量で中盤を活性化させようという狙いだろうか。
 しかしあっけなくゴールを奪われる。氏家からワンツーリターンをうけ、フリーとなった上村が前にでてきた吉原をあざわらうかのようにキレイなループシュートを決める。1ー2と突き放される。
 ここで堂森に代わって式田がようやく投入される。もっと早く交代していれば。今日の堂森は出来が悪すぎた。ドリブルで上がってくる上村を誰も中盤でチェックしていなかった。前半から一人頑張っていた秋葉も疲労の色がみえつつある。
 式田が入り、ある程度中盤が活性化してきたが、まだ足りない。そこに秋葉に代えナシメントが投入される。ナシメントは攻撃的MFの選手。式田が秋葉の位置に入るのだろうか。違った。ナシメントがトップ下に入り、前線は鳴尾、服部、シンゴが並ぶ。寺川と式田が中盤の底に入る。ナシメントはよくうごき、細かいドリブルでテクニックの高さをうかがわせる。それでいて持ち過ぎず攻めにリズムを作っていく。去年と違い、あまりサイドバックが上がってこない。連携が悪いせいか、作戦なのか分からないが。攻撃重視のフォーメーションにかえたことで、速攻をうけやすくなったがギリギリのところでセルジオ、高橋がふんばる。木沢の戻りの遅さはかわらない。
 終盤になり、ようやく服部がボールをキープできるようになり攻撃の形ができてくる。服部をポストに、鳴尾、シンゴがゴールに攻め込む。
 服部のパスから鳴尾がDFの裏を抜けかけるが、シュートは大きくワクを越える。
 木沢のセンタリングを鳴尾をヘッドで折り返し、服部が左足でシュート。ボールはわずかにゴールをそれる。天を仰ぐ服部。
 結局、ゴールは奪えず試合終了。開幕戦は1ー2で大宮に敗れる。昨年は開幕7連勝という快進撃を見せたが、この試合をみるかぎり、今年はうまくスタートできているとは言いがたい。連携は悪く、戦う意志は感じられない。後半になってからあわてて攻め始める悪癖も改善されていない。だが一方で希望も感じさせる。新加入の神田、ナシメントは非常に調子がよく、服部も終盤のプレーが最初からできれば初ゴールもそう遠くはないだろう。寺川も使い方次第では十分戦力となる。堂森はまだ何とも言えないが。次節から出場するであろうマルコ、高卒ルーキーながら早くもベンチ入りを果たした本間、彼らが加入したアルビレックス新潟はあきらかに去年とは違う雰囲気をただよわせる。ただそれが去年より強いか弱いかはまだ分からないが。次節の相手は開幕戦を札幌に0ー4と惨敗したサガン鳥栖。エースの竹元がケガで欠場しており、勝つチャンスは十分にある。ここで勝っておかなければいつ勝てるだろうか。開幕7連敗の可能性だってあるのだから。

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