Back still growing up

  2000年6月21日(水)19:00キックオフ
於 新潟市陸上競技場
アルビレックス新潟 対 モンテディオ山形
 
 平日のナイトゲーム。キックオフ間近になってじょじょにガラガラのスタンドが埋まり始める。空は雲っているが雨の降る気配はない。若干風が強いがプレーに支障を与えるほどではない。照明に灯が入り、スタンドからの拍手に迎えられメインスタンド下から選手が入場してくる。
 写真撮影を終え、ピッチに散らばる選手。足を小刻みに動かし体を温める選手、大きく飛び跳ねヘディングの素振りをする選手、動きは違えど共通していることがある。動きに大きな自信が感じられる。つい最近までのオドオドした雰囲気は微塵も感じられない。
 主審のホイッスルで試合が始まる。ファーストシュートはナシメント。左サイドでボールを受けると、そのまま中央へドリブルしていき、ペナルティエリアの外からミドルシュート。ボールは大きくワクをそれる。
 浦和に6ー1、大分に3ー2で上位相手に連勝、その影響は新潟だけでなく、山形にも大きく影響していた。プレスをかける位置をセンターラインに定め、それ以上はまったくプレッシャーをかけてこない山形。まるで1ー0で勝っているチームが逃げ切りをかけるかごとく徹底した守備重視の戦術。新潟が最終ラインでボールを回す。だが11人で守られてはなかなかボールの出しどころがない。
 山形はボールを奪っても攻めへの切り替えが遅く、すぐに新潟の選手に囲まれてしまう。ボールキープする堀井に寺川がバックチャージ。完全に後ろから手で押し倒す格好だったが、主審は頭上で両手を激しく交差し「ノーファール」のジェスチャー、さらに起き上がった堀井がボールにチェックにいくと、主審はホイッスルを吹き、堀井に警告を出す。新潟のゴール裏からは苦笑いがもれる。
 完全にカウンターに徹する山形だが、時間が進むにつれて守備にほころびがでてくる。木沢が右サイドの高い位置に張りついているため、そこをマークにいくとどうしても中央にスペースができてしまう。そのスペースで寺川がボールを受け、攻撃の起点となる。
 寺川から左サイドに展開し、中央のナシメントに折り返す。ナシメントは絶妙のトラップでDFを振り切るが、シュートを大きくふかしてしまう。
 だが木沢が前で張りついている分、どうしても新潟の右サイドは手薄になる。そこをカバーしようとすると中央にスペースを作ってしまう。さらに寺川が上がり気味のため、どうしてもCBの負担が大きくなる。ペナルティエリアの10Mぐらい外でボールを持った山形の選手にセルジオがチェックにいく。そこで山形の選手が前線にパスをだすが、セルジオが手で止めてしまう。当然、警告が出て山形のFKとなる。山形にとっては最初の大きなチャンス。ボールの近くには高橋と吉田が立ち、どちらが蹴るか話し合っている。木寺が大きな声で壁になる選手に指示出す。壁の枚数は6人。高橋がおとりになって、吉田が右足で蹴ったボールは壁の上を抜け、ゴールに向かうがわずかにバーの上。新潟はピンチを脱する。
 11人でガッチリ守る山形になかなか攻め手の見つからなかった新潟だが、ようやくチャンスを作る。中央の寺川から右サイドで張っていた木沢の前のスペースにスルーパス。ヘディングでクリアしようとジャンプする山形のDFの頭上を越えつつ、さらにオフサイドにならない絶妙のタイミングでコーナー付近に出たパスを木沢がトラップし、完全にフリーの状態でセンタリングを上げる。ニアサイドに走り込んだシンゴがヘディングシュート。山形のGK鈴木克美がかろうじて触るが、ボールはゴールラインを割る。さらにナシメントが蹴り込んだことでゴールネットが大きく揺れ、逆サイドにいた新潟のゴール裏からでもはっきりとゴールと確認できる。ピッチ上では選手達がメインスタンドに向かって走るシンゴを追いかけ、祝福する。観客も先制点に大いに盛り上がる。
 先制されたことで完全に戦術が狂ったかに思われた山形だが、戦術は変更せず。0ー1で負けていながらもまったく攻めにこない。前にでてこない。余裕を持って最終ラインでボールを回す新潟。
 山形はボールを奪ってからはわずかに攻めへの切り替えが速くなったが、シュートまでもっていけず、カウンターを食らうという悪いパターンを繰り返す。堀井が左サイドでドリブル突破を計るが、中野はまたぎフェイントにも切り返しにも動じない。寺川もチェックにいき、2人で囲んでボールをカットする。ボールをラインを割ってCKになるが、ここもセルジオが頭でクリアする。
 こぼれ球をシンゴが拾う。ドリブルで1人かわし、スピードにのるとさらにもう1人を簡単にかわし、そのまま50Mほど独走。DFをひきつけて逆サイドの鳴尾にパスをだす。鳴尾はダイレクトでシュートを打つが、ボールはゴール左にそれる。
 完全に新潟がリズムをつかんでいる。ここまで山形がシュートをFKの1本しか打ててないのに対し、新潟は攻撃をほとんどシュートで終えているので、カウンターを受けることもない。GKの木寺がボールを触る回数は非常に少ない。じれた真下が木寺へのバックパスにダッシュでプレッシャーをかけようとするが、木寺はダイレクトでDFにパス。まったく攻め手がない山形。
 だが前半の残り時間が10分を切った頃、試合が大きく動く。中盤で新潟がミスパス。ボールを拾ってそのままスピードに乗る山形の選手にセルジオがチェックにいく。だが1歩遅れ、山形の選手の体に体当りするような形になってしまう。主審がホイッスルを吹き、短パンの後ろポケットに手をかけたまま、セルジオに駆け寄っていきイエローカード。続いて主審はレッドカードを出し、退場を指示する。両手を広げるが、抗議することもできず、首を振りながらピッチを出る。ユニホームを脱ぎ、上半身裸になってメインスタンド下に引き上げるその後ろ姿からは悔しさが滲み出ている。
 急きょ、CBが1人欠けた新潟はすぐに柴がアップを始める。柴が入る前に山形のFKとなる。キッカーの位置にはまた吉田と高橋が並んでいる。同じように高橋がおとりとなって吉田が右足でボールを蹴る。今度はファーサイドを狙ったボールを木寺の頭上を越える。ネットが揺れるがボールは落ちてこない。ゴールマウスの天井の部分にボールが乗っている。大きくため息をつく木寺。
 ここでナシメントに代わって、柴が入る。好調だっただけにナシメントは突然の交代に肩を落としてピッチを去る。柴がそのままセルジオの位置に入り、FWは鳴尾のワントップとなる。
 一気に形成逆転となり、守備を固める新潟。だが山形はまだたたみかけてくる気配はない。そのまま前半が終わる。
 思いもよらぬ展開にハーフタイム中もざわめく観客。10人で45分、耐えられるのか?さらに木沢は前半の接触プレーで足を痛めている。高橋、中野の足にはテーピングが巻かれている。サブのDFは井上だけ。永井監督の采配にも注目が集まる。
 後半が始まる。前半の山形そのままに守備固めに入る新潟。ワントップになったことでどうしても前線からのプレッシャーが少なくなる。その分中盤やDFラインの負担が増していく。簡単にサイドを変えられ、着実に数的不利を作られるが、秋葉、高橋を中心に献身的にカバーリングを続ける。奪ったボールを鳴尾の頭目がけて放り込む。決して背の高くない鳴尾が頑張って競るが、フォローもいないのですぐに山形のボールになってしまう。
 山形はDF鷲田に代え、FWジェフェルソンを投入。ますます攻撃色を高める。しかし新潟も簡単に攻めさせない。ボールを持たせておきながら、要所要所で確実にカットしていく。
 前線に放り込まれたボールを山形のDFがヘッドでサイドへクリアする。ボールを取りにいった鳴尾が本間にボールを手渡す。本間がスローインし、鳴尾が受ける。粘ってなんとかシュートまでもっていこうとするが、ボールを奪われ、サイドにクリアされる。そしてまた1番近くにいた鳴尾がボールボーイからボールを受け、そして本間に手渡した瞬間、主審がホイッスルを吹きながら鳴尾に駆け寄って「遅延行為」で警告を出す。いつもは温厚な鳴尾もこれには主審に猛抗議。木沢も主審に詰めよって激しく抗議している。バックスタンドやゴール裏からも罵声が飛ぶ。
 抗議により若干の中断の後、試合再開。だがボールをすぐ奪われ、クリアされてしまう。しかし最終ラインからボールをつなぎ、中央の鳴尾から右サイドに走り込んだ寺川にパス。寺川は体勢を崩しながらも中央に折り返す。そこに走り込んだシンゴがフリーでヘディングシュート。まさに目の前でヘディングされた鈴木克美はなすすべもなく、ゴールを割られる。先ほどの中断で集中力が切れていたのか、山形は鳴尾にプレッシャーをかけにいかず、さらに寺川、シンゴにいたっては完全なフリーだった。まさに典型的なカウンターで追加点を奪った新潟に対し、焦る山形はますます攻めに比重を高めていく。しかしセンタリングはカットされ、シュートはワクにいかない。
 新潟は木沢に代え、井上を投入。完全に逃げ切りに入る。山形は必死に攻撃を続ける。だが右サイドからファーサイドにセンタリングを上げ、フリーの選手がダイレクトでシュートを打つも、ポストに弾かれる。左サイドからのCK、ショートコーナーを受けた高橋がループ気味にミドルシュートを狙うが、バーに弾かれる。
 疲れの見えてきた秋葉に代え、堂森を投入。堂森は積極的にこぼれ球を拾い、前線の鳴尾に供給。そして危ない場面ではスタンドに入らんばかりの大きなクリア。ますます山形の焦りを誘う。
 そして前がかりになった山形に新潟がカウンターを繰り返す。左サイドでシンゴがボールを持つ。山形のDFが2人で囲みにいくが、ワンフェイントで完全に抜き去り、中央の鳴尾にパス。パスを受けた鳴尾をDFに囲まれながらもシュート。ブロックされるが、跳ね返ったボールを粘り強くキープしもう1回シュート。DFに当たってコースが変わり、鈴木は逆をつかれて3点目が入る。
 完全に集中が切れた山形は今度は左サイドでシンゴがボールを持つと、ファーサイドに流れていく鳴尾に気を取られ、中央に飛び出してきた寺川が完全にフリー。あわててチェックにいくが、寺川は冷静に左足でスミにシュートを決め、4点目。これで完全に勝負あった。
 3分のロスタイムがあったが、山形は最後まで攻めきれない。4ー0のまま試合終了。
 肩を落としてサポーターに挨拶にいく山形の選手とは対照的に終始笑顔の新潟の選手。ベンチから途中交代した木沢が飛び出して、選手全員と握手。まるで子供のようにはしゃいでいた木沢の笑顔に象徴されるように今日の勝利は非常に大きい。10人でも3点取れたということよりも10人でも無失点で試合を終えることができたことの方が選手に大きな自信を与えたに違いない。ここ3試合で13得点と攻撃力は申し分ない。ここに鉄壁の守備が復活すれば・・・。期待は大きくふくらむ。残り試合数は22、まだ間に合うだろうか?

〒〒〒
ご意見、ご感想がある方は アルビサポ まで