Back still growing up

  2000年4月12日(水)19:00キックオフ
於 新潟市陸上競技場
アルビレックス新潟 対 京都パープルサンガ
 
 そこには瀬戸も水越もサウロもリカルドもいなかった。でもピッチでは去年のメンバーがだぶって見えた。11人のうち、9人が去年のメンバーなのだから当然といえば当然なのかもしれない。だが、開幕戦からずっと選手達の表情から多分に感じとられた「迷い」は感じられなかった。
 先週の日曜に感じた死にそうなくらいの悔しさは仙台に負けたからではないことにようやく気付いた。悔しさの原因は今までも、そしてこれからも「まったく勝てそうにないこと」だった。多分、選手も同じことを考えていたんじゃないだろうか。このままじゃ勝てない、負け続けてしまうと。
 結局、今日も負けた。だけど試合後、信じられないくらいに安心している自分がいた。仙台戦後に感じた悔しさは吹き飛んだ。代わりに大きな手応えを感じた。開幕から仙台戦までやってきた「攻撃重視」の戦術と今日の「守備重視」の戦術、どっちの方が勝利に近付いていたかは書くまでもない。
 カズ効果か、それとも天気のおかげか平日にも関わらず市陸には3000人を越える観客が集まった。メインスタンドがこれだけ埋まったのは本当に久しぶりだ。
 ナビスコカップ1回戦の相手は京都パープルサンガ。アルビと同じく開幕から絶不調。まだ1勝しかあげていない。しかし、それはJ1リーグでの結果であり、J2で1勝しかあげていないアルビの不調の方がはるかに深刻である。
 この試合をきっかけにしてリーグでの巻き返しを狙いたいというのが両チームの偽らざる心境であろう。サンガはGKこそ松永に代え、平井を起用したがほかは完全にベストメンバーである。
 対するアルビはいくつかの「改革」を行った。DFラインを昨年の4人に戻し、FWも不調の服部を外し、昨年レギュラーだったシンゴと鳴尾の2トップに戻す。そして最も驚いたのは神田の起用法だ。ボランチではなく攻撃的MFでの起用。完全に神田を攻撃の起点にするつもりらしい。
 サンガのキックオフで試合が始まる。まず主導権を握ったのはサンガ。右サイドの佐藤のスピードにのったドリブルでゴールに迫る。対面の中野は突破こそされないもののズルズルと下がり過ぎてしまい、結局自陣深くまで入り込まれてしまう。だがクロスボールはセルジオがヘディングで大きくクリアする。
 サンガは中村、遠藤のダブルボランチがクリアボールを拾い、右に左にピッチを大きくつかって攻めてくる。アルビはポジションを深めにとり、2トップがボールを追いかけ、中盤、DFの8人はゾーンでしっかり守り、ゴール前を固める。
 どこかに守備の穴を見つけようとボールをまわすサンガにじっくりと守るアルビ。サイドから中央に上げられるクロスは高橋、セルジオがしっかりはねかえす。こぼれ球を拾うとすぐに前線の鳴尾、シンゴにボールを預け、中盤の式田、神田が前線へ飛び出し、速い攻めを見せる。
 そう、これは去年のサッカーだ。守って守って耐えに耐えながら、いざ攻撃となると一気に攻め上がる。そしてまた守る。相手にボールはキープさせるが、決定的なピンチまではもっていかせない。リーグ戦で5試合で12失点を喫したチームとは思えないほど守備が堅い。
 佐藤のドリブルも秋葉や高橋が中野をフォローし、うまく封じる。サンガの2トップはカズがポスト役となってキープし、松井がその周りを自由に動きまわる。この松井が本当に昨年まで高校生だったのか?と疑いたくなるくらい速いドリブルやパスでサンガの攻撃のリズムを作る。
 だがなかなかペナルティエリアの中までボールを持ち込めない。焦って打ったミドルシュートは大きく木寺の頭上を越える。
 1度野口とカズのパス交換から決定的なピンチになりかけるが間一髪で高橋がクリア。
 アルビは今までとはうってかわって攻めのスピードが速い。やり慣れた戦術なので選手達はプレーに迷いがない。みんながよく動き、ポジションチェンジを繰り返す。神田がうまく中盤でキープし、いいアクセントなっている。だがシュートが打てない。サイドからのセンタリングも中で合わせる選手がいない。
 ボールキープ率は完全にサンガに負けているが、決定的な場面は作らせない。個々の能力はサンガの選手に劣っていない。特に2トップ、シンゴは本職のFWのポジションでスピードあふれるドリブル突破を繰り返し、鳴尾も力強いドリブルでDF3人を振り切る。だがなかなかシュートがワクにいかない。
 膠着状態に入りかけた前半30分過ぎ、とうとうゴールを奪われてしまう。右サイドの佐藤から走り込んできた松井にスルーパス。松井のシュートは高橋が身体をはってブロック。左に流れたこぼれ球を野口が拾い、中央ややマイナスに戻したボールをダイレクトで遠藤がミドルシュート。右スミに決められてしまう。
 だが集中力は切らさない。まだ焦らず、守備重視は崩さない。点を取ったことでやや引き気味になったサンガにあいかわらず速い攻めをみせる。
 結局そのまま前半終了。1点奪われているが非常に安定した試合運びである。中途半端にDFラインを上げることもしないので独走されることもない。セットプレーでも集中を切らさない。
 アルビのキックオフで後半が始まる。後半も戦術に変更はない。じっくり守って速く攻める。だがすこし攻撃が物足りない。木沢の突破がほとんど見られない。
 対面の野口が木沢の縦の突破を警戒したポジショニングをとっているので、横に流れることが多いのは仕方がないが、そこからクロスやスルーパスが見られない。単純な横パスで終わってしまっている。結局、今日木沢は1回も野口にドリブル突破を仕掛けなかった。昨年2、3人に囲まれても突破を試み、突破していた木沢だが、今年はあるゆる意味でおとなしい。審判への異議も言わない、オーバーラップも少ない。自分を抑え過ぎているんじゃないか?悪いところを消している以上に木沢の良さが完全に消えている。
 後半はアルビが攻める回数が増えてきた。神田のロングパスに式田が反応し、前線へ飛び出す。おいつけば完全にGKと1対1という場面だったが、ボールはわずかに長すぎボールをうまくトラップできずにラインを割る。大声を上げて、悔しがる式田。
 鳴尾のロングスローでゴール前に放り込むが、ニアでうまく競る選手がいないのでチャンスに結びつかない。こぼれ球を拾った神田がミドルシュートを放つが、GKの正面をついてしまう。
 ナシメント、本間にくわえ、高道まで投入し、完全に攻めにでるが、結局攻め切れない。決定的なチャンスは最後まで作れなかった。
 しかしシュート数は12本。今までほとんど見られなかったペナルティエリアの外からのシュートも多く見られた。
 さらに驚異的な活躍を見せた高橋を中心にした守備陣もサンガに決定的なチャンスは作らせなかった。J1リーグで苦戦中のサンガとはいえ、大きな自信になったことだろう。
 結局は負け。でも、これはリーグ戦ではない。次(リーグ)につながる負けだったと思う。次の試合はJ2、5連勝中のレッズ。天皇杯の雪辱なるだろうか。J2はまだ始まったばかりだ。

〒〒〒
ご意見、ご感想がある方は アルビサポ まで