Back still growing up

  2000年6月25日(日)14:00キックオフ
於 日立市民運動公園陸上競技場
水戸ホーリーホック 対 アルビレックス新潟
 
 かつてここまで緊張感のないスタジアムがあっただろうか?ところどころ剥げた芝生、オーロラビジョンはおろか電光掲示板すらなく得点板があるのみ、時計は陸上用のデジタル時計がトラックの上に置いてある。ホームチームのサポーターは十数人、バックスタンドと呼んでいいのか分からないが芝生席にはほとんど観客がいない。照明スタンドが無いうえに球場のすぐ脇には民家が建ち並ぶ。民家と球場を隔てるフェンスの高さは2、3Mといったところだろうか。雨が降らなかったことが唯一の救いである。
 3連勝で勢いにのるアルビレックスを見るために、新潟を始め各地からアルビレックスファンが集まり、オレンジ色の服を着ている観客の数はあきらかに青色の服を着ている観客の数を上回っている。どちらのホームゲームか分からない状況だ。
 山形に4ー0の圧勝で連勝を3に延ばし、相手は札幌に0ー3の大敗を喫した水戸、上記のスタジアム、選手、そして観客にも気を抜く要因は大いに揃っていた。
 日立出身の吉原に対する簡単なセレモニーの後、選手が入場してくる。出場停止のセルジオのポジションに柴が入った以外は前節とスタメンは同じ。注目はサブに入っている横浜Fマリノスから新加入の深沢である。
 新潟のキックオフで試合が始まる。メインスタンドから見て左から右に強い風が吹いている。前半は風下から攻める新潟。大きく左に蹴り出したボールを水戸の選手が頭でクリアし、ボールはラインを割る。スローインをしようとした中野が左右を見回す。ボールボーイがいない。コーナー付近にいたボールボーイが走ってきて中野にボールを投げる。
 つまり、ハーフウェイライン付近にボールボーイがいないのだ。選手入場前にボールボーイと紹介された地元中学生は30人あまりいたが、そのうち実際ボールボーイをやっているのはコーナーとゴール裏の6人のみ。残りはコーナー付近で待機している。当然、ボールがサイドラインを割った場合、コーナーの子供が走って来てボールを渡すため、スローインするまでに数秒かかってしまう。マルチボールシステムが機能していないのだ。ただでさえ少ない緊張感がさらに薄まる。
 ピッチの芝の状態はかなり悪いようだ。足を取られる選手が目立つ。ボールがスタンドから見てもはっきり分かるくらいイレギュラーバウンドしている。そのため、両チームの選手共にトラップミス、パスミスが多い。
 新潟は選手紹介の際、2トップとなっていたがピッチの上は完全な4トップ。左からシンゴ、鳴尾、ナシメント、本間が手を挙げてDFの裏へボールを出すように要求している。中盤は秋葉、寺川の2人。横にフォローがいないため、前線へ放り込むしかない。だが4人とも空中戦に強い選手ではなく水戸のDFに簡単に跳ね返されてしまう。
 この時点で中盤で圧倒的な数的有利を作っている水戸はこぼれ球を拾うと、2トップの須藤、矢野マイケルの頭を狙ってロングボールを放り込む。しかし、ここは空中戦の強い柴、高橋が跳ね返す。この繰り返しが続く。
 ときおり水戸は2トップの頭ではなく足元にもパスを出す。矢野マイケルはトラップミスをして簡単にボールを奪われてしまうが、須藤は柔らかいトラップから前線でキープ、そして上がってきた中盤の選手に渡して自分はゴール前に走り込む。
 最初のチャンスは水戸。須藤のポストプレーから中盤でボールを持った水戸の選手がゴール前に走り込んだ富田にスルーパス。完全なフリーで受けた富田がシュートを放つが、ボールは枠をそれてポスト右に外れる。
 新潟はトップの足元にパスがきてもトラップミスをしてしまい、なかなか前線でキープできない。トラップできてもフォローが遅く、突破を計っても芝に足を取られ、簡単にボールを奪われてしまう。
 中盤からのスルーパスに反応し、鳴尾がうまくDFの裏に抜けるが北島に後ろから押し倒されてしまう。当然、ファール。警告が出る。得点ランク3位の鳴尾へのマークは厳しい。
 新潟の最初のチャンスはその鳴尾から生まれた。寺川が倒され、中盤でFKを得る。本間の蹴ったボールを鳴尾が競って後ろに落とす。そこへ走り込んだナシメントが左足を振り抜くがシュートは惜しくも枠を外れる。
 さらに今度はゴール前でボールを持ったシンゴが左足で切り返してDFをかわし、右足でミドルシュート。コースは良かったが威力が弱く、GKが正面でキャッチする。
 水戸の戦術はシンプルだが徹底している。DFラインは下がり過ぎず、中盤に余計なスペースを作らず、早めのプレスで奪ったボールを前線につなぐ。各自が与えられた役割を忠実に遂行しようとしている。対して新潟の攻撃は完全にバラバラである。中盤がまったく存在しない。前線への放り込みに終始し、奪われてカウンターを受けるという悪循環である。ロングボールが風に乗って押し戻されてしまうが、せめてショートパスでも横パスをつながないことには攻めにバリエーションがつかない。
 水戸は中盤から村田、笠原が素早い飛びだしを見せるが、新潟もなんとか踏ん張り、0ー0で前半を終える。
 後半は水戸のキックオフから始まる。新潟はDFから中盤へのつなぎをよくするためにボランチの配置を変更。若干ボールが回り始める。本間から木沢へ絶妙のパスが通るが木沢のセンタリングはDFにブロックされる。
 木沢の上がったスペースを村田が積極的に狙ってくる。ボールを奪って攻め上がる村田を木沢がダッシュで追いかける。ラインギリギリまで切り込んで上げたセンタリングを木沢がブロックするが、主審は木沢のハンドを取る。そして木沢に警告。ジャッジに激怒する木沢だが、柴が後ろからはがいじめをするように木沢をおさえる。だが柴を振り払ってまだ抗議する木沢。本間になだめられ、ようやくしぶしぶながら壁に入る。FKは低くて速いボールだったが柴が頭でクリアする。
 永井監督は精彩を欠くナシメントに代え、深沢を投入。注目の深沢、投入直後はなかなかボールに触れなかったが、1度ボールを持つと技術の高さを大いにアピール。芝に足を取られずドリブル突破。積極的にスルーパスを狙うなど、一気に攻撃のリズムを作る。
 秋葉が最終ラインに入り、3ー5ー2となるがそれほどサイド攻撃は活性化しない。特に左の中野はほとんど攻め上がれない。
 次は動きの悪い本間に代え堂森を投入。堂森はボールを奪うと木沢へロングパス。風に流されてラインを割りそうになると木沢はなんと手でボールを止めてしまう。もちろん、警告がでてもおかしくないプレーだが主審の判断で警告はでない。
 秋葉に代えマルコを投入し、シンゴがトップに上がり、深沢が中盤、堂森がボランチ、寺川が最終ラインに入る。マルコはなかなかボールに触れない。
 中盤からでたスルーパスに鳴尾と渡辺が交錯。珍しく鳴尾が怒りを露わにし、渡辺と額を突き合わせにらみあっている。主審が目を離した瞬間に鳴尾の頭をこずく渡辺。さらに激怒する鳴尾。
 水戸はDFからのロングボールを須藤が胸トラップしたところを村田が拾ってシュート。完全にフリーの状態だったが、シュートは大きく右に外れる。ピッチを叩いて悔しがる村田。その後も村田は果敢に前線に飛び出してくるが、ことごとくオフサイドにかかってしまう。
 新潟も深沢の個人技を起点にチャンスを作るが、なかなかシュートまでもっていけない。DFのクリアミスをマルコがトラップして、ペナルティエリアの中からシュートだがボールはバーを越えてしまう。
 その後も一進一退の攻防が続くが、そのまま後半終了。勝負は延長戦に持ち越される。
 延長前半は新潟がたたみこむがなかなかゴールが割れない。CKからのこぼれ球を新潟の選手がシュート。GKが上にファンブルしたところを高橋がヘディングでゴールを狙うが、GKと交錯しファール。警告を出される。さらにFKから柴がヘディング。惜しくもバーの上を越える。
 また深沢がこぼれ球をリフティングでボールキープし、DFをかわしてゴールに向かうが、渡辺に引き倒される。警告を受ける渡辺。
 後半に入るとまたもや深沢がチャンスを作る。DFの裏へ走り込み左足でボレーシュート。だが渡辺が必死に体を寄せ、CKに逃げる。
 キッカーは堂森、ファーサイドで競り合ってボールがこぼれる。それを拾った水戸の選手が前線の北川につなぐ。DFは木沢一人。無理にチェックにいかないで時間を稼ぎ、その間に柴が戻ってくる。それをみて、木沢がプレッシャーをかけにいく。しかし切り返しでかわされる。そして柴まで芝に足を取られかわされてしまう。木寺が飛び出すと右サイドへパス。そこへ走り込んできた鳥羽が右足でシュート。決して威力のあるシュートではなかったがまっすぐゴールに向かっている。高橋が必死に走って滑り込みながら懸命に足を伸ばすが、わずかにとどかず。そのままボールはゴールに入ってしまう。
 Vゴール。上半身裸になって半狂乱になって走りながら喜びを表す鳥羽。対照的にうつむく新潟の選手達。
 勝てば水戸を越えて、7位浮上となるところが敗戦で順位は変わらず。連勝は3でストップ。
 やはり連勝からの気の緩みがあったのだろうか。そして連勝で得た自信はいつのまにやら過信になっていたのかもしれない。結果も最悪だが、内容はもっと悪かった。
 高校サッカー以下の内容だった。あれではどこにも勝てないだろう。相手に合わせる必要はなかった。新潟のサッカーを貫いてほしかった。
 唯一の希望は深沢が使えるメドがついたこと。深沢をどこに起用するか、監督も頭を悩ませることだろう。

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