Back still growing up

  2000年7月1日(土)18:00キックオフ
於 新潟市陸上競技場
アルビレックス新潟 対 湘南ベルマーレ
 
 日中の体にまとわりつくような蒸し暑さも夕方になってようやく涼しくなってきた。早くも照明に灯が入っているが、まだ十分明るい。心配された雨も降るような気配はない。少し風が出てきて観客にもプレーする選手にも最高のコンディションとなった。
 ピッチの上では選手が試合前の練習をしている。いつもこの練習に参加しているメンバーを見て、スタメンやサブ、フォーメーションなどを予測することを試合前の楽しみにしている。選手の顔からメンバーを確認しようと一通り眺めると1人だけ動きの激しい選手がいる。#23深沢だ。横浜Fマリノスからのレンタル移籍で先日チームに加入。早速前節の水戸戦に途中出場、試合の流れを変える活躍を見せる。深沢についてテクニック以上に特筆すべき点はモチベーションの高さであろう。試合への飢えを満たすがごとくピッチの上での動きは激しく、労を厭わない献身的なプレーが目立つ。そのモチベーションの高さはアップしている時点から大いに感じることができる。
 キックオフの時間が近付くにつれて観客の数も増えてくる。ホーム側のバックスタンドがほぼ埋まった頃、選手が入場してくる。注目の深沢はスタメン、FWではなく左の攻撃的MFである。対する湘南の選手の顔ぶれは予想とは大きく異なっていた。前園、阿部はいるが松原、高田保、小松原などの主力がいない。結果の出ないチームに加藤監督がショック療法を行ったのだろうか。
 湘南のキックオフで試合が始まる。長いボールを前線の阿部を狙って蹴ってくる。阿部はDFの力を利用して大きく飛び上がり、セルジオよりも高い打点でヘディングしてくる。しかし落としたボールに反応する選手はおらず、高橋が落ち着いて処理する。
 シンゴが久々のFWでの出場、非常に動きが良い。MFではほとんど右サイドに出てくることはなかったが、今日は鳴尾とポジションチェンジしながら、右に左に縦横無尽に走り回る。
 湘南は木沢にまったくマークをつけていない。当然、木沢にボールが回ってくることが多くなる。木沢はボールをトラップしてから十分に加速してワンフェイントで和波をかわす。そしてセンタリング。ここはDFにクリアされるが、前に大きなスペースがあるため、木沢は非常に上がり易そうだ。
 湘南の攻撃は前園がほとんど目立たない。#28樹森、#30渡辺のドリブル突破からWBの白井、和波につなぎ、センタリングを上げるもセルジオがビタリーに競り勝って頭で大きくクリアする。
 湘南はサイドからファーサイドを狙ったクロスを多用するが、逆サイドの選手が追い付けない上にその選手の裏を突かれて反撃される場面が多い。
 新潟は鳴尾、シンゴの2トップがサイドの深いところでボールを受け、そこを起点に攻める場面が多い。中野からのロングボールを受けた鳴尾が粘って中央へ折り返す。GKが飛び出してくるが、シンゴが先にボールに触って体を捻って右足でシュート。しかしシュートはバーの上を越える。
 本間、深沢の攻撃的MFがやや中央よりにポジションをとっているため、左右のサイドバックがオーバーラップしてくる場面が多い。木沢はドリブル突破を交えながら、中野はアーリークロスを交えつつ、左右からバリエーション豊富な攻撃が展開される。サイドバックが上がった後にはちゃんと秋葉や本間がカバーに入り、カウンターを受けることはない。
 湘南のDFがサイドに意識が傾いたところに寺川が前線に飛び出す。スルーパスを受け、右足を大きく振り抜くがボールはとんでもないところへ飛んでしまう。
 注目の深沢は攻撃になかなかからめないでいる。中盤でマークを外す動きがほとんどないので白井に完全に抑え込まれている。ボールを奪われた後、後ろからタックルしてしまい警告をもらう。完全に気合いが空回りし、焦りの色が見える。
 湘南も前園がボールキープし、前線に走り込む阿部にスルーパス。高橋が体を寄せるが一瞬早く阿部が右足でシュート。しかし、これは木寺の正面をつく。
 さらに阿部がミドルシュートを放つと木寺がフェイスティングでCKに逃れる。流れはじょじょに湘南に傾きつつある。前園の蹴ったCKはニアサイドの秋葉が頭で大きくクリアする。
 左サイドの和波がゴール前に走り込むビタリーにスルーパス。セルジオがチェックにいくと、ビタリーは足の裏で後ろの阿部へ流す。しかし出足よく高橋がボールをカット。阿部を怒鳴りつけるビタリー。
 今度は前園からのパスを受けた白井がセンタリング。セルジオと高橋の中間地点に走り込んだビタリーの頭に完璧に合わせるセンタリングだったが、フリーのビタリーのヘディングシュートは威力が弱く、木寺の正面をつく。
 新潟は木沢が右サイドをドリブル突破、センタリングはDFにクリアされるが、こぼれ球を本間が拾い中央の寺川へパス。寺川はキックフェイントの後、右足で切り返しDFをかわし、左足でカーブをかけてシュート。伊藤が横っ飛びするが、届かず。しかし無情にポストを叩く。天を仰ぐ寺川。
 すぐ後に今度は湘南がDFのクリアボールを拾い、阿部がミドルシュート。これも木寺の脇を抜けるが、ポストを直撃する。
 お互い無得点で前半を終える。ボールキープ率は6:4で新潟といったところだろうか。
 後半が始まる。後半になると完全に新潟が押し込む場面が増えてくる。
 サイドバックのオーバーラップを交えて、シンゴや深沢が果敢にサイドを切り崩す。そして今までは簡単に中に上げてDFにクリアされれることが多かったが、今日はミドルシュートや中央へのショートパスなどで多彩な攻撃を見せる。だがなかなかシュートがワクにいかない。
 湘南はビタリーに代え、酒井を投入。そして新潟は深沢に代えて、ナシメントを投入する。いささか早すぎるように感じたこの采配が見事的中する。今までのように無理やりドリブル突破を仕掛けるのではなく、中盤ではシンプルに味方に預け、ゴール近くでドリブルを仕掛ける。
 鳴尾からオーバーラップしてきた木沢にパス、中央へグラウンダーのパスを通すとスピードの乗ったナシメントがボールを受けて、シュート。だがシュートはバーを越える。
 伊藤は流れを少しでも遮ろうとゴールキックに時間をかける。観客からブーイングが出てくる。そして伊藤はゆっくり助走し、ボールを前線に蹴る。序盤圧倒的な高さを見せた阿部が後半は完全に沈黙。セルジオにまったく競り勝てない。
 さらにナシメントのドリブル突破からチャンスを作る。ペナルティエリアの外でボールを受けると、DF2、3人に囲まれながらゴールに向かってドリブル、伊藤が飛び出す直前にシュート。だがDFに当たってコースが変わり、ポストの脇を抜ける。
 湘南も前園を起点にカウンターを仕掛ける。中盤でボールを受けた前園に秋葉がチェックにいく。だが深い切り返しにかわされ、そして前線の阿部にスルーパスを出される。独走してペナルテイエリアに入り、木寺と1対1になって左足でファーサイドにシュートを打つが、ミスキックとなりボールは大きくワクをそれる。
 湘南は中盤でのチェックが少ない上にWBの裏を突かれ続けてピンチの連続である。加藤監督がピッチ脇まででてきて選手に指示を送る。
 伊藤は相変わらずゆっくりとゴールキックを蹴る。そうするとまたブーイングが起こる。次はゴールキックになった途端、ブーイングだ。ブーイングの安売りは試合の緊張感を無くし、さらに大事な場面でのブーイングの意味がなくなる。試合のメリハリがなくなってしまう。
 完全に押し込んでいるのだが、なかなか点につながらない。シンゴのミドルシュートはDFにブロックされ、ナシメントのコースを狙ったシュートもブロックされる。CKをショートコーナーでつないでミドルシュートを放つ、湘南DFが手で止めたように見えるが、主審はノーファールのジェスチャー。さらにこぼれ球を拾ってセンタリングするとまたもや湘南DFの手に当たるが、主審はファールを取らない。こういう場面にこそブーイングするべきでは?
 秋葉に代え、神田を投入。疲労で足の止まった湘南DFを左サイドからスピードに乗ったドリブルで切り込み、クロスを上げる。しかしDFにクリアされてしまう。
 ロスタイムに入り、延長を覚悟したそのときに劇的な決勝点が生まれる。神田のクロスをDFがクリア。こぼれ球を拾ったシンゴが右サイドの木沢にスルーパス。木沢はキックフェイントでDFをかわしセンタリング。中央でフリーになっていたナシメントが頭で右スミにたたき込む。スタジアム中から歓声が上がる。
 倒れ込む伊藤。メインスタンドに向かってダッシュするナシメントを新潟の選手が追いかける。Vゴールに近いゴールに湘南の選手はがっくりと肩を落としている。湘南のキックオフから数十秒後、タイムアップのホイッスルが鳴る。
 湘南の出来が悪かったとはいえ、ここまで圧倒的に攻め込めるとは思っていなかった。先週の出来がウソのようだ。次節は連勝を続けている札幌。昨年の川崎Fの連勝を止めたのも新潟。札幌の連勝をストップさせ、気分良く中期間に入りたいものだ。気がつくとJ2シーズンはもう半分終わっていた。

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