Back still growing up

  2000年7月29日(土)18:00キックオフ
於 新潟市陸上競技場
アルビレックス新潟 対 ベガルタ仙台
 
 1ヵ月のインターバルを終え、ようやくリーグが再開された。いつもなら開始直前にならないとなかなか埋まらないスタンドが今日はバックスタンド中央の聖火台を中心に早めに埋まっていく。ピッチでは試合前の練習が行われている。久しぶりに見る選手達、1ヵ月の休養のせいか心無し動きが良いように見える。いつものようにアウタイルコーチの指示に従ってダッシュを繰り返す選手達、高橋だけが離れてロングボールをヘディングでクリアする練習をしている。シュート練習の後、キックオフに備えて選手は控室へ戻っていく。
 前節札幌に0ー2で負けたものの、今シーズンは好調を維持しているベガルタ仙台。財前が負傷から復帰、元日本代表の山田隆裕を獲得し、選手層を厚くして後半戦に臨む。今日は今までスーパーサブとして活躍していた大友をスタメンに抜擢、藤吉と2トップを組み、攻撃的MFは山田と財前の2人が入る。余った形となった平間がサブに入る。そしてサブには平間と共に過去2戦新潟戦でゴールを奪っている蓮見が控えている。
 仙台のキックオフで試合が始まる。右サイドに大きく蹴り出したボールは中野が落ち着いて大きくクリア。ボールはラインを割って仙台のスローインとなる。
 仙台で一番気をつけなくていけないのは大友である。驚異的なスピードを持つ大友は常にDFラインの裏を狙っている。だが空中戦は弱く、簡単に高橋がヘディングでクリアする。
 仙台は中盤でのチェックが甘く、新潟は比較的簡単にボールを前線へ運ぶ事が出来る。特に神田がフリーでボールを持つ場面が多い。神田から大きく右の木沢に展開、あるいはオーバーラップしてくる中野に出してクロスという攻撃パターンが出来る。
 今シーズンはあまり攻撃参加しなかった中野が今日はどんどん上がってくる。そしていつものように積極的に木沢も上がり、両サイドを大きく使ったサッカーが出来ている。
 寺川が面白いようにロングパスで両サイドに展開、また木沢から中野へのサイドチェンジなどで、仙台はプレスの焦点を定めることができない。
 各自がポジションチェンジを繰り返しながらも、選手間の距離が一定で偏りがないため、簡単にサイドを変える事が出来、またボールを奪われてもすぐにプレスをかけることができる。
 仙台はほとんど攻め手がない。財前のパスに大友が飛び出すも長すぎて木寺がキャッチ。DFの裏へ抜け出したと思うとオフサイド。イラだつ大友がミドルシュートを放つも大きくバーの上を越える。
 右サイドから木沢が突破する場面が目立つ。本間がうまく木沢のオーバーラップを引き出しているのだが、木沢はフリーにならなくても1対1だったら簡単にドリブルで突破してクロスをあげている。ドリブル突破も見事だが、クロスの精度も素晴らしく、触ればゴールというクロスを連発している。
 最初のチャンスは木沢から生まれる。ドリブルを警戒して正面に立ったDFの前で木沢は早めのクロスをゴール前に上げる。ファーサイドからニアサイドへ走り込んだ本間がフリーで頭で合わせるもボールはわずかにワクをそれる。苦笑いしながら頭を抱える本間。
 ボール支配率には圧倒的な差はないが、シュートまで持っていく場面は新潟の方がたくさん作れている。仙台のGKが忙しそうにしているが、一方の木寺はほとんどボールが回ってこず、退屈そうだ。仙台の清水監督が絶叫に近い声で選手に指示を与える。
 大友がボールを持って左サイドを駆け抜けるが、セルジオが最後までついていって、フリーにはさせない。藤吉は1回だけカウンターでチャンスを作りかけたが、あとは消えている。山田も財前も運動量が少なく、チャンスをまったく作れない。ドゥバイッチがパスの出しどころを探しながら、前にドリブルしてくるが出すところがなく、仕方なくミドルシュート。だがシュートはジャストミートせず力無く木寺の胸におさまる。
 新潟の守備の穴を挙げるならば、ドゥバイッチの上がってきた高橋の前のスペースだろうか。秋葉、寺川が声を掛け合ってこのスペースを埋めないと、即失点に結びついてしまう。それ以外はほぼ完璧に仙台の攻撃を封じ込めている。
 ほとんどファールがなかったため、ロスタイム0分で前半終了。新潟が押し込んでいたが、仙台は後半のために前半が抑えていたような印象を受ける。後半の監督の采配、特に選手交代が試合を決定づけることは間違いない。
 後半は新潟のキックオフで始まる。大きく左サイドに蹴り出したボールにシンゴが追い付き、オーバーラップしてきた中野にパス。中野はワンフェイントでDFのタイミングを外し、クロスをゴール前に上げる。走り込んだ鳴尾が中央でダイビングヘッド。ボールはGKの前でワンバウンドしてゴールに向かう。「入った。」そう思った瞬間、仙台のGKが右手一本でボールをゴールからかきだした。倒れ込んだまま鳴尾は信じられないといいたげな表情で頭を左右に振る。
 だが、新潟の猛攻は続く。前半と同じく両サイドを大きく使いながら、ときおりDFの裏へ効果的な縦パスが入る。完全にDFの裏へ抜け出したシンゴはシュートに戸惑い、後ろからDFに押されるように倒れるがファールはなし。さらに右サイドを駆け上がった木沢が中央へ切り込み、左足でミドルシュート。これも仙台GKのファインセーブに阻まれる。こぼれ球を寺川がミドルシュート、だがわずかにバーの上を越える。
 相変わらず攻め手のない仙台は藤吉に代え、平間を投入。テクニックがあり、スピードのある平間は新潟にとって苦手な存在である。
 今度は鳴尾がDFの裏へ抜け出してGKと1対1となるが、シュートはGK正面。そして木沢が同じように中央に切れ込んでシュートを放つも、DFにブロックされる。次第に焦りの色が見えてくる。
 決定的なチャンスを外し続ける新潟に対し、じょじょに仙台がチャンスを作り始める。財前のパスから平間、大友がDFの裏を狙って走りまわる。
 DFの裏へ抜け出した平間に高橋がタックル。一瞬PKか?と思ったが、主審はノーファールのジェスチャー。清水監督がベンチからピッチに飛び出さんばかりの勢いで主審に異議を唱える。新潟はなんとかピンチを逃れる。
 神田に代え、ナシメントを投入し、一旦新潟に流れが傾きかける。木沢が右サイドを突破し、クロスを上げるが中で合わせる事が出来ない。
 縦パスに反応した鳴尾がDFの裏へ抜け出すが、飯尾が鳴尾のユニホームをつかんで鳴尾を止める。当然、飯尾に警告がでる。ここで新潟は本間に代え、式田。仙台は財前に代え、蓮見を投入する。シンゴの蹴ったFKはワクをそれて、ゴールキックとなる。
 今度は縦パスに蓮見がDFの裏へ飛び出す。後ろから追いかける形となった高橋が先にボールに触れようとスライディングタックルで足を伸ばす。蓮見が高橋の体に乗り上げるように倒れる。一瞬の静寂の後、主審はペナルティスポットを指さしながら、ホイッスルを吹く。ペナルティキック。木寺、セルジオが主審に抗議するも、当然判定は覆らず。
 キッカーは倒された蓮見。スタジアム中に祈るような木寺コールが響く。すでに後半30分が過ぎている。ここで点を取られては逆転するのは容易ではない。
 左に飛んだ木寺の指先のすぐ先に蹴られたボールはネットを揺らした。読みは当たっていただけに、より悔しさが増す。
 ひとしきり喜んだ後、ゆっくりと自陣に戻る仙台の選手達。残り時間は10分強。永井監督は秋葉に代え、堂森を投入する。
 新潟のキックオフで試合が再開された。だがもうピッチを大きくつかう攻撃も、早めのプレスもみられない。面白いようにボールを回す仙台にまったくボールを奪うことができない。
 好調の木沢も上がるスペースを式田に消され、さらに前半本間がやっていた中央からのフォローがいないので、後ろに返すしか出来ない。
 ここまで75分間、組織的に試合を進めてきた新潟、だが今は相手を囲むことも、ボールをつなぐこともできない。高橋のミスパスでボールはラインを割ってしまう。
 唯一ともいえるチャンスはシンゴのシュートのこぼれ球を寺川がボレーシュート。しかしボールはワクをそれる。
 結局、カウンターで右サイドの角度のないところから大友に決められ、0ー2。ただでさえ少ない残り時間を山田の遅延行為にキレたセルジオが暴れ、両チーム22人が集まったもみ合いで2、3分ロスしてしまう。
 結局、0ー2で敗戦。チャンスの数は新潟の方が多かったが、決定力不足が響いた試合だった。交代で戦力を上げた仙台に対し、新潟は明らかに交代で戦力を下げていた。選手が交代するたびに、ボールはまわらなくなり、囲めなくなった。監督からの指示が足りないのか、それとも交代で入った選手の力が足りないのか。
 サポーターに挨拶にくる選手、一方で空いたゴールで柴にシュートを打たせ、練習をする吉原。吉原の上昇志向の強さがうかがわれた。
 負けたもののあまり悔しさが感じられなかった。それは明らかに仙台より良いサッカーをやっているという自負があるからだろう。札幌に負けたときも同じ感想を持った気がする。
 だが試合には負けた。これも事実だ。ここが新潟の問題点なのかもしれない。チームの実力から考えればリーグ9位というのは低すぎる。だが不満を言うファンはいない。選手も危機感をもっているようには見えない。
 なあなあできているツケがきているように感じる。まだリーグは半分を過ぎたばかりだ。選手が気付くか、ファンが気付かせるか。負けに慣れていてきているチームに喝を入れるべきなのかもしれない。

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