Back still growing up

  2000年8月5日(土)18:00キックオフ
於 新潟市陸上競技場
アルビレックス新潟 対 大分トリニータ
 
 夕方になって日射しは多少弱まるが、まだ気温は高く、湿度も高いせいか、汗がなかなか止まらない。今週、選手達はこの試合で3試合目。移動と疲労、暑さを考えると選手交代を含めた監督の采配が試合を決める鍵になりそうだ。
 大分は守備の要だった平岡が移籍、さらにチームの大黒柱のウィルが出場停止、だがJ1から吉田とアンドラジーニャを補強してきた。ここまで3位と好調を維持しているだけにここでのとりこぼしは許されない。3日前にホームで札幌の連勝を止めた勢いをそのままこの試合にぶつけたいだろう。
 ナシメントがスタメン、シンゴが中盤に下がり、神田がボランチに入る。結果的に秋葉がサブに回ることになる。昨年は欠かせない選手だった秋葉、今年は負傷の影響もあるのか、精彩を欠いている。具体的にはパスカットしてからのパスミスでピンチを招くことが多い。サブに入るのは秋葉が新潟に来てから初めてのことではないだろうか。
 キックオフの前に両チームの選手が円陣を組む。先に円陣を解いて選手がピッチに散らばったのは大分。他の選手より一際体の大きいシジクレイ、そしてアンドラジーニャもなかなかの巨漢だ。遅れて新潟も選手がピッチに散らばる。
 主審のホイッスルで試合が始まる。キックオフは大分、大きく蹴り出さずに細かくつないで左サイドから攻めてくる。ボールを持ったアンドラジーニャに寺川が激しく体を寄せるが、ボールを奪えない。もう1度体を投げ出すように寺川がチェックにいく。もつれ合うように寺川とアンドラジーニャが倒れ、大分のFKとなる。
 試合開始からまだ1分もたたないうちに大分のチャンスとなる。ゴール正面、距離は35Mぐらいだろうか。ボールを置いたのはアンドラジーニャ、右にはシジクレイが立つ。シジクレイがおとりになって、アンドラジーニャが左足で直接ゴールを狙うが、シュートはジャンプした木寺の上を大きく越え、ラインを割る。
 木寺のゴールキックで試合が再開される。センターサークル付近で神田が川崎に競り勝ち、こぼれ球をナシメントが拾う。
 大分はウィルのポジション(トップ下)に川崎元気を入れてきたようだ。だが川崎はポジショニングが中途半端で新潟のボランチがフリーでボールを持つことができる。神田、寺川共に正確なロングパスが得意な選手、ここから大きなサイドチェンジで大分のプレスをことごとくかわす。シュートこそ打てないものの、両サイドいっぱいに使った攻撃で大分をゴール前に釘付けにさせる。クリアボールもセルジオ、高橋が冷静に処理。まったく攻め込ませない。
 新潟のDFラインが大きく上がり、ハーフコートマッチのようにも見える。だが大分が新潟の一瞬のスキを突き、カウンターを仕掛ける。オーバーラップした中野の裏のスペースを加治がドリブルで攻め上がる。ようやく追い付いたシンゴがプレッシャーをかけにいくと、加治は中央のアンドラジーニャへパス。アンドラジーニャはチェックにいく神田を切り返しでかわすと、左足で前線へ丁寧なスルーパス。DFラインの裏へ走り込んだ吉田がパスを受け、木寺と1対1となる。ゴールやや右にポジションを取っていた木寺の左側へ冷静にグラウンダーのシュート。ボールはサイドネットに転がり込み、大分が先制する。
 そこまで完全に押し込んでいただけに新潟の選手の顔には信じられないといいたげな表情が浮かぶ。新潟のキックオフで試合が再開する。右に大きく蹴りだし、本間がボールを受ける。本間の背後から木沢がオーバーラップをかけ、大分のDFが木沢に気を取られたその瞬間、本間は速いボールを前線のナシメントに送る。ナシメントは絶妙なトラップでDFと体を入れ替えて、前に出ようとするが三木がナシメントの腕を引っ張る。主審がホイッスルを吹き、三木には警告が出る。ペナルティエリアすぐ外のややゴール右、ボールの近くには木沢、本間、シンゴが並ぶ。主審が大分の壁を下げようとするがなかなか下がらない。ようやく下がったが、シンゴが助走を始めると吉田が前に出てくる。主審は吉田にも警告を出す。シンゴのFKは結局大きくバーの上を越える。
 前川のゴールキック。またも神田が川崎に競り勝ち、シンゴがボールを拾う。大分はゴールキックでことごとく競り負け、ボールを拾えない。さらに全体的な押し上げが少なく、中盤に大きくスペースを作ってしまっている。そこで神田がフリーでボールを持つことができ、神田のロングキックからの攻撃が多い。シンゴが積極的に中央にも切り込むので、中野がオーバーラップするスペースがある。攻め上がった中野は今までとは違い、DFがきても後ろへ戻さず、積極的にドリブルで勝負を仕掛け、センタリングを上げる。中央でナシメントが合わせるが、シュートはワクをそれる。
 木沢には竹村がマークについているようだ。攻め上がることはおろか、ボールに触ることもままならない。だが大分は右サイドバックにマンマークをつけることが、結果的に中盤でも数的不利を作ってしまっている。大分はなかなか攻めの形が作れず、アンドラジーニャが強引にシュートを放つもシュートはワクに飛ばない。
 新潟は右サイドでボールを持った本間が切り返してDFをかわし、左足でセンタリングを上げる。ゴール中央でフリーになっていたナシメントがヘディングシュート。これで同点に追い付く。ナシメントは6ゴール目。シンゴと並びチーム2位のゴール数となる。
 大分はサイドからの攻撃がほとんど機能していない。中央でボールをさばく選手、そして体を張ってボールキープできる選手がいない。つまりウィルの穴がまったく埋めきれていない。新潟が面白いようにボールを回す。中央でボールを受けた寺川がミドルシュート。シュートはワクを外れたが、DFが詰めにくるのが明らかに遅い。
 1対1のまま前半終了。あきらかに新潟が押し込んでいる。大分には怖さが感じられない。後半、監督が選手をどう代えてくるのかがポイントとなる。
 新潟、大分共にハーフタイムでの交代はなし。新潟のキックオフで後半が始まる。後半になっても新潟が押し込む場面が目立つ。中野が果敢に左サイドを突破、中央でナシメントがボレーシュートを放つが、惜しくバーを越える。大分の選手は疲労のためだろうか、動きが悪い。石崎監督は川崎に代えて庄司を投入するも、試合のリズムは変わらない。
 今度は右サイドから本間がドリブルで突破する。2人のDFの間を強引に割って、ペナルティエリア内を深く切り込み、DFのスライディングタックルよりも一瞬速く右足を振り抜く。だがシュートはバーの上。頭を抱えて後ろへ倒れ込む本間。
 次はシンゴのCKからセルジオがフリーでヘディングシュート。これはライン上でDFが頭でクリアする。圧倒的に攻め込まれながらもなかなかゴールを許さない大分。
 新潟のDFラインはカウンターのイメージが強いのか、DFラインの押し上げが少ない。その分、中盤にスペースが出来て攻撃に厚みが出ない。クリアされたボールを拾えないでいる。
 大分は吉田に代えて和田、竹村に代えて瀬戸を投入するも流れは変わらない。庄司がゴール前に飛び出して木寺と1対1となるも、シュートはキャッチされてしまう。
 新潟も疲れの見えてきた神田、木沢に代えて堂森、井上を同時投入。そして終了間際ナシメントも下げて、柴を投入。本職はDFながらFWの経験もある柴が鳴尾と2トップを組む。
 早速柴がDFの裏をつくが、スピードがないため簡単に追い付かれてしまう。そしてサイドに流れる場面が多く、空中戦の強さがまったく発揮できない。
 両チーム決め手を欠き、後半終了。延長戦へ突入する。大分は選手の疲労を考えて早めの交代をしたこと裏目に出た。疲労で選手が全然走れない。攻めに出られずに守り一辺倒になってしまう。
 延長でも攻め込まれ続け、結局右サイドの柴から上がったセンタリングを鳴尾がDFに競り勝ってVゴール。歓喜の輪が生まれた新潟に対し、大分の選手の多くはその場に倒れ込んだ。
 試合を通して、大分のフィジカルの弱さが目立った。前回のH大分戦では平岡、ウィルに空中戦はおろかフジカルコンタクトでもまったく歯が立たなかったのが、今日はほとんど競り負けていない。シジクレイもまったく存在感がなかった。
 3位の大分にVゴールながらも内容では圧倒していた。負けたのはいえ、仙台、浦和にも内容では互角以上だった。だがなかなか結果が出ない。いまだに9位。もうとりこぼしは許されないし、何よりも結果が求められる時期でもある。これだけのサッカーが出来るのだから、中位以上を狙って欲しいと思っているのは僕だけではないはずだ。

〒〒〒
ご意見、ご感想がある方は アルビサポ まで