Back still growing up

  2000年8月27日(日)19:00キックオフ
於 平塚競技場
湘南ベルマーレ 対 アルビレックス新潟
 
 甲府、山形のスタジアムのように平塚競技場も総合公園の一施設である。公園には夏休み最後の日曜日ということで多くの親子連れが見える。噴水の中に入って泳いでいる子供達、シートを敷いて弁当を食べている家族、ベルマーレのレプリカを着てボールを蹴っている人もいる。
 平塚競技場はゴール裏は開放しておらず、バックスタンドの両端をサポーターズシートとしており、両チームのサポーターはここで応援することとなる。メインスタンドの中央はスポンサー席となっているらしく、ほとんど人が見当たらない。メイン、バックともに両端から埋まっていく光景は非常に新鮮である。ピッチでは前座として小学生同士の試合が2試合行われ、その後照明がついて試合前の練習が始まる。スピーカーからはサザンの曲が流れている。なんとか湘南らしさを演出しようとしているのだろうか。
 スタンドに斜傾があるのでバックスタンドでも上段にいれば、充分にピッチを見わたすことができる。だが電光掲示板がバックスタンドとの位置関係が平行になっており、まったく見ることができない。その代わり、メイン上段に簡単な得点板と時計があり、バックスタンドの観客はその時計で試合の残り時間を知ることができる。
 試合前にnakata.netサンクスデーということで簡単な催し物が行われ、その後選手が入場してくる。今日は警告累積で欠場の木沢に代わって、左腕にキャプテンマークを巻いた木寺を先頭にピッチに入ってくる。写真撮影の後、両選手がピッチに散らばり、改めて芝の感触を確かめるように軽くボールを蹴る。
 主審のホイッスルで試合が始まる。湘南のキックオフ、左サイドに細かくパスをつないで新潟のゴールに向かうが、パスミスでボールを奪われてしまう。新潟は奪ったボールを一旦DFに戻し、DFラインでゆっくりとボールを回す。最初のシュートを放ったのは湘南。中盤で奪ったボールを遠めの位置から松原が右足でシュートを放つが、威力が無く木寺がなんなくキャッチする。
 湘南は3ー5ー2のフォーメーションを敷いているが、3バックが非常に中途半端なポジショニングを取っている。2ストッパーのスイーパーというわけではなく、3人がフラットになっているというわけでもなく、悪い意味での中間をとっている。さらにボランチとの連携が悪いのか、簡単にDFラインの裏を取られる場面が目立つ。簡単に言えばマークが徹底されていない。カバーリングもできていない。
 湘南の不調も手伝って序盤は新潟の猛攻が続く。中盤で秋葉が次々にこぼれ球を拾い、そしてミドルパスで逆サイドへ展開する。そこから前線の鳴尾、ナシメントに預けるとプレッシャーが少ないので簡単に前を向いてドリブルすることができる。
 新潟の最初のチャンスは左CK、キッカーは寺川。右足から放たれたボールは独特の弾道を描いてファーサイドへ、そこへ走り込んだ高橋が頭で中央へ折り返す。DFの足が止まっているところに唯一反応していたシンゴが走り込んでボレーシュート。ボールはGKの股間を抜け、ネットに突き刺さる。早くも新潟が先制する。
 予想だにしない序盤の猛攻、さらに先制点に挙げたことで新潟が一気に波に乗る。中盤で湘南のパスをことごとくカット。そして素早く攻撃に移り、何度も湘南のゴールを脅かす。
 湘南も前園からスルーパスを受けた松原が抜け出し、木寺と1対1になるが、ここは木寺が体を張ってブロック。天を仰ぐ松原。その後のCKは木寺が飛び出してキャッチする。
 今度は新潟の攻撃、中盤から出たパスに鳴尾が追い付き、DFをドリブルでかわそうとするが、DFが腕をつかってブロック。鳴尾は倒されてフリーキックを得る。右サイドペナルティエリアのすぐ外、ボールの近くには本間とシンゴが立つ。シンゴがおとりになって蹴ったのは本間、ファーサイドでセルジオがフリーでジャンプ、思わず川口が腕でボールを弾く。当然、ハンドでPKとなる。両手を広げて抗議する川口に警告が出される。
 普段はPKは木沢が蹴るが、今日は欠場。ボールをペナルティスポットに置いたのは鳴尾。実は新潟はPKがあまり得意ではない。昨年、5回あったPKを3回失敗しており、鳴尾も1回失敗している。助走をつけて鳴尾が右足を思い切り振り抜く。GKの伊藤が左に飛ぶ。だが鳴尾の蹴ったコースは正面。ボールはネットに突き刺さる。両手を広げ、味方と喜び合う鳴尾。これで2ー0となる。
 新潟の勢いは止まらない。今度は秋葉とワンツーでナシメントが抜け出す。完全に2対1の状況で芝の継目にでもつまずいたのか、ナシメントが転倒。ピンチをしのいだ湘南はボールをすぐに前線へ運び、カウンター。左サイドの和波が井上をかわして、センタリング。ゴール前で松原が高橋に競り勝ってヘディングシュート。しかし、ここも木寺が反応よくパンチング。こぼれ球をセルジオが蹴り出してピンチをしのぐ。
 じょじょに湘南がリズムをつかみ始め、パスがつながりだす。ダイレクトパスが7、8本とつながるもミスパスでラインを割ってしまうなど、稚拙さを見せていた湘南だったが、前半ロスタイム、右サイドの渡辺がドリブル突破、中野が追い付けずセンタリングを上げられてしまう。DFが密集したゴール前ではなく、マイナスのセンタリングに堀がフリーで走り込んでペナルエィエリアすぐ外からのボレーシュート。これがきれいに新潟のサイドネットに突きささって1点返されてしまう。ゴールマウスの中で松原と木寺がボールをめぐってもみあっているうちに前半終了。前半終了間際という嫌な時間帯に失点を喫してしまった新潟だが、前半を見る限り湘南に追い付かれるような気配はない。攻撃力がないのではなく、守備が甘すぎるのだ。あれだけ簡単にチャンスが作れるのであれば追加点が入るのは時間の問題だ。
 このスタジアムは前半終了した瞬間から音楽と場内アナウンスが鳴り始め、後半開始まで止まることはなかった。というより、選手がピッチに入って、ポジションにつき、キックオフの準備ができている状態でもアナウンスが終了するまで選手がキックオフを待たなければいけないという異常な光景を目にすることができた。ようやくアナウンスが終わり、新潟のキックオフで後半が始まると、またアナウンスが始まる。ハーフタイムの選手交代の発表だけではなく、丁寧に改めて両チームのメンバー紹介である。選手はもちろん、観客でさえ集中力がそがれる。
 新潟は選手交代はなし、湘南はさすがに前半の守備の酷さが気になったのか、杉本を下げ高田保を投入。両WBがDFラインに入り、4バックに変更してきた。スピードのある高田保が右サイドに入ったことで、右から高田保、左からは和波がサイドをえぐって攻撃しようという狙いだろうか。
 早速、高田保のスルーから酒井がDFの裏へ抜け出してチャンスを作る。ここは高橋がカバーに入って、酒井をブロック。
 今度は高田保がドリブルで中野をかわして、中央へ切れ込んでくる。そして右サイドにはたき、オーバーラップしてきた渡辺がフリーでグラウンダーのセンタリング。ニアサイドに松原が走り込む。松原をマークしていたセルジオが一歩遅れて追走する。木寺が体を投げ出して飛び出してくる。松原がセルジオを振り切ってシュート。しかしボールは木寺の胸におさまる。頭を抱えて悔しがる松原。
 後半は明らかに湘南がペースを握っている。湘南は運動量の乏しい前園を代えて樹森を投入。ボランチに入ったフチカがボールを散らし、新潟のプレスは空回りしてしまう。
 新潟はみずからチャンスは作れないものの、湘南DFのパスミスをよくナシメントが拾い、そこを起点にして攻撃している。ナシメントからパスを受けた本間、1対1の局面でドリブルでつっかけてDFをかわしにいかずに、内側に切り返してしまう。もちろん、内側には戻ってきたDFがいる。簡単にシュートで終わればいいところを手数をかけすぎてボールを奪われてしまう場面が目立つ。
 珍しく寺川のパスミスが目立つ。フリーでボールを持って左サイドを駆け上がるシンゴにスルーパス。いつもならピンポイントで受け手に合わせてくるはずが、今日はラインを割ってしまう。新潟市陸とは芝の長さが違うのだろうか。寺川が地面を蹴り上げて悔しさを露わにする。
 前半同様、秋葉の活躍が目立つ。中盤でのインターセプト、さらに早めのチェックで湘南の速攻を抑えている。例えそこでボールを奪えなくても、湘南の攻撃のスピードを遅らせることで新潟は守備を固めることができる。
 前半とはうってかわって完全に中盤を支配されている新潟は湘南のパスミスでしか、攻撃の糸口を掴めない。湘南のDFからGKへのバックパスにナシメントは一早く反応し、ダッシュでボールを追いかける。ペナルティエリアを飛び出してボールを蹴りだそうとGKがダッシュしてくる。両者が激突すると思った瞬間、ナシメントがなぜか立ち止まる。GKは意表をつかれながらもボールをトラップ。ここでもナシメントはプレッシャーをかけにいかない。サポーターの怒号の中、GKは落ち着いてボールを前線に送り込む。
 今度は右サイド、本間からのパスを受けた井上は対面の和波を股抜きでかわし、センタリング。ニアサイドにDFを振り切ってナシメントが走り込んだ。しかしナシメントは両足を開いてボールをスルー。ボールは誰もいないファーサイドに流れ、ラインを割ってしまう。
 湘南は左サイドの和波がスピードに乗ったドリブルで井上を抜きにかかる。全速力で走りながら無理な体勢で上げたボールは必死に手を伸ばした木寺の上を越えてゴールに向かう。しかし、ゴンッという音ともにバーに当たって逆サイドにこぼれる。こぼれ球を拾った渡辺が再度クロスを上げるが、ここはセルジオはヘディングで大きくクリアし、なんとかピンチをしのぐ。
 新潟は2トップの鳴尾、ナシメントの運動量は激減し、前線からのチェックができない。よって湘南はDFラインで簡単にボールを回して、攻撃の糸口を探している。攻撃の起点になっていたフリカがペナルティエリアの外からロングシュート。新潟のサポーターズシートから悲鳴が上がる。充分な威力のシュートは木寺が正面でキャッチする。
 新潟も左サイドのシンゴからアーリークロスに本間が走り込む。ボールに近付くように走り込めばフリーでシュートを打てるところを待ってしまったため、戻ってきたDFにクリアされてしまう。
 残り時間10分を切ってようやく永井監督は交代を決断する。だが交代は2トップではなく、本間に代えて深沢。監督の指示なのだろうか、深沢は引いて中盤での守備を重視というよりも明らか縦への突破を狙う動きが多い。早速、右サイドを突破し、センタリングを上げるがDFに当たってCKとなる。右CKのキッカーはシンゴ。ほとんど曲らない速いボールがゴール中央へ送り込まれる。セルジオは走りこむが、間一髪でDFにクリアされる。
 疲労でうごけない2トップ、左のシンゴが引いて守りを固めにはいっているが、右の深沢は積極的に縦への突破を狙う。チームの戦術が統一されていないのが明らかである。
 結局湘南の決定力不足にも助けられ、そのまま試合終了。2ー1での勝利で勝ち点3を得る。
 選手が木寺を先頭にサポータースシートへ挨拶にくる。だが選手たちの表情に笑顔はない。押し込まれ続けた後半の内容が不満だったのか、それとも他の理由があったのか。引き分けをはさんでの3連勝だが、選手の笑顔がなかったことで逆に今後の見通しに期待が持てる。選手はまだ満足していない。次節の相手、大宮に内容を伴った結果が出ることを期待したい。

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